足2本とメンソール
放課後。
オレンジの夕陽を背負って、杏仁豆腐の4人がぞろぞろと歩いていた。
ユウ「なぁ…マジで坂多すぎんだよ、うちの方」
ダイキ「ハァッ…ハァッ…これ修行かよ!」
カズ「お前んち、山寺か?」
タクミ「……(でもユウの姉ちゃんに会えるかも)」
そんな冗談まじりの帰り道。
――ブロロロロロロロロ!!
突然、背後から地響きのようなエンジン音。
振り返ると、黒塗りの高級車が
メンソールの香りを残して彼らを追い抜いていく。
ダイキ「うおっ! 今のヤベぇ車!!」
ユウ「あっ……姉貴だ」
カズ「マジかよ、あれお前んちの?!」
タクミ「え、もしかして迎えにきてくれたんじゃ……?」
一同、テンション爆上がり。
ユウも小走りで家へ向かう。
⸻
数分後。
ユウの家の前。
黒塗りの車はすでに駐車されており、
ドアにもたれかかるように――
くわえタバコで煙をくゆらす、あの女がいた。
黒髪。
ヒール。
そして眼差しの冷静すぎる余裕。
姉貴「おっそ。何やってんの?」
ユウ「ちょ、なんで乗せてくれなかったんだよ!」
姉貴は、ふぅ〜っと煙を吐いて。
軽く笑いながら言い放つ。
姉貴「……足、2本ついてんだろ?」
沈黙。
風にメンソールの匂いが舞う。
タクミ「(やっべ…惚れる)」
カズ「(セリフが硬派すぎて心臓止まる)」
ダイキ「(姐貴……一生ついて行きます!!)」
ユウ「……うちの家系、セリフが刃物なんだよ……」
⸻
黒塗りの車が走り去ったあと、
坂の上には煙のラインが一筋。
カズ「なぁユウ」
ユウ「ん?」
カズ「お前んち、たぶん“青春”じゃなくて“伝説”住んでる」
ユウ「……俺の人生、毎日がスピンオフなんだよ」




