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合流&同盟

 ジョーカーを倒したはいいものの、俺は疲れきっていた。

 一番、厄介なのは凪にやられた脇腹だった。双鐘に追いかけられているときはあまり痛みを感じなかったが、冷静になって息を整えようとすると容赦なく痛みが襲ってきた。もしかすると骨が折れてるかもしれない。

「早く合流しなきゃ」

 俺は呟きながら、重い足を引きずるようにして、部室棟へと向かった。

 部室棟に向かう途中、学園長の途中経過の放送で、ジョーカーが少し早いが退場になったことと、残りが十組になったことを連絡していた。

 とりあえず、もうジョーカーに追い回されることがなくなったことに安堵しつつ、多少急ぎながら、俺は部室棟へと向かった。

 もうこの時間まで残った連中の相手ができる状態ではなかった。一刻も早く合流しなければ。

 さしたる出来事もなく、俺は部室棟までたどり着いた。ああ、あと報告しておくとすれば、飴ちゃんがついに底をついた。貴重なエネルギー補給源が無くなってしまったのである。

 最後の一個レロレロキャンディーである、ソーダ味をかみしめ、いや、舐めしめながら道中を歩いた。


 部室棟は空襲にでもあったのかというくらい荒れていた。そして、多くの生徒が倒れて、救護委員会と無傷のリタイア連中が救護活動をしていた。

「死屍累々とはこういうことを言うのか」

 部室棟の奥に向かいながら呟く、こんな状況で相棒の状態が気になったが、警告音も鳴っていないことから恐らく無事であることが伺える。

 そもそも俺が彼女の立場を心配できる立場かよ。

「本来俺は守ってもらう立場のはずなのに。何でこんなにつらい目に遭ってんだよ。畜生、当初の予定では天上葵の後ろで震えている予定だったのに」

「悪かったわね、守ってあげられなくて、それと天下くんって陰では私のこと呼び捨てなのね。まあいいけど」

 不意に後ろから声をかけられる。その声が誰のものなのかは、振り向いて確認しなくてもわかる。だって、ずっとあなたと合流することだけ考えて行動してたんだから。

「葵さまー!」

 俺は振り向いて彼女に飛びついた。

「ちょっと、えっ、なにしてんの! どうしたの!!」

「うえーん」

 俺は泣いた、鼻水を垂れながら。開始から、約四時間、俺はずっと心細かった。久しぶりの実戦な上、序列上位の化物達と緊張感あふれる争いをしてきたのだ。感情のタガが外れても無理はないよね。だから、何にも言わずに泣かせてください。

「やだ」

 べし

 彼女の胸に飛び込んでいた俺は葵ちゃんに投げ飛ばされ、固いコンクリートとキスをしていた。

 やべえ、コンクリートの熱々のキスに唇がやけどしそうだ。

「あつ、痛、って言うか、ここまでがんばったパートナーに対して酷くない!」

 顔を上げて葵ちゃんに訴える。彼女に労をねぎらってもらう権利はあっても、彼女に投げ飛ばされてコンクリートに叩きつけられる義務は無いはずだ。

「まだ戦いは終ってないんだから、シャキとしなさい、それに、胸に泣きついてくるのは絶対おかしい、あなたの方が背が高いのにどうして抱きついてきたら頭の位置が胸なのよ」

 チッ、ばれたか。

「そこは、女の子の胸に顔をうずめてみたいピュアなボーイの心情や、小説だからその辺の描写はどうとでもなるかなと……」

 声が徐々に小さくなりながら答えるが、どうやら彼女は許してくれないらしい。

「却下です。胸に顔をうずめてみたいという願望の時点でピュアなハートを失ってるわ」

「ああ、確かに心はピュアじゃないかもしれねーけど、俺は正真正銘、体はピュアな少年だぞ」

「あーあ、うるさい。もう、さっさと戦いに行くよ」

 彼女は少し顔を赤くして、部室棟の出口に向かって歩き出した。

 俺もすぐその後に続く、出て行くとき周りの連中の目が痛かったが、まあ気にしないでおこう。あれはきっと、ここまで生き残っている連中をたたえている目だ。

「あーあ、天下くんが泣きつくから、制服が汚れちゃったじゃない。しかも、所どころ鼻水ついてるし」

 葵ちゃんはまだぶーぶー言っていたが、さすがに悪い気がしてきた。

「ゴメン、後でクリーニング代払うよ」

「いいわよ、今日一日で大分制服痛んじゃったし、買い換えるわ」

 良く見ると彼女の言った通り、制服のあちこちが汚れている。どうやら彼女も苦戦していたらしい。

「マジ! 新しい制服買うんだったら、俺がお金だすよ!」

「なんで!?」

「いや、何でって、葵ちゃんががんばってたから、俺からのプレゼントなんだからね。決して、『じゃあ新しい制服のサイズがからないからぼろぼろになった制服頂戴、大丈夫俺がちゃんと捨てとくから』って言って葵ちゃんの制服を手に入れようとしてるわけじゃないんだからね」

 ゴツン。

 殴られました。どうやら、彼女は冗談が通じないらしいです。

 そうやってくだらないことを話していると、また学園長の放送が始まった。

「みんな、腹も減ってきた一時ごろ、ご機嫌どうかな、かなかなかな、ヒグラシかな」

 ……くっ、くだらない。

「それじゃ本題じゃ、ただいま、残り五組となった。もうそろそろ、決着がつくころなので、がんばってくれ、後もう、メンバーが少ないのでそれぞれの連中の場所をこの放送で言っちゃうぞ」

「まじかよ」

 そういう、情報は早めに言えよ、できるだけ敵が来ても対処しやすい場所に行かなくちゃ。

「では、発表。あーあ、何じゃ……」

 何か問題でも起こったのか、急に学園長の声が止まった。

「緊急ニュースじゃ、たった今二組倒されて、残りは三組じゃ。それぞれの現在位置を言うぞ、まず、一組が部室棟周辺」

「俺らのことだな」

 隣にいる、葵ちゃんを見ながら言う。彼女もうなずく。

「後の二組は割と近くにいるぞ、どちらもグランド周辺に陣取っておるな。それでは全校生徒の諸君、というより、残り三組の諸君がんばれよー、後、これからは二十分ごとに現在位置を連絡するからもう逃げるのはあんまり意味無いぞ、じゃあの」

 そう言って、放送は終了した。

 ヤバイね。これはすぐに行動しないと。

「早くグランドに行くよ」

 そう俺が言うと彼女が驚いた風にこちらを見る。

「どうして? その二組が戦った後に戦えばいいじゃない」

「もし、もしもだ、その二組がとりあえず手を組んで先にこちらを倒そうと計画していたら? もし、その二組があらかじめ同盟を結んで行動をしていたら? 人間ってのは見えてる敵よりも見えない敵のほうが恐ろしく見えてくるもんだ。だから、実力の不透明な俺達を協力してでも倒そうとしてくる可能性は十分にある。もし、相手が同盟を組んでたりしたらもう手遅れだけど、とりあえず現状を確認しないと、俺達は追い詰められるよ」

 そこまで言うと彼女もうなずいてくれた。

「ここからならすぐにいけるわ」

 そういって俺達はグランドへと急いだ。

 グランドは部室棟の隣である。脇腹のキズが痛んだが、もう、戦挙も大詰めだ、多少の痛みは我慢である。

 


 俺達はグランドの回りに生えてある林に身を隠しながらグランドを見つめた。グランドには一人の男が立っていた。両手に銃を持ち、指で銃をくるくると回して遊んでいる。ちなみに俺は序列を百位ぐらいまでなら目を通したが今グランドで立っている男は知らなかった。

 だが、油断はしない。凪みたいなダークホースがいたってなんら不思議じゃないしね。その上、この学園の武器としては比較的不利な銃を使っているのも気になる。銃を使う連中がこの時間まで生き残っているってだけで、隠し玉を警戒しないといけない。

 こいつは慎重に動かないと。

「隙だらけみたいね、見たところ一人みたいだし先手必勝で行こうか?」

 しかし、落ち着いている俺の隣にいる相方は、刀の鯉口を切って殺る気まんまんだった。

「ちょっとストップ!」

 今にも飛び出しそうな相方の肩を押さえる。おかしいな、葵ちゃんてこんなに猪武者みたいな考えなしの人だったっけ?

「どう考えても、あれは罠か何かでしょ。残りが三組にまでなってるのに、一人で行動する理由が無いし。それに、学園長も放送で二組はグランドにいるって言ってたじゃないっすか、絶対あれはあいつを囮にした罠ですって、だから、軽率に動くのはやめてくれるとありがたいっす。葵さん」

「なんで変な口調になったの?」

「俺があんたをなだめてるのに、なおもあんたが飛び出そうとしてるからだよ!」

 泣きたくなってきたぜ。けれど、これだけ言っても彼女はそわそわしている。どうやら『見敵必殺』の精神を持っているらしい。眼前の敵に対して我慢ができないタイプだ。

「でもどうするの」

「もう一組を探すのが先ですね」

 そういうと、彼女は少し不満そうな顔をする。

「えー……。あんまりじれったい行動とかは好きじゃないんだけど」

 勘弁してくれよ。もうここまでがんばってきたんだから俺だって勝ちたいのに。

「とりあえず、もう一組および潜んでいるグランドの男の相方を探すのが一番優先事項ですね。もう一組と出会えたら、少し様子をみて、声をかけるか放っておくかします。もし彼らが敵に突撃をしたら、片一方がやられたところで突撃で漁夫の利を得て勝利。仲間になれそうな奴なら、仲間になってグランドの敵を共同で倒して、彼らを倒してゲームセットです」

 そこまで言うと彼女が不満そうに頬を膨らました。

「それってなんか私達卑怯じゃない」

「戦術ですよ」

 そう俺が答えてもなにやら彼女は納得がいってないらしい。

 ふっ、甘いなこの程度で不満を言っていたら、この戦挙で俺がどんな手を使って生き残ってきたかを知ったら叩きのめされてお説教をくらいそうだな。今日の俺のストーリは黒歴史へと封印だ。

 まあ、俺の思っていることを誰かが書き記して本にするわけもないし、俺の卑怯な行動も誰かがわざわざ被害者全員にインタビューして拾い集めでもしない限り安心だろ。

 さあ、それよりも現状だ。少ないリスクで大きな見返りを求めるためには、一に情報二に情報、三四が運で、五に人材だ。

 まあ、手札には最強のカードを持っているが、えてして、最強の切り札は使い方によってはババへと変化する。そのうえ、残りのカードは負傷し戦闘力の落ちた大富豪でいう所の四か五のカードである俺である。

 どう考えても、もう一組がどう動くかだな。まあ、実のところ誰が残っているかは少し予想はできるのだが。

「それじゃ移動しようか」

 どうやらじっとしていることに我慢ができなくなった彼女が俺に話しかける。

「グランドの回りは林ですけど、うろちょろするのは危ないからやめときましょう」

「じゃ、どうするの!?」

「ひとつ質問ですけど、葵さん残りの一組の存在に心当たりあります?」

 彼女は顎を押さえて少し考えいるが、すぐにわからないと答えた。

「了解。じゃあ俺は心当たりがあるんで今から電話を」

 そういって俺がポケットから携帯を取り出そうとしたとき、急に背後を誰かに取られた。

 マズイ、ここまで来てドジ踏んだ。

 すぐさま手に持っている刀で対処しようとしたが、首筋に刀を当てられて、そのまま切れない刀を使って絞め技に入れる体勢になっていた。

「ちょっと、警戒がゆるすぎないかな」

 首を絞めようとした奴の台詞が俺の耳に届く、そして俺はこの声を聞いたことがあった。どうやら最後の一組は俺の読み通りだったらしい。そのうえ、お迎えまでよこしてくれた。

「そっちからのコンタクトを待ってたのさ、八十一さん」

「九九と呼びなさい、せめて」

 首に刀を当てたまま、九九こと、九条九信があきれながら答えた。

「それよりも、神楽は? あんたとパートナー組んでんじゃねーの?」


「主将なら、あなたの相方と」

 彼女は俺の背後からそのまま、指を差す。見ると葵さんと神楽が刀を抜きあって一触即発の状態だった。

「お前が天ちゃんをたぶらかしたな」

 おいおい神楽よ、相手を見て言え。俺みたいな雑魚が仲間になって喜ぶのはお前ぐらいしかいない……、悲しいが。

「たぶらかしてなんか無い。脅迫しただけよ」

 うん、間違いなくその通りだが、はっきりと言われると、がんばってきたのが馬鹿みたいだな。

 まあこのままほっといたら、殺りあって自滅しちまうし、止めるか。

「まあ、話を聞けよ神楽。とりあえず、今は協力しようぜ。決着はもう一組を倒してからでいいだろ」

 俺の言葉に反応して、とりあえず神楽は構えていた刀を下ろす。続いて葵ちゃんも下ろした。

「とりあえず、僕も天ちゃんといろいろ話したいことがあるんだ。昼前のあの双鐘って子ジョーカーだったでしょ。おかげで僕達は拠点は失うわ、運悪く戻ってきた別行動の部員は全滅するわ散々だったんだからね」

 珍しく神楽が俺に向かって怒ってきた。こいつも部員のことを考えて行動できるようになったんだな。

「すまない。緊急事態だったもんでね。あととっさに助けてくれる人間といえばお前意外に思いつかなかったんだよ」

 俺は神楽に謝った。

 まあ、こいつには多少のおべっかをつかっておけば、そんなに怒らないだろう。

「いや……いいよ別に……なんかその、頼ってくれるとうれしいしさ……」

 計算どうりにすぐにおとなしくなった。

 何だろう、こうも従順だと、罪悪感をすごく感じるな。今度なんかおごるよ、神楽。

「とりあえず、グランドに今立っている奴の情報とさっきからずっと俺を拘束しているお前のパートナーに俺を解放するように命令してくれ」

「あっと、ゴメン天ちゃん、九九放してあげて」

 そういってやっと解放された。女の子に後ろから絞め技をかけられると、胸が当たるのはうれしいのだが、刀が首元にあるっていうのはどうも受け付けないな。

 そんなことを考えていると、神楽がとりあえずわかっていることを話し始めた。

「グランドにいる奴の、詳しい情報はほとんどないんだ。今さっき脱落した連中とあいつが戦ってわかったことだけ言うと、あいつの使う武器は銃。今お手玉して遊んでいる拳銃だよ。」

「見たまんまだな」

「さらに四人同時に相手して余裕を持って戦ってた」

 そいつはすげえな。頭の中でシミレーションするが、会長選で最後まで生き残っているグループを四人同時に相手するなんて化物クラスである。

「それと、恐らく奴のパートナーは今の僕達みたいに、グランドの林に隠れて、恐らくライフルか何かで敵を狙ってる。さっきやられてた奴は恐らくライフルでやられたと思う」

「ちょっとまて、スナイパーがいるのにこんなところでのんびりしてていいのかよ」

 俺は慌てて周りをみながら言う。

「大丈夫だと思うよ、撃つつもりならとっくに撃ってるでしょ」

「そんな楽観的な」

 しかし、事実として撃たれなかったのだから、相手はこちらを狙えない場所にいるのだろう。もしくは余裕を見せているかだが。

「ちなみに聞きたいんだけど、君達場所がわからない敵から撃たれても反応して弾をかわしたりはじいたりできる?」

「「「無理」」」

 三人が揃って言った。

 なのにどうして三人とも余裕なんだよ。わからん、凡人には天才の神経がわからん。

「でも倒された奴が撃たれたとこ見てるんだろ、場所とかわかんないの?」

 そう言うと、神楽が学校のさっきまで俺の居た場所とは違う方の校舎、特別教室棟の屋上を指差した。

「あそこに、たぶんリモコン操作で動かせるスナイパーライフルを設置してる」

 俺も屋上を見てみるが、俺の目にはスナイパーライフルのようなものは見えなかった。だが、俺は神楽のことは信用している。ここで嘘を言う奴ではない。

「そんでもって、さらに本体はグランドにこれまたライフルを持って潜んでいるわけだ、そっちの位置はわかるのか?」

「いや、屋上の方を見ているときに恐らく林に隠れている奴が撃ってたから、僕にはわからない、九九も見てないらしい」

 俺が九条のほうを見ると申し訳なさそうに頭を下げた。

 とりあえずここでずっといても仕方がないので、作戦を立案する。

「とりあえず、位置のわからないスナイパーは放って置いて、グランドの中心で余裕かましてる奴を叩きに行こう」

 簡単に言ってのけたが、本当はかなり面倒な作戦である。まず、グランドにいる奴は先ほどの戦闘で四人同時に相手をしても動じずに対処していること。それに加えて居場所のわからないスナイパー。向こうのアドバンテージを述べるとかなり不利である。

 それを踏まえた上で俺が問う。

「さて、誰があのガンマンと対戦する?」

 俺の問いに葵ちゃんが口を挟む。

「どういうこと? 全員で戦えばいいじゃない?」

「うーん。神楽の話を聞くと、グランドにいる奴は一対複数の戦いに慣れてる。それに俺達は連携が取れているわけじゃない。四人全員で行っても、足を引っ張るだけだと思う」

「だったら、戦わない人間はただ観戦してるだけなの!?」

 彼女は不満をにじませて言う。それに対し俺はなだめるように言葉をつなぐ。

「違うさ、むしろ戦わない方が本命だ。戦闘で向こうのスナイパーが発砲すればその場所にすばやく行って、スナイパーを倒すのが俺の立てる作戦だ」

「つまり、グランドにいる奴と戦う奴が囮になるということ?」

 今度は九条が口を挟む。そして一人納得したような顔をする。

「その通りだね。そして、最初の質問に戻るわけだよ。『誰があのガンマンと対戦する?』」

 今度はみんな黙り込む。当たり前だ、囮になる奴は非常に危険な役だ。スナイパーに撃たれ、当たりどころが悪ければそのまま失格となるのだから。

 けれど、沈黙は意外と早く破られる。

「僕が囮になるよ」

 神楽が手を上げて言う。まあ、恐らく神楽が引き受けると思っていたが、割と決断が早かった。

「なら、私がお供します」

 そういって、九条も神楽に続こうとする。確かに二人で戦わないと、最低でも防げる可能性のある校舎の屋上から飛んでくる弾に対応できないだろうから、コンビで向かうことには賛成だが。

「いや、神楽のお供は俺が行くよ」

 一瞬九条と葵ちゃんが、「何言ってんのこいつ」みたいな顔をしたが、無視だ。

「いや、あなたでは部長の足でまといになるだけでしょ」

 九条が俺に向かって容赦のない言葉をかける。

 わかってるよ。ていうか、お前らレベルの連中に合わせることができる連中が何人いるってんだ。

「まあ、たぶん大丈夫だよ。大体の神楽の技はわかってるし、銃弾を弾くだけなら俺でもできる。それに万が一どちらかがやられても、俺達がパートナー同士だと思って、相手が油断すればそのまま反撃もできる。それに何より、協力関係を結んだ相手に一方的に不利な役を押し付けるのは後味悪いんでね」

 言いながら、俺は手に持った刀をくるくると回す。神楽の方を見たら神楽もどうやら異論は無いらしかった。

「ほんじゃ、葵ちゃんと八十一さんはスナイパーをよろしく頼むよ」

「やだ」

「了承しかねます」

 あっさりと断られた。この案に納得しているのは神楽のみであり、女子側は不満をあらわにしていた。

「じっと待ってるのは性に合わないのよね」

 そう言ったのは葵ちゃんだ。何だろう、彼女はドンドン好戦的になっていっている気がする。普段彼女に挑んでくる敵がいないためにたまりたまったストレスをこの戦いで発散して、タガでも外れたのだろうか?

 一方、九条は主将の傍にいるのが俺というのが不満らしい。そりゃあんたには二回背後を取られるという、ミスを犯しているから信用できないのも無理はないが、男が格好良く決めた決意をものの一行でひっくり返そうとするなよ。


 結局彼女を説得するのに五分かかった。九条の方は神楽が二言三言交わすだけでしぶしぶ納得したが、葵ちゃんはなかなか了承しようとしなかった。結局俺が「俺のわがまま一つぐらい聞いてくれ」と言って強引に引き下がらせたが……。

 そうして、俺達は元居た場所から少し移動して、そこからグランドで相変わらず拳銃で手遊びをする男に近付いていった。彼は俺達を見つけると遊んでいた拳銃を両手に握り直して、こちらに向かって一礼をした。

「こんにちは、先輩方、先週徳島から転校してきた、二年生の仁木じんぎ まもると言います、これからの短い間よろしくお願いします」

 非常に丁寧な口調で聞いてもいないことをべらべらと喋った。なるほど、転校生だったからノーマークだったわけだ。

「そうか、徳島からきたのか、九州からの旅は大変だっただろ」

「徳島は九州じゃねーよ!」

 俺のボケに全力で仁木は突っ込んできた。さっきまでの丁寧な態度をぶち壊して叫ぶ。

「そうだよ、天ちゃん、徳島は北の方だよ、宮城県のした辺り」

「それ福島だから、徳島じゃなくて福島だから」

「そうだぞ、神楽、今思い出したが、徳島ってのはパスポートがいる県で確か南にある県だぞ」

「いらねーよ! パスポート。南ってのはあってるけど、ちゃんとした日本の四国の県だから」

 俺達のボケに的確に突っ込んできた。ちなみに俺達二人とも、日本の地理は理解しているので、冗談で言っている。

「天ちゃん思い出した、お盆に鳴子もって阿呆みたいに踊る県だよ」

「ちげーよ、鳴子使うのは高知県のよさこいだ。徳島県は阿波踊りだよ!」

 さすがに仁木ももうそろそろ面倒臭そうな顔をした。だが、攻撃の手は緩めない。

「思い出したぞ、神楽。確か電車が通ってない県だ。そして、都会に来て電車を見ると『次の汽車いつ来るんじぇ?』って言う民族だ」

「僕も思い出したよ、県庁所在地に映画館の無い残念な県だよね」

 今度はずばり図星を突いてやった。ちなみに、俺達が徳島県のくだらないことを知っている理由はアンサイクロペディアにいろいろ教えてもらったからである。

 言いたい放題言われた仁木は今度はうつむいていた。

「畜生、何だよ、田舎馬鹿にすんなよ。畜生せっかく転校して新しい学園生活を堪能するはずだったのに、射撃部に入ってみんなの役に立とうと思って作戦まで立ててがんばったのに、みんな負けちゃうし、もうせこくて、やってられねーよ」

「なあ、せこいって誰が?」

 俺が聞いたが、無論意味は知っている、つらいという意味である。

「あーあ、俺がだよ。せっかく、こっちに来るにあたり、いろいろと方言もチェックしてたのにあんたのせいで失敗したんじょ。もうさっさと戦って終らしてやるちゃ」

 どうやら、彼の怒りは沸点を超え両手に持った銃をこちらに向けて威勢よく、発砲した。

 両手の銃はそれぞれ、左手の銃が俺、右手の銃が神楽という風に相手を決めて発砲していく。だが、俺は十メートル、神楽は八メートル程度の距離で戦っていても弾丸が俺達に当たる可能性はほぼ皆無である。俺は割と緊張しながら鞘に収まったままの刀を両手で操りながら、正確に頭と胴体を狙う弾をはじいていく。神楽は涼しい顔をして、ほんの少しづつ仁木との距離をつめながら弾をはじいていく。恐らく、リロードの瞬間に攻撃を狙うつもりであろう。本来ならスナイパーを倒すという作戦なので無理はしなくていいのだが、目の前の男を簡単に倒せるならそれでもいい。ようは勝てばよかろうなのである。

 俺は神楽のように前に向かっては行かなかった、とりあえずスナイパーがどこから攻撃してくるかわからない以上、弾を防ぐのに一杯一杯の状態になればあっさりとゲームオーバーである。

 負けたくない、恐らくこれがここまで勝ち残っている全員の気持ちであろう。俺にとってその気持ちが初めは非常に小さかったが今となっては脇腹の痛みを押しのけるほど大きなものとなっていた。

 カチっと彼の拳銃が弾切れを知らせる音が響く。銃声で痛めつけられている俺の耳にもそれははっきりと聞こえた。

 その音と同時に神楽が彼に向かって突撃をした。だが、仁木は大して慌てたそぶりも見せずにベルトに備えつけてあったマガジンを指で空中に小さく投げた。そして、両手の拳銃のマガジンを排出し、空になった銃底にそのまま空中に投げた新しいマガジンをすっぽりとはめ込み、両方の銃の銃底を叩きつけあっさりとそして手早くリロードを完了させた。

「危ない神楽!」

 弾がたっぷりと補充された銃の前に飛び出す形となった神楽に声をかけたが、叫んだところでどうにかなるものでは無い。神楽と仁木との距離は二、三メートル、そして、仁木は両方の銃口を神楽に向け、容赦なくトリガーを引いた。

 けれど、銃声は響いたが神楽の呻き声は響かなかった。発射された銃弾その全てを止め、神楽は一旦詰めた距離を再び開けた、

 すごい神技を俺は眼前で見た。神楽に向けて発射された銃弾は四発。それぞれ頭と腹に向かって二発ずつだった。まず最初の二発は仁木を倒すために振りかぶった剣をそのまま振り下ろし二発を叩き落とした。そしてもう二発は一瞬で刀を逆手に持ち替え、腹に向かってきた銃弾を刀の刃で、顔に向かってきた弾を刀の柄でそれぞれ止めたのであった。

 これにはさすがに仁木も驚いたらしく、口を大きく開いていた。

「完全にやったとおもいましたよ、先輩」

「甘いな、後輩、このお方を誰だと思っている。序列七位の弐宮神楽様だぞ。これからは舐めた口を利くんじゃないぞ」

 まったく威張らない神楽の変わりに俺が威張っておいた。もちろん神楽を立てる感じで。

「じゃあ、気を取り直して行きましょうか先輩」

 仁木は俺を無視して神楽に向かって話しかけていた。どうやら、俺の言葉は聞く価値も無いと判断されたらしい。その上、仁木はどうやら自分の脅威となるのは神楽だけだと判断したらしく、両手の銃で神楽一人を狙って銃撃を開始した。俺も向こうがその気ならばと、場所を動こうとしたが、十メートルのラインより近付こうとすると仁木もこちらに向かって銃を撃ってきた。

 どうやら、十メートル以内に近付かなければ何もされないらしい。

「むしろ、よろこぶべきだね」

 スナイパーの攻撃に備えて置くという点においてはここまで最高の状態は無い。神楽と仁木との激しい戦いにわずかに意識を裂くだけにして、俺は辺りからの攻撃に備えた。

 仁木は弾を撃ちまくるほどにテンションが上がっていった。

「先輩、戦いをする奴は二種類に分けられるんですよ」

 仁木が銃を撃ちながら俺達に話しかける。しかし、神楽は完全に仁木のことを無視していたので俺が答える。

「どんな風に分けれるんだ?」

「簡単すよ、やられる阿呆とやる阿呆ですよ。同じ阿呆ならやらなきゃそんですよね」

 そう言ってさらに銃を乱射させていく。銃声で音楽でも奏でているようにリズミカルに。

 銃の乱射と鉄壁の守りとの戦いは完全なる消耗戦だった。銃弾が神楽の体力を削っていくだけの戦いである。ただ、弾は無限に補給できるわけではない。リロードの隙は己の技量でどうにかできても、弾切れという事態には対応するすべは無い。ともすればスナイパーが動くのは確実である。

 俺は感覚を研ぎ澄まそうと息を深く吐こうをした瞬間、息を呑む光景を見た。仁木の撃った弾が神楽に被弾したのである。距離は五メートル以上は離れているというのに。さっきあれほどの近距離からの攻撃を防いだ男が喰らう距離ではなかった。

 とりあえず最初は勘違いだと思った。だが、被弾した神楽の頬には真っ赤な痕が残り、神楽自身血の混じったつばを吐いた。

「やっと一発当たったね、先輩」

 得意げに仁木が言う。対する神楽は深刻な顔で考えていた。

「何やったんだよ、仁木? それとも、神楽がミスっただけか?」

 俺が聞くと仁木は軽快に口を動かした。

「先輩はさ、何年か前にやってたアンジョリーナジョリーが演ってた、弾を曲げる暗殺者達の映画知ってますか?」

「ああ、シナリオはともかく、なかなか馬鹿らしくて笑いながらみてたよ」

 腕を振りながら銃を撃つと弾が曲がる説明がまったく無いところがさすがだと思った映画だった。

「あれとおんなじように弾を曲げたんですよ」

「はぁー。なにかよお前、自分は超能力者とでもいいたいのか?」

 確かにこの学園で気を使って化物じみたことをやってる連中は山ほど見たが、超能力使う奴はまだお目にかかってなかった。

 だが、相手は超能力をあっさり否定した。

「いやいや、違います。俺は手品師マジシャンであり、魔術師マジシャンではない。タネも仕掛けもありますよ」

 仁木はもったいぶりながら説明をする。

「タネも仕掛けもわかっちゃうとなーんだと思うのが、手品ですけどね。答えは簡単、弾の重心を変えてあるんですよ、当然ながら弾の重心が安定しないと弾はまっすぐ飛ばない。当然狙いも無茶苦茶になる。銃弾としては失格だけど、この学園にいる奴らみたいに銃弾を簡単に弾く連中には酷く有効なんですよ」

 なるほどね、多くの連中は弾を見て弾くのではなく、銃口をみて弾を止める。けれど弾が変化球だと計算が狂って被弾してしまうわけだ。

「なるほどね、ちなみにネタばらししてよかったのか?」

 俺が聞くと、笑いながら仁木が答える。

「あんたらは、銃弾がまっすぐ飛ぶことを頭じゃなくて体が覚えちまってるんですよ。そう簡単に対応できるもんじゃない、そのうえ、どの弾が曲がる銃弾かは俺もわからない。マガジンにランダムで設置してるからね」

 そうかい。なるほどね。銃を使う連中はこの学園では不利だと思ったけど、工夫一つで立派に戦えるようになるんだな、転校してから間もないのに……。

 こいつの適応能力と応用力に素直に敬意を表した。

 けれど、俺の同盟者はそうではなかった。

「天ちゃんあいつ倒しちゃっていい?」

 それまで黙っていた神楽が静かに告げる。目をみると、いつもの落ち着いた目ではなく、まだ俺達がガキでイタズラをしていたころの茶目っ気あふれる目だった。

 やばいな。そう俺は心の中で呟く。何がって? こういう目をしたときの神楽は容赦がない。ガキが虫の手足を千切る様に罪悪感も無く、ただただ、自らの力を弱者へと振るうのみである。どうやら相手に一杯食わされたことで俺の隣にいる幼馴染は非常にご立腹らしい。

「手加減してやれよ」

 俺も別になだめる気は無かった。ただ、相手が気の毒だというだけである。

 神楽は刀を正眼に構える。なんの変哲の無い構えである。そして、その構えのまま静かに相手に向かって直進していく。

 さっきまでとなんら変わりない行動。だが、相手を確実にしとめる覚悟がそこにあった。さっきまで饒舌に語り余裕を見せていた仁木も神楽の雰囲気の違いを感じ取りすぐさま銃を構え弾丸を射出する。けれど、銃弾は神楽までには届かない、それは先ほどまでと一緒の光景だった。けれど、仁木は気にせず銃を撃つ、先ほどと同じように曲がる弾が発射されれば被弾するそう考えていたのか、それとも、こちらが途切れなく銃を打ち続ければ三メートル以内に侵入させることは無いと考えているからだろうか。

 けれど、いつでも予想という奴は本人を裏切る。五メートルに近付いたとき、例の曲がる弾が放たれたが、簡単に弾かれた。その弾は確かに仁木から見ても俺から見ても曲がっているように見えたが他の弾を処理するような感覚であっさりと弾いたのだった。

 その時はまだ仁木も冷静ではあった、彼があせり始めたのは絶えず弾を撃ち続けているのに、三メートル以内にあっさりと侵入したからである。俺自身はあまり驚かない、神楽がそれぐらいのことを簡単にしてしまうことを知っているから。この状態に比べれば、先ほど神楽のスイッチが入ってないときに四発の銃弾を止めた事の方が驚きである。

 神楽は気をタメなしで使える天才だが、本当に恐ろしいのはそこではないと俺は思っている。本当に怖いのは、銃弾の中を颯爽と歩いていけるほどの剣速である。神楽は正眼の状態から一メートルの距離で、銃が撃たれたのを確認した状態で弾をとめることができる。つまり、弾が曲がっても関係ない。今の神楽は銃口をみて弾を防ぐのではなく、銃弾をみて弾をとめているのだから。無論これができるのは、スイッチが入った状態。つまり集中した状態のときに限られるわけではあるのだが。なんの事はない、相手は勝手に神楽のスイッチを入れてくれた。

 『神速絶刀』ただ、すばやく刀を振るうだけの技だが、それゆえに同じ刀同士では対抗策の無いという技だった。俺の『天剣』でも最初の一撃のみ同じスピードが出せるというだけである。しかも、神楽は一撃をはなっても同じスピードですぐさま二撃目が出せる。よって俺もあの状態の神楽には対抗できない。

 『竜牙絶刀』と『神速絶刀』。天は彼に二物を与えた、恐らく単純に剣術ではこの学園で彼にかなう男はいないだろう。俺がかつて負けた相手は雲の上にいるほどの実力者になったのだ。

 戦いは一方的に仁木が追い詰められていた。相手が止まらないために、自分から銃を撃ちながら後退していく有様である。そして、ついに仁木が叫ぶ。

「ちょっ、ちょっと!? 止まれよ。近付いてくんなよ! もおおおお、いい加減にしろよ! 畜生、『ひかる』、手伝え!」

 その声は、何故か俺達が作戦会議をしていたほうに向かって投げかけられる。そして、俺がその方向をみた時、黒光りするものが動くのが一瞬見えた。

 まじかよ。

 心の中で毒づく。スナイパーはよりによって俺達のすぐ傍に居たらしい。そりゃ攻撃したくてもできないわな。二組敵がいたら自分がやられるしね。

 俺はとりあえず、神楽に向かって走った。理由は簡単、あいつはスイッチが入ると周りのものが見えなくなる。つまり、俺がスナイパーから守らないと奴を守る奴がいない。

 俺が動き出したのとほぼ同時にスナイパーは銃弾を発射した。一直線に飛ぶ弾丸。どうやら、神楽とスナイパーとの斜線上には入れない。俺は意思を固める。

 やろうとしたことは、言葉にすれば簡単明快。飛んでくる銃弾を神楽の真横で落とすのである。困難な点は一つ、高速で飛んでくる銃弾を線ではなく、点で処理するということである。

 飛んでくる弾の横っ腹に剣撃を加えるなどということはしたことが無かったが、やるしかなかった。

 俺は走りながら鞘に収まった刀を握る。そして、高速で引き抜き、下から上へと刀を走らせる。

 ガキンという音とともに自分の手に確かな感触を感じる。刀の刃の上を弾が滑ろうとしていくのを上へと思い切り弾き飛ばす。空中に刀を振りぬき、神楽のほうを向くと神楽が、仁木との距離を完全に詰め一撃を加えて彼を眠らせたところだった。どうやら銃弾は無事弾けたらしい。そのうえ、神楽も仁木を倒してしまった。



 どうやら、当初の予定が外れて、ガンマンそのものを撃破することに成功した。

 そして、俺は抜いた刀を見つめた。今仁木を倒した神楽は俺に背を見せている。当然ながら、残り二組となった俺達は敵同士、最強に近い神楽を倒すなら絶好のチャンスである。

 やるべきかやらざるべきかそれが問題だ。

 ここまで散々卑怯な手を使った俺ではあったが、さすがに同盟を組んでいた奴を後ろから攻撃するのは気が引けた。けれど、葵ちゃんと神楽が戦ってどっちが強い? 葵ちゃんが強いのは知っているが、神楽も序列七位という器に収まらないことはわかっている。そのうえ、何故か、神楽は俺と葵ちゃんが組んでることを怒っている。スイッチが入る可能性は十分ある。

 恥を忍ばず神楽を後ろからヤル? はたまた、葵ちゃんを信じて決戦を葵ちゃんに任せる?

 会長戦での最大の分岐点であった。

 どうするの俺!?

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