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青春ギャラクティカ  作者: 灰色ぎつね
93/189

それなりの悲劇 ― 語彙力って青春に必要?

放課後の旧音楽室。

ストーブの横にカップ麺、机の上に哲学とバカ。


レイナ:「男子ってさ、女子のどこに惹かれんの?」

ダイキ:「俺は二の腕。あと唐揚げ食ってるときの手。」

カズ:「声。あと笑ったときのえくぼ。」

タクミ:「髪。風に揺れたら即恋。」

アイカ:「また出た“髪フェチ協会”会長。」

ユウ:「……俺は、人の後ろ姿。腰のライン。」

全員:「出た、フェチの化身。」

ミナミ:「ふっ……バカだけど筋が通ってる。」

ユウ(内心)「うおお……認められた!恋が始まる音した!!」



レイナ:「じゃあ、あたしたち三人ってどう?」

ユウ:「え?」

アイカ:「“それぞれに”どう素敵か、語ってみ?」

ミナミ:「逃げんなよ。」

ユウ:「(よし、落ち着け。ここは誠実に……“それぞれに魅力がある”って言うんだ)」


深呼吸。


ユウ:「……みんな、それなりに魅力があって――」


空気、静止。


カズ:「……あれ、今“それなり”って言った?」

ダイキ:「おい、誰かAED持ってこい」

タクミ:「恋の現場に言葉の事故発生!」


レイナ:「それなりってwwwww」

アイカ:「つまり、平均点w」

ミナミ:「……“それなり”ね。」(氷の声)

ユウ:「違う違う違う!“それぞれ”って言いたかったの!!舌が裏切ったの!!」

カズ:「舌が青春裏切るタイプの男子w」

ダイキ:「脳内では愛、口から事故。」

ユウ:「違うってえええ!!!」



翌日。黒板に落書き。


《それなりフェチ・ユウ爆誕》

《平均値の恋愛観で人生オワタ》


ユウ:「俺の名誉が冬眠してる!!」

カズ:「お前、恋より滑舌トレしろ。」

タクミ:「語彙力の筋トレな。」

ダイキ:「“それなり”に頑張れw」

ユウ:「お前ら全員それなりの地獄に落ちろ!!!」



放課後。廊下でミナミと遭遇。

ヒールの音が近づく。


ミナミ:「……“それぞれ”って言いたかったんでしょ?」

ユウ:「っ、はい……本気で褒めたつもりで。」

ミナミ:「……ふふ。知ってた。」

ユウ:「え?」

ミナミ:「あんた、言葉は不器用だけど、熱だけは本物ね。」

ユウ:「……ありがとうございます(それぞれに)」

ミナミ:「今度こそ言えたじゃん。」


ユウ(内心):「それなりに……じゃなくて、ちゃんと響いた。」


——青春は、言葉の間違いで温度を上げる。


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