入学式の前に
こんばんは、神嵜煉です。
先週は投稿できず、すいませんでした。
それではどうぞ。
雷と謙の目の前に立つ店は雰囲気や建物で歴史があり、老舗であることが分かる。この店は所謂、何でも屋に近い店だ。冒険者たちの装備から一般の人たちの服まで、小物から武器までと、どんなお客にも対応した店である。この店は神坂家とは古い付き合いである。神坂家の初代神獣王と邪神獣王の時から店を利用しているぐらいの家同士で長い付き合いがある。時には店を守ったり、逆に壊れた武器などを直して貰ったりと、歴代の神獣王と邪神獣王が足を運ぶ店だ。勿論、雷や謙も幼い頃から通う顔見知りの店だ。今日、此処に来たのは制服と教材を貰うためだ。
神獣王と邪神獣王の慣わしの1つで、15歳になったら魔法師専門学園に入学するというがある。これを決めたのは初代当主であるらしい。理由は外の世界を見て学ぶこともあるだろうとのこと。色々な人間と生活することで新しいことを学んで欲しいという気持ちもあるらしいが。そんなこんなで入学することになったのであるが、結構大変であった。丁度、入学テストの頃に2人を育ててくれた先代の神獣王と邪神獣王が亡くなったからである。そして、2人はそれぞれの称号を貰い、正式に神獣王と邪神獣王となった。
入学テストは実技とペーパーテストの2つをする。実技は魔法をどれだけ扱うことが出来るのかなどの技量や魔力量などで決まる。魔力量は一般的な人々の量を保持していれば合格できる。技量は最適現の基礎を出来れば合格できる。そして、ペーパーテストである。。100点満点中5割以上を目安に設定されている。入学テストはどれだけペーパーテストが良くても、魔法技量の方でクラスや成績が決まる。そして、それが優等生と劣等生という2つの存在を産み出してしまう。テストの合格ラインは高くないが、その上で何処まで出来るのかが問題視される。雷と謙は入学テストを1位と2位で合格しているから問題ないのであるのだが。
第一魔法師専門学園通称第一魔法学園と呼ばれる学校は色々な所が普通の学校と変わっている。例で挙げるとしたら、制服だ。この学校の制服は基準となるものはあるが、色などの指定はない。更に、どの素材を使っても良いという。その素材が最高級品で防具代わりになってもだ。そして、それを学校に伝える必要はない。その代わり、クラスの基準別で、クラスの紋章が違う。毎年の定員数は200人程度である。200人はテストによって、5クラスに別れる。1~4クラスは将来性のあることから強さを象徴する竜の紋章を左胸につけている。5組は将来性のないことや落ちこぼれのことから蜥蜴の紋章がついている。これは竜は生き物の中でも成長していくにつれて強くなるためが蜥蜴はどう頑張っても竜にはなれないということを例えてこの紋章が使われている。これはまだ、魔法師同士の差別が激しかった頃に、学校が紋章に差別を見せつけるために作ったものである。今ではこの紋章を統一することを薦める教師や魔法師たちがいるが、統一することは出来ていない。誰しもがこの事を当たり前と思っているからである。この事は魔法師たちの問題の1つとして挙げられている。
2人は慣れ親しんだ店の中に入る。この店が開店して以来改装していないという。壁の塗り直しや板などの張り替えぐらいのことしかしず、開店当初のままであるらしい。此処の店を開店してから一族が大事にしてきたそうだ。そして、どの世代になっても此処の店の内部を変えようとする人はいなかったらしい。
「おばさーん、いるー?」
雷の声が店の内部全体に響き渡る。これも、この店を開店した初代が考えたアイディアらしい。なんでも、お客が誰も居ないときは店の奥に入ってしまうため声を掛けて貰ってても気付くように声が響く木材を使っているとのことだ。
「はいはい、誰だい?って、雷ちゃんに謙ちゃんじゃないかい。頼まれてた物なら出来てるよ。」
笑顔で2人の学園の制服と教材を渡してくる。この人がこの店の22代目 篠原空の奥さんの篠原埜々香だ。もうすぐ、40代らしいが全然そうは見えない美人である。誰もが認める存在である。埜々香の特技はその魔法と力である。男に勝るとも劣らないその力所謂、火事場の馬鹿力と言われるものである。それにより脅して安く買おうとする冒険者たちを逆に怯えさせて追い返している。彼女自身も昔は冒険者でそこそこ有名であったそうだ。夫の空も、冒険者時代はギルド内で中々の有名人だったそうである。今の空からは想像はつかないが。それは空が埜々香の尻に敷かれているからだ。何をしても負けるところしか見たことがない。それでも仲の良い夫婦関係であると有名である。子供は2人居て、1人は雷より1つ上の16歳で魔法学園2年の生徒会長である姉の那奈だ。もう1人は弟の元。元は雷より2つしたの13歳。この歳で速くも、店の仕事を任されている。2人とは幼馴染みで良く遊んでいた。
「おばさん、相変わらず元気で綺麗だね。」
「謙ちゃんは相変わらずお世辞が上手いわね。そう言えば、今日が入学式だったわよね。こんなゆっくりしてて良いの?」
「良いんだよ。まだまだ、時間はあるし。速く行ってもつまらないし。」
埜々香はそこで少し笑うと2人の本当の理由を当ててきた。
「本当は那奈に会うのが嫌なんでしょ。まあ、あの子は元気が取り柄だからねぇ~。」
「まあ、それもあるけど…那奈は怒ると怖いし…」
「2人とも、那奈に入学したこと言ってなかったんじゃ…それじゃあ、あの子も怒るわよ。」
「「そうですよね…はぁ…」」
雷と謙は2人同時に溜め息を吐く。この後のことを考えると地獄だと思ってしまう。だが、これも自分たちが蒔いた種であるため仕方が無いことではあるが。元はドンマイと目で問い掛けてくる。
「おばさん、試着室貸して。制服に着替えてくるから。」
「良いわよ、使っても。お客も居ないしね。」
2人はそそくさと試着室に向かう。数分すると2人は出てくる。雷の制服は白と黒を基調とした物である。謙の制服は黒と灰色を基調とした物である。2人ともが、それぞれの好む色を使って作って貰った上質な逸品だ。素材は最高級品の龍の鱗が用いられている。龍の鱗は魔法耐久性、物理耐久性などの様々な耐久性を持っている。
「似合うわ、2人とも。将来はどっちと結婚するのかしらね。楽しみだわ。」
埜々香さんは1人でとんでもないことを言っている。雷と謙は何を言ってるのと思うが。埜々香さんは1人の世界に入っている。
「そう言えば、オッサンは何処?」
「あの人なら、素材を取りに山に向かったわよ。」
「少しは2人でのんびりとすれば良いのに、オッサンもさ何も考えていないし。」
そんなことを話していると噂をすればと言われるように空が帰ってくる。
「雷に謙じゃねぇか。今日は入学式だろ。良いのか?こんなところでのんびりして。」
「そんなことよりオッサン、少しはオバサンとどっか行けば良いじゃん。」
「急にどうした?」
「たまには夫婦でのんびりと何処かに旅行とかに行って、2人で楽しんでこれば良いじゃんって言ってんの。仕事は元に任せれば良いんだし。」
「それは元が一人前になって、後を継いでからするから心配するな。」
「「オッサンの言葉は信用できないんだよな…」」
空は雷と謙の言葉に不服そうな顔をする。だが、これは事実なことである。空は有言実行をしない、有言不実行な男だからである。何を言っても、それをしたことは余りに少ない。言った言葉をやる時は奇跡と家族や雷たちから言われるほどだ。
そんなこんなで雷と謙はその後も、埜々香と空と話してから学園に向かった。それから色々なことに巻き込まれていくことを勿論、知らないままに。
如何でしたでしょうか?
それではまた。