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鬼女・藍川
「芽衣!!」
甲高いキンキン声が響いた。
来やがった・・・。
藍川は俺という存在に気づくと、
ジロジロと疑わしげに睨んだ。
「言ったわよね?」
脅すような声。
“芽衣は誰とも口を利かないから”
今でも覚えてる。
昨日のことだし。
「それに、芽衣はアンタの名前が、」
ピロロロロ~♪
藍川のポケットから、軽快な音楽が流れた。
藍川は携帯を取り出した。
そして、画面を見ると・・・。
「芽衣・・・」
心配そうな目で、泉川を見つめた。
どうやらメールを送ったようだ。
喋ればいいのに・・・。
遠まわしな奴!
あまりにも遠まわしなやり方に、ちょっとイラついた。
泉川は携帯を握り締めて、
俺に頭を下げて、藍川の腕を引っ張った。
「芽衣・・・行っていいの?」
泉川はコクンと頷いた。
藍川は大きく息を吸った。
「芽衣はね、<柳瀬>って名字が嫌いなの」
泉川は、決まり悪そうに目をせわしく泳がせた。
嫌い・・・?
「そういうこと。
じゃ、今後一切関わらないでね」
関わるなって・・・。
藍川は泉川を引っ張って行ってしまった。
あー・・・
ちくしょう・・・。
藍川ムカつく。