湯切り戦線異常アリ!
◆ 夜。ユウ宅、二階。
ちゃぶ台にカップ焼きそばがずらり。
バカたちの晩餐が始まる。
ユウ「静かにしろよ、姉貴いるから」
カズ「え、あの女帝在宅!?」
ダイキ「まじか、前科者の気分なんだけど」
タクミ「なんで家にいるだけで圧を感じるんだろうな……」
ユウ「存在が監視カメラなんだよ」
⸻
◆ 湯切り、発想の地獄。
ユウ「お湯切るか」
カズ「台所まで行くのめんどくね?」
ダイキ「窓あるし、ベランダからでよくね?」
タクミ「やめとけって、フラグ立ってる」
ユウ「いや、地球の重力を信じる!」
(ジョボボボボ……)
その頃、下の階では——
風呂上がりの姉が洗面所でタオル巻いていた。
そして、声が響く。
「おいッ!!ションベンしたやつ誰ぇぇぇぇぇぇ!?」
全員「!?!?!?!?」
ユウ「ちがっ、湯っ、湯!!」
ダイキ「犯人ムーブが早すぎる!!」
タクミ「この家、秒で尋問始まるのかよ!!」
カズ「もうダメだ、人生リセットしたい!!」
⸻
◆ すり……すり……摺り足、始動。
ユウ「きた……!!!」
ダイキ「やべぇ、音が静かすぎて逆に怖ぇ!!」
カズ「階段上る音が……バイオハザード……」
タクミ「お前んちの生活音、ホラー演出されてるのか!?」
襖がゆっくり開く。
女帝、バスタオルの上にカーディガン羽織り、くわえタバコ。
湯気と煙が混ざる。
視界がスローになる。
女帝「……湯切りって、そういう意味だったの?」
ユウ「違うっ!違うからぁ!!」
女帝「液体の放出は事実よね?」
全員「違う違う違う違う!!!!」
⸻
◆ 審判。
女帝、ちゃぶ台に座る。
カップ焼きそばをひとくち。
「……伸びてるわね。あんたらみたいに。」
ユウ「褒めてないよな?」
女帝「褒めたことないでしょ?」
タバコを指先で整え、
紫煙を吐きながら言う。
「“放出する”にも方向があるの。
熱は上に。バカは……横に広がるのよ。」
ダイキ「物理で説教!?」
タクミ「煙が名言吐いてる!!」
カズ「俺もう宗教入る!!」
⸻
◆ 夜明け。
女帝は灰皿に火を落とし、すり……と立つ。
「Wi-Fi、明日から制限。」
ユウ「それは死より重い!!!」
カズ「青春、通信途絶!!」
ダイキ「でも名言すぎて逆らえねぇ……」
襖の向こうで、最後の煙がふわり。
女帝「青春ってのは、湯気と同じ。
熱いときしか見えないの。」
——そして、摺り足が消える。
冷めた焼きそば、笑い声、そして余韻。
それが、今夜の湯切り。




