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潔癖症の俺は、どうしても彼女に触れたい  作者: 四条 葵 


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第6話 幼馴染との約束


 潔癖症の涼にとって体育の授業は正直しんどかった。


 特に試合形式だと不意に他の生徒と触れてしまう可能性があるし、そもそも備品などを触るもの躊躇われる。などと言っていても授業にならないので、嫌だな、と思いながらも普通の生徒と同じように参加する。しかし体育の授業が終わったら一目散に手洗い場で手を洗い、持ち歩き用の除菌ジェルで手指を除菌した。男子には特別更衣室のようなものが存在しないので、基本的には教室で着替えることになる。


 汚れた体操着とジャージから着替える際も、除菌したりボディシートで汗を拭いたりと、やることは多かった。しかし涼にとってはそれが日常のことであり、やらなければ落ち着かないことであるため、文句の言いようもなかった。


(のど乾いたし、自販機で飲み物でも買うか……)


 涼は教室から出ると、一階の渡り廊下の出入り口付近にある自動販売機へと向かう。

 そこには二台の自動販売機が並んでおり、左側にペットボトルや缶の飲み物、右側に紙パックの飲み物が並んでいる。ずらっと並んだ色とりどりのパッケージを見て、涼は右下にひっそり並んでいた牛乳の紙パックのボタンを押した。取り出してから、自身の手指をまた除菌ジェルで除菌した。


 さて飲むか、と牛乳パックにストローを差したところで、ふわっと桃のような甘い香りが鼻腔をくすぐった。


「涼! お疲れ!」

「澪か」


 やってきたのはちょうど着替えを済ませたらしい澪だった。自動販売機の隣はちょうど女子更衣室でもある。ぞろぞろと女子達が教室に戻って行くのが目に入った。


 澪は涼ににこっと明るい笑顔を向けると、涼の隣に並んで自動販売機を見つめはじめる。


「私もなにか買おうかな~! 涼は牛乳?」

「ん」


 気分にもよるが、基本的にはレモンティーと牛乳の二択である。その時々によって新商品を入れてくれてはいるものの、結局同じものを選んでしまう。

 乾いたのどに牛乳の冷たい甘みが広がった。


「うーん、どれにしようかなぁ……」


 顎に手を当てながら悩む澪の髪が、渡り廊下から入ってくる風にふわりと揺れる。すると先程も感じた桃のような甘い香りがまた漂ってきたような気がした。

 涼は今朝の澪と皐月のやり取りを思い出す。


(シャンプーの香りか? 甘くていい香りがする……)


 思わずくんくんと嗅ぎそうになって、涼はすっと澪から一歩離れた。


(危なっ……皐月みたいに気持ち悪がられるところだった)


 そうして慌てて澪の動向に意識を戻すと、「これにしよ!」とピーチティーの紙パックを購入したところだった。


 「さ! 教室戻ろ!」と笑顔で振り返った澪と一緒に、涼は階段を上がる。


「今日女子はバレーボールだったんだけどさあ! これがもう超白熱しちゃって、めっちゃ疲れたよ~!」

「お疲れさん」

「ありがと! うーん! やっぱり体育のあとのピーチティーは染みるね! 最高!」

「染みるって……、ちょっとおやじくさくないか?」

「え~だって美味しいんだもん!」

「それはよかった」


 そんな他愛もない会話をしながら2Dの教室を目指して階段を上がっていると、澪が「あ!そうだ!」と涼を振り返った。そして何故か少しもじもじとしたように上目遣いで涼の顔色を窺う。


「あのぉ、涼?」

「なんだ?」

「今日の夜って、時間あったりする……かな……?」


 澪のような美少女にそんな風に問い掛けられたら、きっとその辺の男子はドキッとしてしまうだろう。夜になにがあるのかと。しかし長い付き合いである涼には、澪の言いたいことがすぐにわかった。二つ返事で承諾する。


「ああ、空いてるよ」


 涼の返答に、澪はぱっと表情を明るくした。


「ありがとう! じゃあまた夜に連絡するね!」

「わかった」


 ちょうど教室に到着した涼と澪は、それぞれの席へと戻る。


 間もなくして担任が教室に入ってきて、帰りのSHRが行われた。

 担任の話を適当に聞きながら、涼は眩しい西日に目を向ける。


(今日も学校が終わる。今日はノート集めに指名されて、ちょっと面倒な一日だった)


 そう思い返して、椿姫と連絡先を交換したことも思い出す。


 そしてふと何気なく皐月の席の方を見ると、たしかに隣には椿姫が座っていて、ぱちりと目が合った。

 涼と目が合うやいなや、椿姫は慌てたように視線を動かしてから、礼儀正しくペコリと小さく頭を下げた。


 そんな椿姫に、涼はぎこちない笑顔を返したのだった。





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