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青春スクエア ~綾崎翼の片思い~ 小学生編11

〝さぁ、夢を見よう。

決して覚める事のない夢を。

永遠に眠り続けよう。

幸せな夢を見続けよう。

此処に居れば、全ての願いが叶う。

さぁ、眠りに落ちておいで――〟






そこまでノートに書き、翼は顔を上げる。

窓の外には桜の花弁がひらひらと舞い、もうすっかり春の陽気だ。

今年の春、翼は五年生へと進級した。

来年でついに、卒業だ。

その時もきっと、今の気持ちと対して変わらないだろう。

――きっと、中学生になっても高校生になっても。

年を重ねる度、大人になっていく度に医者への道が近付いてくる。

それが嫌だった。

嫌で嫌で、堪らなかった。

どうせならば、時が止まってしまえば良いとさえ本気で思っていた。

しかし、それは出来ない。

出来る事というならば、夢を見る事くらいだ。

その時ぐらいしか、現実逃避が出来ない。

翼は小さな溜め息を吐き出して時計に目をやる。

時計の針は午後十二時三十分を指していた。

今日は病院へ行く日だ。

病院の子供達と遊ぶ約束をしている日。

その事を思い出し、すぐに出掛ける仕度を始めた。

外へ出る仕度が整い次第、翼は家から出る。

今日は子供達と何をして遊ぼうかと考えながら、病院へと足を向ける。

考え事をしているとすぐに病院へと着き、真っ直ぐ正面玄関へと向かっていた時だった。

視界の端に桜の木の下で車椅子を押す藤森先生の姿が見えた。

車椅子に乗っている人物は誰だろうかと思い、そちらの方へ目を向け少しだけ驚いた。

車椅子に乗っていた人物。それは、以前良く藤森先生と一緒に居た少年だったからだ。

ここしばらく、あの少年の姿を見ていなかったのでもうとっくの昔に退院したものだと思っていたが――

どうやら、そうではなかったようだ。

それは少年の顔を見ればすぐにわかる。




――彼はもう長くないと――




その事を藤森先生もわかっているだろう。

いや、藤森先生ならわかっているだろう。

しかし、翼は藤森先生と少年の姿を見て何処か違和感を感じた。

どう説明して良いのかわからないが。

なんとなく。

本当になんとなくなのだが。

藤森先生が、少年にしがみついているような。

少年はもう長くないはずなのに、それを無理矢理にでも先延ばしにしようとしているような。

いつものようではない藤森先生。

藤森先生が少年に向ける笑顔がやけに悲しげに映って見えた。

とても悲しげで。

まるで、今にも泣き出してしまいそうな表情。

見ているこちらまで、胸が痛むような表情。

翼はそんな藤森先生の顔を見ていられず、足早にその場を立ち去った。

正面玄関から病院内へと入り、子供達の元へと向かうのだが。

どうしても藤森先生のあの悲しげな笑顔が頭から離れない。

あの表情は、死に対する悲しみだけではないように見えた。

もっと深い何かが、藤森先生の中にはあった。

それに――

あんな藤森先生を翼は知らない。

あんなに必死になっている藤森先生は。

「………くん」

「…………めぐみくん……」

「翼君」

不意に名前を呼ばれ、我に返る。

驚きながらも自分を呼んだ人物へと目を向けてみる。

「今日はどうしたの? 心、此処にあらずって感じだけど……」

翼は嗄の声を聞いて、気持ちを切り替える。

嗄が来ているというのに、上の空なんて失礼にも程がある。

そう思いながら嗄に採点してもらったテストに目を通す。

テストの結果は上の空だったにも関わらず、満点だった。

その事に気付き、我ながら驚いた。

驚いたのだが……。

やはり、藤森先生の事が気になる。

(……大丈夫かな。藤森先生…)

「どうしたのぉ? 今日は考え事ばかりしてるねぇ」

突然目の前に嗄の顔が現れた。

顔が近い――

それ以前の問題だ。

驚きのあまり、まるで猫のように少し飛び跳ねてしまった。

それだけでは留まらず、心臓が激しく高鳴る。

驚いて心臓が煩く騒いでいる。

さりげなく嗄から視線を逸らし、胸を押さえる。

「――僕で良かったら、話聞くよぉ?」

嗄は優しくそう言ってくれる。

だが、こんな事を話しても良いのだろうか。

嗄の迷惑にはならないだろうか。

そんな事を考えながら言っても良いのかと迷っていると。

「一人で抱えているよりも、人に話した方が楽になるし。何かわかるかもしれないよ」

嗄にそう言われて、顔を上げてみる。

すると、嗄と目が合った。

目が合った事に気付いた嗄は、優しく微笑んでくれる。




――ドキン――




嗄の顔を見ただけで胸が締め付けられる。

この感覚は、藤森先生を見ていた時とは違うもの。

何だろう、これは。

一体どうして、こうなってしまうのだろうか。

嗄の事を考えただけで、何故?

「――――」

少しだけ躊躇い。

翼は静かに口を開いた。

「……小学校に上がった頃からの知り合いが、少し気になって……」

「ん~? 友達ぃ?」

「そんな感じでもあるんですけど……その…。病院の先生なんです」

「あぁ、なるほどねぇ……」

「出逢った頃くらいから先生と仲の良い患者さんが居て。その人、前に見た時よりもずっと弱ってて……。もう、長くなさそうで……」

「小学校に入学した頃なら、結構長く病院に居るんだねぇ」

「はい。……でも、一番心配なのはその先生で。先生はいつだって笑顔で、太陽みたいな人なんですけど……。先生がその患者さんと一緒に居るのを今日、見たんです」

脳裏に思い浮かぶのは、悲しげな藤森先生の笑顔。

笑顔の次に見せた――

今にも泣き出しそうな、あの表情。

「……先生、悲しそうに笑ってました。その顔が、頭から離れないんです。先生のあんな顔、初めて見ました…」

「……そっかぁ」

嗄は小さくそう呟いた。

きっと、答えなど出て来ない。

自分の求めている答えなど、特にだ。

答えを求める以前に、翼自身がどんな答えを求めているのかわかっていなかった。

自分の中で答えを探していると、嗄が口を開いた。

「医者についてそんなに知らない僕がいうのもなんだけどね。医者は、患者の怪我や病気に対して最善を尽くす存在だと思うんだ。だって、どんなに腕の良い医者でも全ての患者の病気を治す事は出来ないから。どんな医者だって、完全に病気を治す事は出来ない。だから僕、医者は患者に対して最善を尽くすしかないと思うんだ。翼君やその先生の気持ちもわかるけどね。人は、いつか必ず死を迎えるんだ。僕達は、生きてるから」

「――――」

――嗄の言葉に正直、驚いた。

嗄のような人こそ、医者に向いているのではないかと思えた。

驚きのあまりに、じっと嗄の顔を見つめていると。

再び嗄と目が合い、優しく微笑んでくれる。

嗄の微笑みを見ただけで何故か心臓が鼓動を刻み、顔に熱が集まっていくのを感じる。




――これは一体、何なのだろうか――




「あ、そうそう。この間言った本、買って来たよぉ。はい、今日のテストのご褒美だよ」

そう言い、嗄は鞄の中から本を一冊取り出した。

嗄は本の表紙を懐かしげに目を細めて見つめ、差し出してくれる。

差し出された本を嗄から受け取り、表紙に目を落とす。

本のタイトルは〝四季の青春〟だった。

「この本ねぇ、青春の恋の話なんだけど。読んだ当時は恋なんて全然わからなかったんだよねぇ。今もまだわからないけど」

笑いながら嗄はそう言う。

それから、嗄は翼の背後にある本棚へと視線を向けた。

本棚にはもう何処にも本の入るスペースなどなかった。

全て、嗄から貰った本で埋め尽くされている状態だ。

流石に新しく本棚を買わなくてはいけない。

そうしなければ勉強机の上が――

貰った本の置き場の事を考え、自然と勉強机へと視線を泳がせる。

――勉強机の上には本が山積みにされており、今はかろうじて字を書くスペースがある程度だ。

そろそろ本棚を買わなくては。

そう思いはするのだが、今の所本棚を買いに行く時間がない。

どうしたものかと考えていると。

「もうそろそろ、本棚を買った方が良いねぇ…」

嗄の方からそう切り出してくれた。

嗄の言葉に頷き、翼も口を開く。

「俺もそう思っているんですけど……。買いに行く時間がなくて…」

「あ、じゃあ僕も付いて行くよ。持って帰るの大変そうだからねぇ」

「え、いいんですか?」

「ん~…でもちょっと待ってねぇ……」

小さくそう呟くと嗄は鞄の中から手帳を取り出した。

取り出した手帳を開いて見つめ、少しだけ唸る。

「三芳さんの都合が問題だなぁ……。この頃はよく出掛けてるしぃ……」

そんな事を呟きながら、嗄は手帳を捲る。

嗄の口にした〝三芳〟と言う人は誰だろうと疑問に思っていると。

不意に嗄が手帳を閉じ、口を開いた。

「ごめんねぇ。バイト入れてたのもあって、一ヶ月くらいはちょぉっと無理かなぁ……」

「そんなにしてるんですか? バイト」

「うん。それとねぇ、先輩が入院しちゃったから先輩の分のシフトも入ってるんだぁ」

「大丈夫なんですか? そんなに働いて……」

「ん~? 平気だよぉ。学生時代の方がもっと忙しかったからねぇ」

優しい笑顔を浮かべて、嗄は言う。

……少しだけ、嗄の言う〝学生時代〟の生活が気になる。

一体、どのような学生時代を送っていたのだろうか。

そんな事を考えているのも束の間。

すぐに嗄の帰る時間となった。

嗄はいつものように笑顔で手を振ると、背を向けて行ってしまう。

嗄を見送ると、家には翼ただ一人になる。

家で一人になり、諦めるようにして自室へと戻って行く。

自室へ戻ると、勉強机の上に置かれたある一冊の本を静かに見つめる。

それは、今日嗄から貰った〝四季の青春〟だった。

やがて翼は四季の青春を手に取り、ベットに腰を下ろして読み始めた。

――四季の青春という物語は、主人公の少年が恋をする様が描かれていた。

春に恋をし、季節を迎える度に胸の奥にある想いが募っていく。

そんな物語だった。

しかし、翼は読み始めてすぐにページを捲る手を止めた。

ある一文に目を奪われたからだ。

翼はもう一度、その一文に目を通す。




――〝彼女の事を思うだけでこんなにも胸が締め付けられる〟――




自分にも当て嵌る文が、そこには書かれていた。

その事に驚き、戸惑いながらも読み続ける。

だが、読み進めているとまた目を奪われる文が出て来た。




――〝彼女の事を考えるだけで何も手に付かなくなる。彼女の事しか考えられない〟――




――〝彼女ともっと居たい〟――




――〝彼女の事をもっと知りたい〟――




読み進めていく度に、心臓が高鳴る。




――〝彼女の事をもっと知りたい〟――




自分の中で、激しい感情が強くなっていくのを感じた。

これは――




――〝この気持ちに名前を付けるならば――〟――




見てはいけない。

この先を、見てはいけないような気がする。

その答えを知ってはいけないような気がする。

知ってはいけない。

そう思いはするのだが……。

翼の脳裏に浮かぶのは嗄の事ばかりが綴られているノートと。

嗄の顔だった。

心臓が今までにない程に高鳴り、煩く感じる。

それでも翼は次のページを恐る恐る捲った。

そして、知ってしまったのだ。




――〝それは、恋だ――〟――




その一文を読んだ瞬間、時間が止まったように感じられた。

次の瞬間、翼の中に外へと溢れ出ようとする激しい感情が。

嗄の事ばかりが思い浮かぶ。

この感情に名前を付けるならば、それは恋。

翼は知ってしまったのだ。

翼の中に渦巻いているこの感情が、〝恋〟なのだと。





――〝自分は、彼女の事が好きなのだ〟――




「俺は……嗄さんの事が…好き――?」

思い描くのは、嗄の笑顔。

自分だけに向けてくれる、あの笑顔。

自分の為に勉強をするようにと言ってくれたあの言葉。

読んだ本の感想を楽しそうに、嬉しそうに語ってくれる嗄。

そして、家族について話してくれた時の、あの悲しそうな表情。

ドクン――

胸が痛む。

しかし、この痛みは今まで感じて来た胸の痛みとは違う。

これは胸が痛むのではなく。

胸が〝踊る〟だ。

その日、翼は知ってしまった。

〝恋〟と言うものを。

嗄への想いと言うものを。

知ってしまったと同時に、ある扉を開けてしまったのだ。

悲しい、悲しい片思いの扉を。

切ない、片思いの扉を……。




 自分の中の想いに気付き、数日後の事。

休日だったので、翼は病院の子供達と遊んでいた。

流石に昼前から夕方までずっと子供達の相手をしていたので疲れを感じる。

休憩を挟む為、ナース達に子供達の相手を代わってもらい飲み物を買いに行った。

自動販売機の前へ立ち、買う飲み物を選びながらふとある人物の事が脳裏に過ぎった。

(……藤森先生、最近見掛けないな……)

その人物とはやはり、藤森先生だった。

先日患者と一緒に居る姿を見て以来、藤森先生の姿を見ていない。

それにここしばらく、子供達の前にも姿を見せていない様子だった。

「――――」

藤森先生の事を考えると、一緒に居た患者の事も気になる。

それほどに、藤森先生と同じくらいにあの患者の事も心配しているのだろう。

それから、少しだけ比べてみる。

藤森先生に対する想いと、嗄への想いを。

それは全く違い、少しだけ安心する。

恐らく藤森先生への想いは、友人ではなく。

家族愛のようなものなのではないだろうか。

子供の頃に良く居た大人と言えば、藤森先生が一番に思い浮かぶ。

だからだろう。

こんなにも、藤森先生の事が心配なのは。

出逢ってたったの五年だが……。

藤森先生の事を考えていた時。

ふと、腕時計に視線を落とした。

時計の針はもう午後五時四十分を示していた。

腕時計を見て、一瞬焦る。

こんな時間になるまで病院に居たのかと驚きながら。

慌てて買った飲み物を飲み干し、すぐに子供達の元へと戻る。

早く帰らなければ、嗄が来る時間になってしまう。

子供達の元に戻り、翼はすぐに口にした。

「ごめんね、みんな。今日はもう帰らないと」

「えぇ~! いやだぁ、まだあそぶぅ~!」

「帰らないでよ、めぐにぃ!」

「きょーはびょーいんにいるの、めぐにぃちゃんは!」

「帰らないとダメなんだよ。家で俺の事を待ってる人が居るから……」

「いやぁ~!!」

「えっと……」

帰らないといけないと告げただけなのに、泣き出してしまう子供が現れた。

どうやらこの様子だと、子供達は帰してくれないようだ。

帰してくれない子供達に困りながらも、それとなく子供達に説得を試みる。

その間にも時は刻々と過ぎて行く。

翼が困り果てていると――

「コラ! 我が儘言わないの。翼君が困ってるじゃない!」

ナースの声が聞こえ、翼はナースの方を見る。

助かった。

これで子供達から解放される。

そう思うのも束の間。

「だってぇ~」

「もっとめぐ兄とあそびたいよ!」

ナースの登場にも構わず、子供達は解放する気はないようだ。

子供達に懐かれるのは良いのだが。

このようにして、解放してくれない時はすごく困る。

どう対応しようかと考えていると。

ナースが子供達に言う。

「だってじゃない。じゃあ、みんなは良いの? 我が儘言って翼君を困らせて、嫌われちゃっても」

「いやだぁ~!!」

「そんなのいやだぁ!!」

「でもまだあそびたいよ!」

「あんまり我が儘を言うと、翼君。もう病院に来なくなっちゃうよ? それ所か、ナースさん達も遊んでくれなくなるよ? みんなはそれでも良いの?」

「いやだぁ~!!!」

「……わかったよっ……。めぐみにぃ、明日ぜぇったいにきてね!」

「やくそくだよ!?」

「ぜったいだからね!」

泣きべそを掻きながら言う子供も居れば。

指切りをしようと言い出す子供も居た。

――流石はナースだと感心する。

子供の扱いはかなり慣れているようだ。

ナースに感謝しながらも、子供達と明日も必ず来ると約束をした。

約束をちゃんとしたのだが、それなのに何度も確認をして来る。

そんな子供達を潜り抜け、慌てながら腕時計を見てみるともう五十五分になっていた。

嗄はいつも五十分には家に来ている。

このままでは嗄を待たせてしまう。

それだけはさせたくない。

急がねばと思い、足早に廊下を歩く。

早く嗄に逢いたい。

正面玄関から外へ出て、全力で走り出そうとした時だった。

ある人物の姿が、視界の端に入って来た。

その人物は、藤森先生だった。

あの桜の木の下で一人、立ち尽くしていた。

藤森先生の姿を見つけ、思わず足を止めて藤森先生の元へ行こうとして一歩近付いたのだが。

――藤森先生が、桜の木に自らの拳を殴り付けるのが見えた。

「……藤森先生…?」

いつもと、藤森先生の様子が違う。

先日から違うとはわかっていたのだが、今日のは以前の時とは違う。

何処か、怒りのような。

殺気のようなものを一瞬、感じたような気がした。

翼は恐る恐る、藤森先生へと少しだけ近付いた。

少し藤森先生に近付き、ある事に気が付いた。

「……っ……!」

藤森先生が、涙を流している姿が見えたからだ。

涙が見えた瞬間、翼は足を止めた。

泣きながら藤森先生は何度も「どうして……」と呟いていた。

涙を流す度に。

どうして、と呟く度に。

藤森先生は己の拳を桜の木に打ち付けていた。

そんな藤森先生の姿を見て、翼は瞬時に悟る。




――あの患者が、死んでしまったのだと――




「……どうしてっ……!!」

悲痛に満ち溢れた藤森先生の声が耳に届く。

涙を流し、拳を桜の木に打ち付ける姿を見て翼はある事に気付いた。

もしかして藤森先生は――

あの患者の事が、好きだったのではないだろうか。

思い出すのは、藤森先生が煙草を吸いながら嬉しそうに笑っていた姿。

毎日が、楽しくて仕方がないような。

あの、笑顔。

――藤森先生は、大切な人を失ってしまったのではないだろうか。

翼はそう思った。

そして、思い出す。

〝四季の青春〟を。

あの小説の結末を。

主人公の少年は、大切な想い人を失って嘆き悲しんでいた事を。

「――――」

四季の青春を読み、その結末へ辿り着いた時。

翼は考えた。

自分が、主人公と同じ立場だったらどうするだろうかと。

愛する人を失った場合。

自分ならきっと、生きる意味を失うだろう。

そう思い、どんな行動をするかと考えてみた。

自分なら――




――その人の後を追うかもしれない――




そう思った。

もしかすれば、藤森先生もそう思っているかもしれない。

もしかすれば、翼が思っているよりもその考えは強いかもしれない。

そう思いはするのだが……。

泣いている藤森先生に、声を掛ける事が出来なかった。

その場に、立ち尽くしている事しか出来なかった。

――綾崎翼は、恋と言うものを知った。

恋とは、楽しく心が弾むものなのだと知った。

それと同じくして。

恋の悲しさというものも知ったのだった――









                                              ~To be continued~

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