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大賢者は何もしない ~面倒事は弟子と助手に任せる~  作者: エビテン


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捨て犬3

わたしの顔を雨粒が流れ落ちる。

雨の冷たさを感じなってどれくらい経つだろう……。

体も動かない、頭もぼーっとしてる。

やっと死ねる。

そう思っていたのに、獣人であるわたしの体は死んでくれない。

獣人の強い肉体が憎らしい。

冬の雨ならもう死ねたのに。

あの時、わたしは馬車に荷物として積まれていた。

詰められた箱のフタがたまに開くと、硬いパンの欠片が投げ込まれる。

それも最後に食べたのはいつだろう?

何処に連れていかれるのかは、考えないようにしていた。

どうせまた、つらい場所に決まっている。

けど……馬車がどこかに付く事は無かった。

沢山悲鳴が聞こえて、沢山魔獣の臭いがした。

動物とはちょっと違う嫌な臭い。

魔獣は独特の”におい”がする。

最後の悲鳴が聞こえてから、どれだけ時間が経ったんだろう?

雨音が耳に響く、もう悲鳴も、魔獣の声も聞こえない。

アイツの気配も消えた。

奇妙にイラ立つ、大きな気配。

アイツがいなかったら、わたしも気配を消さずに死を選んで、魔獣に食われていただろう。

気配を消さずにはいられなかった、それほどアイツを不快に感じた。

魔獣の臭いも沢山していたのに、アイツと一緒にどこかに行ってしまったみたい。

雨のせいで強烈だった血の臭いも和らいできた。

それでも気持ち悪い、獣人の鼻の良さがつらい。

馬車のキャンバスに当たる雨音がうるさく響く。

その時、聞いたことない音がした。

キーンっという甲高い音。

ぼんやりとだけど何か降りてくるのが見えた。

「ひどいな、全員食い千切られてる」

空を飛んできた? すごい、きっと精霊だ。

獣人は精霊を感じる事が出来ない筈なのに、その姿が目に映る。

黒い服を着てフードを被っている。

あれは死者の国に連れて行ってくれる精霊なんだろう。

きっと死ぬ前だから見えるんだ。

死の精霊らしい黒い恰好、着ている服からゴムの臭いがする。

雨具だ、精霊も雨具を着るんだな。

体の感覚は無くなってるのに、鼻と耳はちゃんと働いているみたい。

黒い影が近づいてくる。

「生きてるのか……君、大丈夫か!」

慌てた様子で声を掛けられると、精霊はわたしを抱え上げた。

とたんに体がポカポカしてきた、精霊って暖かいんだ、気持ちよく死ねるみたい。

また、甲高い音がしてふわっと浮いた感じがした。

雨粒が顔に当たる、だけど体は温かい。

優しい雨が降る。

ようやくヒロイン登場です。

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