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青春スクエア ~綾崎翼の片思い~ 小学生編15

真っ白な世界にただ一人だけ、場違いな少年がいた。

周りの白とは対照的な黒の学生服を身に纏う少年。

ただでさえ学生服を着た学生が病院へ来るのは珍しいのだが――

少年の場合は違った。

この病院へ通院しているわけではない。

謂わば、黒衣の医師だ。

医師免許を持っていないただの子供だが。

しかし、少年は本当に〝医師免許を持っていない医者〟なのだ。

少年は数ヶ月で医療知識を全て身に付けた。

まだ実践はしていないが。

知識だけは十分だった。





――将来この病院を支えるであろう少年――




少年さえ居れば病院は安泰だと誰もが思っていた。

だから誰一人として気付こうとはしなかった。

少年が本心でやっているのではないと言う事に。

病室の前に立ち、静かに扉をノックする。

中から「はい、どうぞ」と返事が返って来て翼は病室内に足を踏み入れる。

病室には翼より四つ程年上の少女が居た。

その少女に翼は声を掛ける。

「調子は如何ですか?」

「本当に先生みたいなんだね」

「このように接するよう、言われましたので」

「君、みんなからなんて呼ばれてるか知ってる?」

「それなりには耳にしています」

「でも君って小学生に見えないよね。敬語使うと特に」

「……そんな事ありませんよ」

「ねぇ、タメ口で良いんだよ?」

「――申し訳ないんですが、これだけは譲れません」

「そっか……。まぁ、頑張ってね」

「ありがとうございます」

頭を下げ、病室から出て行く。

そして次の病室へと向かう。

年が近いからか、すぐに患者と仲良くなる事が出来た。

仲良くなると言っても〝患者〟としてだが。

基本的に翼は聞き手側に回っていた。

患者達からの相談が多い。

どちらかというと患者とは会話ではなく、相談に乗る事の方が多かった。

一方的に相談を受ける時もあるくらいだ。

患者達が翼に相談してくる理由はわかっていた。

それは翼が的確な返答を返してくれるからだろう。

しかし会話の内容が相談でも翼は良かった。

相手に話を振るのが苦手な翼としては好都合だからだ。

病室から出て、翼は深い溜め息を吐き出す。

やはり、気が乗らない。

そんな生活がもう五ヶ月も続いている。

もうすぐ翼の誕生日だ。

どうしてだろうか、最近一年があっという間に過ぎてしまう気がするのは。

そう感じるのはまだ早いだろうと自分でも思うが……。

その理由はわかっていた。

毎日、似たような日々。

そんな日々を楽しいと感じた事はあまりない。

嗄と居る時は楽しいと感じるのだが――

それ以外の学校や病院、家に一人で居る時は楽しくない。

これが恐らく、一年が早く感じられる理由だ。

答えに辿り着き、翼はもう一度深い溜め息を吐き出す。

それから次の患者の病室へと足を向ける。

時に患者と話しながら苛立ちを感じる時がある。

結局は嫌な医者のような事をしていると。

けれど患者と話す事がたまに楽しい時もある。

患者と話す事を楽しいと思う自分にも腹が立つ。

二律背反。

本当に自分が嫌になる。

息が詰まりそうな日々だ――

 九月十七日。

そんな中、翼の誕生日がやって来た。

朝起きて、食事を採り学校へと向かう。

やはり、普段と何一つ変わらない。

誕生日でも変わらない日々にすっかり慣れてしまった。

しかし、それは病院へ行くまでの間だけだ。

病院に着き、正面玄関から病院へと足を踏み入れて。

ナースステーションの前を通った時だった。

最初に聞こえたのはクラッカーの音。

クラッカーに驚いていると……。

「「「翼君、誕生日おめでとう!」」」

子供達や年の近い患者達。

それにナースや藤森先生の声が。

翼はクラッカーとみんなの声に驚いた。

以前は子供達しか誕生日を祝ってくれなかったのだが。

藤森先生は祝える時に誕生日を祝ってくれた。

けれど今回は違う。

最近は年の近い患者の元へ行っているからだろう。

今までの誕生日とは祝ってくれる人の数が全く違う。

こんなにも多くの人が誕生日を祝ってくれる事が嬉しい。

だが、翼にとってここに居る人の中で信頼出来る人は藤森先生ぐらいしか居なかった。

子供達と年の近い患者とは何処か抱いている思いが違う。

その理由は恐らく、年の近い子供はみんな同じだと思っているからだろう。

みんな、クラスメイト達と同じだろうと。

また、裏切られるのではないだろうかと心の何処かで恐れていた。

年の近い患者を、信じられなかった。

いや、信じられないのだ。

まだ幼い頃から受けて来た心の傷が癒えていない証拠だ。

――それなのに翼はその心の傷を乗り越えようとしていた。

裏切られても。

一人になっても。

それでもまだ人を信じようとしていた。

傷付けられても人と居たいと思っていた。

「オイ、翼。これはアタシ等からの気持ちだ。受け取れ」

男らしく胸を張ってプレゼントの箱を差し出してくれるのは。

ここ数年何度も入退院を繰り返している亜麻野樹姫だ。

翼は樹姫からプレゼントの箱を受け取る。

「……ありがとうございます」

「だァかァらァ……前からずっと言ってンだろうがァ。その敬語やめろってよォ。アタシはなァ、堅苦しいのが嫌ェなんだよ」

「――努力する」

「おお、それで良いンだよ」

樹姫はニカッと爽やかに笑って言ってみせる。

まるでそれが合図かのように、子供達が翼の為にバースデーソングを歌い始めた。

子供達の歌うバースデーソングを聞きながら翼は感じた。

このようにみんなで一緒に何かをする、この一体感。

また、このような一体感を感じたい。

何か、良い案はないだろうか。

そう考え、ある事を思い付いた。

クリスマスパーティー。

この先のイベントであるのはハロウィンとクリスマスなのだが……。

ハロウィンは仮装してお菓子を貰うイベント。

しかし、病院という場でハロウィンのイベントをしても良いのだろうか。

そこまで考え、一度全ての考えを停止させる。

ハロウィンとは、どんなものだっただろうとイメージしてみる。

翼にとってハロウィンのイメージは、ホラーのイメージが強い。

ホラーと言えば、夜の病院。

ならば良いのではないだろうか。

だが、夜の病院には人成らざる者が徘徊している。

以前病院から帰ろうとした時に数度、見てしまった。

幽霊というものを。

「――――」

幽霊の事を考えてしまった為、一度考える事をやめる。

それに今はみんなが翼の誕生日を祝ってくれているというのに。

今は年の近い患者達が自分の特技を披露していた。

その特技を見ながら、またハロウィンについて考える。

こんなにも良い誕生日を祝ってくれたのだ。

誕生日のお礼にハロウィンのイベントはどうだろうか?

だが、この考えが良いものなのか悪いものなのか翼には判断出来ない。

すると藤森先生が子供達からようやく解放されたようで、翼の隣に腰を下ろす。

自分でも少し迷いながら、藤森先生へと聞く事にした。

「あの、藤森先生。少し良いですか…?」

「ん? どうかした?」

「ハロウィンのイベントをするっていうのは…どう思いますか?」

「ハロウィン? 面白そうだね。やろうよ」

「ですけど、仮装用の衣装とかはどうしますか?」

「えー、そんなの深く考えなくても良いじゃないか。包帯ならいくらでもあるし、使えなくなったシーツを縫ってそれを被ればおばけになれるし。その他は僕が用意するよ」

「ありがとうございます、藤森先生」

「でも、僕も思ってたんだ。何かイベントをやれれば良いのにってね。普通はイベントとかやるけどここはやらないから。だからそのイベントが出来るから嬉しいし、楽しみなんだ」

藤森先生の言葉を聞いてやはりこの病院は普通ではないと思えた。

よく考えれば普通の家庭さえ持てない両親の病院なのだから仕方ないが。

それを知り、ハロウィンのイベントをやる事を決めた。

その後は帰る時間までみんなからずっと祝ってもらった。

ショートケーキも用意されており、食べさせてもらった。

――凄く嬉しかった。

あのようにして大勢に祝ってもらうと、自分の存在を必要としてくれている人がちゃんと居るのだと思えたからだ。

誕生日会が終わると翼は真っ直ぐ家へと帰った。

家に帰るといつものように手洗いうがいを済ませてから自室へ向かう。

階段を上がり、自室へ入るとすぐに制服から着替える。

私服へと着替えると制服の上着とズボンをハンガーに掛け、勉強机へ視線を向けた。

嗄が来るまでの間、話を書いていようかと思いノートを開く。

勉強机の椅子に手を掛けて腰を下ろす。

それからシャーペンを手にしてノートを彩っていく。

〝ここには何もない。

あるのはきっと悲しみと寂しさ。

そんな色の感情しか存在しない。

何かを産み出せる力があるのならば、この手で創り出す。

自分だけの世界を。

全てが美しいもので。

綺麗なものだけで世界を創る。

だが、創った所でその世界に存在するのはただ一人。

世界を産み出した、自分だけだ。

二人も人間が存在すると、世界は汚れてしまう。

滅んでしまう。

二人が三人と、三人が五人と増え続け――

やがては〝人類〟というものが産まれる。

〝人類〟は増え続ければ抗争を起こし、争い始め、殺し合う哀れな種族だ。

ならば、一人で居れば良い。

そうすれば、そんな事にはならない。

産み出したこの世界が滅ぶ事もない。

「……結局は、一人なのか……」

彼は呟く。

「何処へ行っても結局は一人ではないか」

長きの間、彼は一人で過ごして来た。

もはや、一体いつから一人なのか思い出せない程長きに渡り。

彼は何度も手に入れようとした。

幸せを、笑顔を、恋人を。

しかし、何一つとして彼は手に入れる事は出来なかった。

手に入れる事は愚か、彼が手を伸ばす度。

彼が何かを得ようとする度に彼の手にしようとしたものは消えた。

あと少し手を伸ばせば届く距離にあっても、触れる瞬間に消え失せてしまう。

世界は彼に何かを得させる事を許さなかった。

世界は彼の存在を拒んだ。

彼はそんな世界を強く、強く……。

憎んだ。

恨んだ。

妬んだ。

こんな世界なんて消えてなくなってしまえば良いのに。

そう強く願った。

こんな世界滅んでしまえば良いんだ。

彼はそう強く望んでいた。

そして、世界は彼の望む通りになった――〟

ふと、翼は顔を上げた。

シャーペンを置いて時計を見つめる。

時計が示す時間は午後八時五十分だった。

驚いて思わず勉強机の前にある窓から外を確認した。

この窓の下には玄関があり、ここからだと家の門が見える。

だが、どんなに目を凝らして見ても嗄の姿はない。

慌てて階段を降りて行き、玄関の扉を開け放つ。

しかし、何処にも見当たらない。

呼び鈴を押されて気付かないわけがない。

どんなに夢中になって話を書いていたとしてもだ。

つまり、嗄はまだ来ていないと言う事になる。

一体どうしたのだろうか。

何か、あったのだろうか。

嫌な想像ばかりが頭に過ぎって行く。

そんな最悪な事ばかりを考える自分に酷く言い聞かせる。

バイトが忙しいのかもしれないと。

けれどそれと同じくらいに――

いや、それ以上に嫌な事ばかりの声が頭に響く。

本当はバイトなんてもう終わっているのに来ないつもりだ。

自分の事が面倒になってしまったから。

そんな事が脳裏に過ぎってしまう。




――また一人になってしまう――




そう思った瞬間、寒気や吐き気に似たようなものが全身を駆け抜けた。

悪い方へ考えないように、考える事をやめる。

嗄が来る事を信じて自室へと戻った。

自室でハロウィンのイベントについて考える。

嗄が来るのを信じて待ちながら――




 翼は深い溜め息を吐き出す。

結局あの日、十八日になっても嗄は来なかった。

翼は嗄を待ち続け、一睡もする事なく朝を迎えた。

後日嗄から話を聞いた所、どうやら他のバイトで休んだ人の代わりに行っていたらしい。

翼の家に行けないと電話しようとしたらしいのだが、嗄は父親の電話番号しか知らなかったようだった。

父親に一応電話したらしいのだが、結局連絡は付かなかったらしい。

それを聞いた翼は……。

どうしてだか、可笑しいくらいに納得した。

その上に仕事なら仕方ないと完全に割り切っていた。

――少なくとも、嗄の前では。

最近一人で居る時はいつも溜め息だらけだ。

どうしても誕生日は嗄に祝ってもらいたかった。

きっと、これは翼の我儘なのだろう。

だが、嗄が来なかった事に対して強いショックを受けたのも確かだ。

なのに翼は嗄を責める事はしない。

これはただの我儘だからだ。

それに翼と嗄の関係はただの家庭教師と教え子。

そんな立場の自分に言える事は何もない。

そしてもう一度深い溜め息を吐き出す。

「オイ、翼! オメーこの間からずっと溜め息ばっか付いてンじゃねェよ。見てるこっちまで気分下がるだろーがァ」

「あ……すみま――ごめんなさい」

「まァいいけどよォ……。お前いっつも相談乗ってて疲れてンだろ? 良かったらアタシがお前の相談乗ってやろうか?」

「いや、平気だから。迷惑掛けてごめんなさい」

「謝ンなっての。別に迷惑じゃねェし。ま、何かあったら頼ってくれよ。アタシに出来る事なんざねェだろうけどな」

そう言うと樹姫は子供用の仮装衣装を渡してくれる。

それを受け取りながら樹姫の方を見てみると……。

樹姫は良い笑顔で笑っていた。

本当に樹姫は良い顔をして笑う。

樹姫の笑顔を見ると少しだけ元気になれた。

気持ちを切り替えてから藤森先生の元へ行き、子供達の衣装を渡す。

「藤森先生の方も準備は出来ていますか?」

「もちろん。早くしたくて堪らないな」

楽しそうに笑って藤森先生は言う。

誕生日の後、ハロウィンのイベント企画表を見せると藤森先生はまるで子供のように喜んだ。

更にはお菓子を渡す役は自分がやりたいと言い出して来た。

けれど、そこはまだあまり考えていなかった。

そこに藤森先生のアドバイスも入って今の形が出来た。

ハロウィンのイベントは六時から始まる。

いつもならば帰らなければいけない時間なのだが、今日は違う。

以前嗄に相談すると、ハロウィンはケーキ屋等で忙しくなると言っていた。

その為家に行く時間が遅くなるか、行けないかもしれないと言われた。

なので今日はイベントの様子を見られる。

それに、主催者の居ないイベントもどうかと思う。

そんな事を考えている間にも時間は刻々と進み。

やがて、六時になる。

その頃の待合ホールには仮装した子供達ばかりになっていた。

可愛い魔女や藤森先生の案で出来たシーツを被ったおばけに可愛い包帯人間達。

他にもヴァンパイアや狼、フランケンシュタイン、骸骨など。

様々な仮装をした子供達が居た。

「そろそろ始まンな」

翼の隣で呟いた樹姫も仮装――

と言ってもいつも通りのパジャマ姿に狼の耳飾りを付けているだけなのだが。

耳飾りを付けている以外に何も変わらない。

「つーかお前。仮装しねェでいいのかよ?」

「みんなが楽しんでくれるならそれで良い」

「そうかよ」

「じゃあみんな。ハロウィンのイベントを始めるよ。あんまり遠くに行ったらいけないからね」

「「「はぁ~い」」」

子供達の可愛い声が聞こえる。

ナースの一声でハロウィンのイベントは始まり、子供達が一斉に散らばって行く。

子供達はナースや翼の元へ寄って来て……。

「「「トリックオアトリート! おかしをくれなきゃイタズラするぞ!」」」

先程翼が教えた言葉を言い始める。

そんな子供達に対して翼やナース達は素直にお菓子を渡す。

色んな所からお菓子を貰って喜ぶ子供達の声が耳に届く。

喜ぶ子供達の姿を見て翼は改めて思う。

ハロウィンのイベントをして良かったと。

翼も嬉しく思いながら子供達を見つめていると――

隣から、樹姫の居る方から指を鳴らすような音が聞こえた。

「ンじゃ。アタシも参加すっかァ」

そう呟くと樹姫はお菓子を貰った子供達の元へ行った。

樹姫もこういうイベントに参加するのかと思い、少し驚いた。

翼にはそんなイメージはなかった。

それもそのはず。

樹姫は子供達に向かって言い出したのだから。

「トリック・オア・トリート……お菓子をくれなきゃ……暴れるぞゴラァァァァァァ!!!」

「いやぁああああああ!」

「ぎゃあああああああっ!!」

樹姫が子供達に向かってドスを利かせた声で言うと悲鳴を上げて逃げて行く。

樹姫は口調と性格からか、子供達から怖がられている。

いや、子供達だけではなく年の近い患者からもだ。

その為狼を選んだのだろうか。

もはや雰囲気が狼そのものだ。

すると、あまりの迫力に子供達が樹姫にお菓子を渡す姿が見えた。

お菓子を貰うと樹姫は子供達の後を追うのをやめた。

自分の分のお菓子を樹姫に渡した子供達がお菓子を取り返そうとするが。

誰一人として樹姫に敵う者は居ない。

そんな樹姫の姿を見て、正直翼は驚いていた。

樹姫には翼の考えたイベント計画は伝えてないはずだ。

もちろん、藤森先生が言うとは思わない。

それにも関わらず、樹姫はそれをしている。

まぁ、ハロウィンはそういうイベントなので仕方ないが。

多くのお菓子を手にして戻って来た樹姫がある事に気付いた。

「そういやァ藤森先生が居ねェじゃねェか」

そう呟きながら翼に数個、一口サイズのチョコレートを差し出してくれる。

翼はチョコレートを一つだけ貰い、口の中へと放り込む。

どうやら、藤森先生の方も準備が整ったようだ。

翼がそう言おうとした時だった。

「はははははっ! Trick or treat! お菓子を寄越さないとこの俺様が悪戯するぞ!!」

そんな藤森先生の声が待合ホールに響き渡る。

声の聞こえた方へその場に居た全員が視線を向けた。

みんなの視線の先にはマントを翻し、タキシード姿で――

髪型をオールバックで固め、ヴァンパイアになった藤森先生の姿が。

そう、このアイディアは藤森先生のものだ。

当初の予定では、じゃんけんやクイズなどのミニゲームで負けたら子供達にお菓子をあげるものだった。

それを藤森先生にも手伝ってもらいながら翼もしようと考えていた。

だが、それでは面白くないと言う事で……。

藤森先生自身が俺様なヴァンパイアになって子供達からお菓子を奪う役になると言い出したのだ。

その上、ヴァンパイアの性格を決めたのも藤森先生。

翼にはそういう知識が欠けていた為、助かった。

「さぁ、お前等の持っているお菓子を俺様に寄越せ」

「やだ!」

「いつきねーちゃんにとられたからいや!」

「は……? もう取られた?」

「…………あちゃー……」

隣に居た樹姫が困ったように呟いた。

やはり、何も知らなかったのだろう。

それでも樹姫は良い働きをしてくれた。

「まぁ、どうでも良い! 寄越さないって言うなら奪うまでだ。この俺様とじゃんけんしろ! 俺様が買ったらお前等のお菓子を貰うぞ」

「のぞむところだ!」

「かかってこい、きゅーけつき!」

「吸血鬼じゃない、ヴァンパイアだ!」

――どうやら、ハロウィンイベントは大成功のようだ。

少しだけ想像していたのとは違う事が起きたが、事は予想通りに進む。

藤森先生が負けるとリベンジ。

勝つと子供達の方からリベンジ。

その頃になるとじゃんけんばかりではなく、クイズなどもしていた。

藤森先生の登場で子供達は先程よりも楽しげだ。

そんな子供達の姿を見て安心した。

それに、藤森先生の演技力の高さに正直驚いた。

最初、ヴァンパイア役をやると言った時少し不安に思った。

ちゃんと演技出来るだろうかと。

わざとらしい演技になるのではないだろうかと。

けれどその心配は必要なかった。

大丈夫かと聞いた時に「これでも役者を目指してたんだよ」と言ったあの言葉は嘘ではなかった。

みんなのおかげで初めてのイベントは大成功となった。

ハロウィンの次は、クリスマス。

その頃の自分がどうなっているのかは。

今の翼には知る由もない――









                                              ~To be continued~

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