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青春スクエア ~綾崎翼の片思い~ 小学生編7

「今日から家庭教師をやらせてもらう東夜嗄です。よろしくね、メグミ君」

まるでアイドルのような容姿で。

アイドルのようなスマイルを翼に向けて目の前の男――

東夜嗄は爽やかにそう言った。

完璧な笑顔。

しかし、その笑顔を見て翼は少し違和感を感じた。

彼の笑顔は、何処かがおかしい。

他の人の笑顔とは何処かが違う。

そう思いながら嗄の顔を見つめていると。

嗄は見つめられている事に気付いているであろうにも関わらず、翼の事を笑みを浮かべて見つめ返していた。

それ所か、お互いの視線が絡み合った。

そこで、気付く事が出来た。

彼の笑顔は、完璧に笑えている。

しかし、まるで作り笑いのようにも感じられたのだ。

そう感じた時。

「じゃあ勉強を始めようか――の前に。家に入れてくれないと勉強も何も出来ないね」

困ったように笑いながら嗄はそう口にした。

そんな嗄を見てようやく我に返った翼は家の鍵を取り出した。

――この東夜嗄からは多くの違和感を感じる。

その違和感の一つを考えながら、玄関の鍵を開け放つ。

(普通見つめられてる事に気付いたなら、どうして見るのか聞いてくるよね…? 気付いてた、よね? あれは。目が合ったし)

そう思いながらも家の中に嗄を入れた。

二階の自分の部屋へ案内し、ランドセルを置いてから手洗いうがいを済ませた。

その後に、リビングからコップにお茶を注いで持って行く。

いつもとは少し違うが、それも仕方がない。

新しい家庭教師の人が来て、翼の生活が変わるのだから。

翼が自分の部屋に戻ってみると。

嗄はやはり家庭教師らしく、勉強のためのテキストや問題用紙等を持って来ていた鞄から取り出していた。

翼が戻って来た事に気付いた嗄が取り出していた問題用紙を手にして口を開く。

「あぁ、お茶ありがとう。じゃあ、勉強しようか」

「あの……俺、勉強――したくない…です……」

少しずつ声が小さくなっていった。

相手は勉強を教える気が満々だというのに。

こんな事を言ったら怒られると意識しつつも翼はそう口にした。

また、出海さんのように迷惑を掛けてしまう。

わかっているのだが、これだけは譲れない。

医者になるために勉強するのだけは嫌だ。

嗄から少し目を逸らして答えを待っていると。

「――――」

嗄は無言になり、何故だか部屋を見渡した。

それから、何かを納得したのか小さく頷いたのだ。

そして、嗄の返答は思いもよらないものだった。

「じゃあ勉強はやめよう」

「え……?」

「だって、したくないんでしょう? それに初対面だしねぇ。まずはお互いを知る事から始めようかぁ」

――思わず拍子抜けしてしまった。

まさか、そんな事を言い出すとは思わなかった。

絶対に怒られると思っていたのだ。

「ねぇ、メグミ君ってどういう字を書くの?」

「えっと……翼、です…」

「へぇ、当て字なんだぁ。僕もそうなんだよ。声が嗄れるって書いて〝みやぎ〟って読むんだぁ。あ、翼君。翼君って自分の名前の由来って知ってる?」

「知らない、です……」

「実は僕もそうなんだぁ。聞く所か、親と話をする事がなかったからねぇ」

笑いながらそう口にした嗄。

嗄の言葉を聞いて、一瞬心臓が脈打った。

(俺と、同じ――?)

「……そうなんですか?」

「うん。そうなんだよぉ。六人家族なのに、一人で居る事の方が多かったんだ」

「………一人」

その気持ち、わからなくもない。

いや、それ所か共感出来る。

一人で居る事がどんなに寂しいものなのかを知っているからだ。

(――もしかして、この人と俺は似たような人間……?)

翼がそう思っていると。

「翼君は、勉強が嫌い?」

不意に嗄がそんな事を聞いて来た。

その問いに翼は返答を迷わせた。

今まで、どうして勉強をしないのかとは聞かれたが。

勉強が嫌いかどうかは一度も聞かれなかった。

前は、勉強をする事が好きだった。

学ぶ度に多くの知識を手に入れる事が出来る。

何かを覚える事がすごく楽しかった。

しかし今は――

〝医者になる〟それだけのための勉強。

翼は、嗄の問いに対して素直に答えた。

「嫌いです」

「そっかぁ……」

なんとなく納得したように嗄は答えた。

――彼が何を考えているのか、全くわからない。

ポーカーフェイスのように笑みを浮かべるその表情からは、何も読み取れない。

「ん~……」

唸るようにそう呟き。

やがて翼の顔を見て口を開いた。

「でもね、勉強はしていて損はないんだよ。僕は学生時代に勉強ばっかりしててね、勉強が取り柄みたいなものだったんだ。でもそのおかげで今は何でも出来るようになった。だから、勉強はしておいた方がいいよ。無理強いはしないけどねぇ」

そう言う嗄の表情からは笑みが消えていた。

その代わり、何処か寂しさが含まれているようにも見えた。

そんな嗄の表情を見て、〝こっち〟が彼の本当の顔なのだと思えた。

今の嗄からは先程までのポーカーフェイスが感じられない。

それに嗄はどことなく過去に耽っているようにも見える。

本当に、変わった人だと思う。

しかし――

翼から見て嗄は高校生くらいにしか見えない。

顔だけを見ればの話だが。

身長は百八十以上はあり、背で考えれば高校生に見えなくもないのだが。

けれど、先程嗄は〝学生時代〟と口にした。

という事は、嗄は見た目よりも年を取っていると言う事になる。

(確か、こういう人の事を童顔って言うんだっけ…)

翼がそんな事を考えていると――

不意に嗄の表情に再びポーカーフェイスの笑みが戻った。

そんな笑みを浮かべながら、嗄は明るく言い放った。

「じゃあ、こうしよう! 今度から一回でも翼君がテストで百点を取れたらご褒美があるってのはどう?」

「ご褒美、ですか…?」

「そう。勉強は何かのためや誰かのためにやるんじゃなくて、自分の為にする。だから、頑張った自分へのご褒美ね」

嗄の言葉を聞いて驚く。

彼はまるで、翼の心の中でも読んでいるのだろうか。

先程から嗄は核心を突いて来る。

「それだったらどう? 翼君の望む事、出来る限り全部叶えてあげるから」

嗄は、そのような提案をして来た。

――確かに嗄の言う通りだ。

翼は医者になる為に、両親の言い成りになって勉強をするのは嫌だ。

しかし嗄の言うように、自分の為に勉強をすれば良いと思った瞬間。

ほんの少しだけでも、勉強をしてみようかと思えた。

「……それなら、やってみてもいいと思います」

「本当ぉ!? 良かったぁ、そう言ってくれてぇ……」

嗄は嬉しそうに言いながら無邪気に笑った。

その笑顔は、それこそ嗄の本当の笑顔のように翼の目には映った。

今の笑顔は先程までの笑顔とは全く違う。

見た目と釣り合うような。

そんな、無邪気な笑顔。

それにしても、そんなにも喜ぶ事なのだろうか。

嬉しそうに笑う嗄を見ていると、自然と翼も笑っていた。

そのようにして、東夜嗄のと勉強は始まった。

だが、嗄は家に来ても勉強はしなかった。

ただただ、翼と話をするだけ。

それだけだったのだ。

そんな日が三日も続き、流石に翼は気になって聞いてみた。

「どうして勉強を無理強いしないんですか?」

「ん~……。そうだねぇ、僕の見た所翼君の学力は中学生くらいはあると思うからしばらく勉強しなくても平気だと思うからね。それに、本人がその気じゃないのに無理に進める事は出来ないよ」

ポーカーフェイスの笑みを浮かべて、嗄はそう言うのだ。

――このような人と逢ったのは初めてだ。

こんなにも、自由な人と逢ったのは。

どうしてこんなにも自由なのだろうか、この人は。

自分も嗄のようになりたいと少し思った。

そうすれば、今立たされている現状に対して明るく考えられるかもしれないと思ったからだ。

しかし、翼と嗄は反対だ。

嗄のようになれるはずもない。

そう思いながらも、日々だけは過ぎ去って行き。

気が付けば、東夜嗄が家庭教師になってから一週間が経っていた。

その日も翼はいつものように学校へ登校し。

いつものように授業が始まる。

何も変わらない日常。

毎週ある漢字のテストも変わらない。

テストの時間が始まっても、翼は鉛筆を手にする事もない。

――何も変わらない――

(……いや)

翼は置かれている鉛筆を静かに見つめる。

クラスメイト達がテストに鉛筆で字を書いていく音だけが耳に届く。

いつもならば、この時間は白紙のテストを見つめながらただ時が過ぎるのを待つ。

そう、いつもならば。

しかし、今回は違った。

テストが始まった瞬間からずっと、嗄の言葉が頭に何回も響く。

〝勉強は何かのためや誰かのためにやるんじゃなくて、自分の為にする〟

嗄の言葉に釣られるようにして、翼はいつの間にか鉛筆を手に取っていた。

(――ご褒美って……なんだろうか。俺の望む事を全部、叶える……)

そう思いながらも翼は鉛筆を動かした。

自分の望むものは、一体何だろうかと。

自分は、何を求めるのか。

欲しい物と考えれば一番に本が思い浮かぶのだが。

そういうものでも良いのだろうか。

そんな事を考えていると、すぐにテストの時間は終わった。

だが、本が欲しい等とそんな我が儘を言っても良いのだろうか。

嗄に、迷惑を掛けないだろうか。

しかし、これは全て嗄自身が言い出した事だ。

ならば、言っても良いのだろうか。

我が儘を。

そのように授業中も考えているとまるで一瞬のように放課後になってしまった。

――帰りのホームルームで今日やったテストが採点されて返って来た。

テストを返された時に、担任から褒められた。

〝やれば出来るじゃないか〟と。

もちろんテストの点数は百点だった。

そうなればやはり、クラスメイト達から目を付けられた。

いつものように帰ろうとした時。

クラスメイトの一人が翼の机を蹴り倒した。

「綾崎、お前やっぱ俺達の事バカにしてんだろ」

「白紙の次は満点? いい加減にしろよテメェ」

こうなる事はわかっていた。

しかし、あのままでもいけないともわかっていた。

この道は絶対に通らないといけない事も、わかっていた。

「先生達の気を寄せて、みんなからひいきしてもらおうとか思ってんだろ!」

「うぜぇんだよ!」

「学校来んな!」

「お前なんかいなけりゃいいんだ!」

「死んじまえ!」

言葉の暴力。

暴力の嵐。

それに翼は静かに耐えた。

胸は酷く痛む。

心が痛いと叫び出す。

目尻が熱くなってくる。

しかし、両親から言われた言葉に比べれば耐えられる。

ただの雑音と思えば良い。

今を耐えれば――

この百点のテストを見せれば、嗄からご褒美が貰える。

ならば、この言葉の嵐にも耐えられる。

虐めにも、耐えられる。

――そうやって、翼は静かに耐え忍んでいた。




 言葉の嵐から解放され、翼はすぐに病院へと足を向けた。

病院の子供達に気付いてから、もう毎日の日課になってしまった事だ。

正面玄関から入り、広間に入った瞬間。

「あっ!! めぐみにぃちゃんがきた!!」

「ほんとだ、めぐみにーちゃんだぁ!」

「めぐにぃ!」

一人の子供が翼の姿を見つけた瞬間。

一斉に子供達が翼の元へ群がる。

子供達の勢いに圧倒されながらも、翼は確かに感じた。

無邪気な子供達の笑顔。

子供達はみんな、自分を必要としてくれている。

ここには、自分の居場所がある。

子供達の笑顔を見ると、胸の痛みが癒えていくのを感じられた。

「――今日は何して遊ぶ?」

「しりとり~!」

「ちがうよ、にんじゃごっこだよ!」

「安静にしてないとダメだって言われてたよね。湊君は」

「うぅ…ちょっとくらい、いいじゃん! めぐみにぃのバカ!」

そんな子供達の遊び相手をする。

子供達の望む事は、出来る限り全て叶えてあげていた。

ただでさえ、病院という名の籠の中に閉じ込められているのだから少しでも自由にしてあげたかった。

あの子達は退院する事が出来る。

しかし、中には退院出来ず死を待つだけの子供も居る。

そんな子供達に、笑顔を与えたい。

今の自分に出来るのは、それくらいだ。

そう思いながらも、子供達と接していた。

やがて嗄の来る時間が近付き、子供達に別れを告げて家へと戻る。

今日はナース達のおかげで大人しく引いてくれたが。

これからは引いてくれない時は困る等と思いながらも、家の前まで戻って来た。

玄関の鍵を開けて家の中へ入ろうとした時。

「こんばんは、翼君」

嗄の声が聞こえた。

後ろを振り返ってみると嗄が門の前に立っていた。

「今帰ったの?」

「はい」

「そっかぁ。あ、僕も一緒に上がっても良い?」

「どうぞ」

翼がそう言うと、嗄は門を開けて玄関の前まで来た。

嗄を先に家へ上げて、靴を脱ぎ終わって翼は聞く。

「お茶、いりますか?」

「ん~、そうだねぇ…。じゃあ頼んでも良いかな?」

「わかりました」

そう返すと翼はそのまま洗面所へ向かい、手洗いうがいをする。

その間に嗄が階段を上がって行く音が耳に届き、手洗いうがいを済ませるとお茶をコップに注いで持って行く。

階段を上がって行き、部屋へ着くと嗄は翼の集めた本棚の前で本を手にして読んでいた。

どうやら、翼が部屋に入って来た事に気付いていない様子だ。

嗄の手にしていた本は、先日翼の買って来た本だった。

その本の次作が気に入って買った本だ。

持って来たお茶をテーブルの上に置いてから嗄に声を掛ける。

「――持って来ました」

「あぁ、ごめん。ちょっと読み耽っちゃってたぁ」

そう言って嗄はポーカーフェイスの笑みを浮かべる。

本を本棚に戻してから嗄はテーブルまで戻って来て、翼の持って来たお茶に口を付ける。

それから、先程まで読んでいた本を横目で見て口を開く。

「翼君、あの本持っていたんだね。持ってた事知らなかったなぁ……」

「あの本、知っているんですか?」

「知ってるって言うより、読んだ事あるからねぇ。学生時代に」

「そうなんですか?」

「うん。でもあんまりこの本を読む人は居なかったから、なんだか嬉しいなぁ」

学生時代に読んでいた。

それを聞いて翼は再び疑問に思った。

嗄は一体、何歳なのだろうか。

顔だけを見ればどう考えても高校生なのだが――

嗄の言う学生時代から考えると、二十代後半辺りだろうか。

「あの……一つ、聞いても良いですか?」

「うん? 何でも良いよ」

「――嗄さんって何歳なんですか?」

「あれぇ? 言ってなかったけぇ?」

「はい」

「今年で十九歳だよ?」

「えっ……」

「ん~? 何、その驚いた顔ぉ」

ポーカーフェイスを浮かべて、嗄は聞いてくる。

翼の想像では、学生時代と言っていたから二十代後半か。

もう少し若くて二十代前半くらいだと考えていたのだが。

まさか、まだ高校を卒業して一年だとは思いもしなかった。

しかし、高校生くらいはやはり合っていた。

「いや……学生時代って言ってたからもう少し上かと思って……」

「ん~……まぁ、僕的には遠い過去かな。だって、今の僕はあの頃とは違うから」

少し過去を思い返すように嗄は言う。

その表情は何だか、重荷を降ろしたような。

清々しい表情に感じられた。

翼と嗄。

二人には違う所がある。

似てはいるが、違う所が。

それはきっと、抱えているものを降ろしたか抱えたままかの違い。

嗄は抱えていたものを降ろした。

しかし、それに対して翼は抱えている。

嗄が自由に感じられたのはそのせいだろう。

その他にも自由に感じられた理由はあるのだろうが――

今は、それがわかった。

嗄と自分の違いが、理解出来た。

それから少し嗄と話をした。

話す事と言っても大抵本の内容ばかりなのだが。

嗄とは本の話が良く合う。

本の話をしばらくして、翼は何とかご褒美について聞くタイミングを見つけた。

「あの……百点を取ったら、どんな事でも頼んで良いんですか…?」

「もちろん。いいよ」

「じゃあ……本が、欲しい…です…」

「どの本?」

「えっと……空の涙って本なんですけど……」

「え、空の涙?」

嗄は驚きながらそう口にした。

空の涙という本は、今人気のベストセラー小説ではない。

去年の冬ほどに発売された本だ。

それに、あまり知名度もない本だ。

嗄はそんな願いかと驚いている様子。

――翼にはそう見えた。

だが、それは違っていた。

嗄は手にしていたお茶をテーブルへ置き――

自分の鞄の中を漁り始めた。

そして、嗄はある本を取り出した。

「空の涙ってこの本だよね……?」

そう言いながら嗄は空の涙を差し出して来た。

翼は本の表紙を見て、驚いた。

――どうして、翼の求めていた本を嗄は持っているのだろうか。

不思議に思っていると同時に驚き、嗄の差し出す本を受け取れなかった。

「……どうして…?」

「それがねぇ…。ここに来る前にたまたま本屋で見掛けて良さそうだと思って――偶然買ったんだ」

そう言って嗄は微笑んだ。

嗄の表情はとても優しい。

偶然でも嬉しい。

――いや、こんなにも嬉しい事があるだろうか。

翼は差し出されている本をそれでも受け取って良いのかと迷っていると。

「大丈夫だよ。今度また買うから。気にしないで。それに翼君と僕の本の趣味は似てるみたいだからね。寧ろ受け取って欲しいなぁ」

優しい声で、そう言ってくれる。

それでも一瞬躊躇ったが。

翼は嗄から本を受け取った。

プレゼント等、何年ぶりに貰っただろうか。

たかが三年ぶりだが、すごく嬉しかった。

その後も嗄と本について語り合っていた。

語っていたと言うよりも、嗄が読んで気に入った本の内容を一方的に聞いていただけだが。

嗄が読む本は本当に翼の好きな話ばかりで、話を聞くだけですごく興味が湧いて来た。

「――俺も、嗄さんの読んだ本を読みたいです」

「本当? そう言ってくれると嬉しいなぁ。あ、じゃあ今度から百点を取った分僕の気に入った本をプレゼントするね」

嬉しそうにそう言ってくれた。

そう言われた瞬間、もっと百点を取りたいと思った。

今話してくれた五冊の本、全部読みたいと。

しかし、そんな楽しい時間は一瞬で過ぎ去る。

時間が来てしまうと、嗄は帰ってしまう。

嗄はポーカーフェイスではなく、優しい微笑みを残して言ってくれた。

「また明日来るねぇ」

それだけ言い残すと、帰って行く。

確かに寂しさを感じはしたが、今日は違う。

嗄と話している時から貰った本が楽しみで仕方なかった。

自分の部屋に戻ると、すぐに嗄からもらった本に目を通す。

――やはり、この本は面白い。

嗄は自分の欲しかった本を偶然買っていた。

それを、読む前に自分にくれた。

例えようもない嬉しさが本を読みながら込み上げてくる。

その日、翼は嗄から貰った本をずっと読んでいた。

嬉しさに胸を躍らせながら――









                                              ~To be continued~

今の所、翼は七話までがブログの方でも最新の更新ですね。

今回は一気に今までの分を上げさせてもらいましたが。

次からはブログの方と同じ更新頻度になりますw

どうぞお付き合いくださいませw

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