01「ああ…神よッ!」
ヒヒーンッ!!
馬の嘶き、一閃。一太刀入った男の胴は二つに裂け、赤い飛沫が飛び散った。
「でっ…出たーッ! 黒い騎士だァーッ! お頭がやられたァ!」
「ひぃぃぃぃい! お助けーーーッ!」
「ギャャャヤ! 逃げろォ! 早く走れッ!」
やれやれ。なぜこうなったのか。それはしばらく遡る。
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俺はただのサラリーマン。亜堂春馬だ。なぜかわからないが目の前に白いじーさんが泣きついている。
「よぉぉお、やってくれたのぉ! ありがとうじゃ。本当にありがとうなのじゃ。感謝してもしきれんわい!」
何なんだ。このじーさんは!? しっかし…ここはどこだ? 周りが真っ白だぜ? とりあえず状況を知ってそうなじーさんに尋ねてみるか。
「あのぉ…。ここはどこですか? それに貴方は…?」
「よぅ聞いてくれた! ここはのぉ! 神界じゃ! 神界!」
…ん? 今何て?
「深海?」
「違うわいッ! God Worldじゃ!」
「へぇ〜……。………ぇ?」
俺は驚く。何故って? 非日常が来た!
「儂はのぉ! 神じゃ! 地球の神!」
神? ハイハイハイ…。
「エエエエエェェェェェェエーーーーッ!」
ーしばらくしてー
「まぁの。その、ここは神界で儂は神じゃ。わかってくれたかの?」
「はい…。」
なんとか納得はした。まさか証拠じゃ、とか言って目の前ででっかい爆発起こされたり、急に一瞬で城を作って見せられるなんて思ってなかった。あれは人間にできる芸当ではない。
「その…何故私はここに? 死んでしまったのですか?」
「う〜む。そうじゃ。おぬしは死んだ。」
「そうですか…。」
俺の心に暗い気持ちが押し寄せた。後悔。何一つ善行をせずに死んだ。悪いことはしなかったが、特別良いことなんて一つもしていない。
「そんなことないぞ。おぬし、覚えておらんのか? 死ぬ前に何を成したか。」
うっ! 頭が痛い。そして、あることを思い出す。それは雨の日の記憶。薄暗い昼、道路に一人の少女が歩く。前には暴走したトラック。危ない! そう思って俺は飛び出した。瞬間、意識は途絶えた。
「そうですか…あの少女は無事でしたか?」
「大丈夫じゃ。その後、おぬしは死んだがの。しかし、そなたの死は奇跡をもたらしたぞ。」
「そうですか…良かった…。え?奇跡?」
「そうじゃ。おぬしが救った少女じゃが、命がけで助けたそなたに憧れての、必死に学問に取り組み、後に地球の人類を襲う病気の特効薬を生み出し、全人類を救うのじゃ。」
「へぇ…そうですか。私の死は無駄じゃなかった…。それを聞いただけで安心して消滅できます。」
「は? 何を言っておる。おぬしは消滅せんぞ。おぬしに新たな生を与えるために儂はここにおるのじゃ。」
「へ?」
「神界の決まりでの、百人以上の命を救った人間
は二度目の生を受ける権利があると定められておる。また、救った命の多さにより、二度目の人生を有利にすすめることができるのじゃ! 直接救えば一人につき一人分、間接的に救えば一人につき半人分救ったことにカウントされる。さらにおぬしが助けた娘が救った全人類は100億人じゃった。そなたが死んでから時間がたつでの。そこでおぬしは50億の命を救ったということになるわけじゃ。」
「へぇ…。」
ダメだ。数が多すぎてわからない。
「おぬし…異世界転移たらいう物語に熱中していたそうじゃの。」
「へ?…あ、ハイ!」
「そこでの。おぬしが暮らす世界を新たに作ってみた。」
「ぇ?」
だめだ! 全く頭が追いつかない。
「実はの。地球は我が師匠と共同で作った思い出深い世界なのじゃ。おぬしには感謝しておる。そこで特別に新たな世界を用意したわけじゃ。剣と魔法の世界よ! おぬしのよく読む『らのべ』たらいう書物を参考に弟子に作らせた。そこで第二の人生を歩が良い。」
「ハイ!」
「後はのぉ、先程言っていた救った命の多さにより二度目の人生を有利にすすめることができるという話じゃが、お前らッ!」
「ハイッ!」
神様が叫んだ瞬間、六人の…六神のか。神様が現れた。
「コイツらといっしょに新しい世界のおぬしの強さ(ステータス)について決めてくれ。」
「ハイ!」
どうやら面白くなってきたようだ。
会話では「私」
別部分では「俺」なのは故意です。