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ガムではないソレ
授業中。
静まり返った教室にチョークの音だけが響く。
俺は机の下で、こっそり口をモグモグ。
「……おい、そこのユウ」
担任の声が飛んできた。
クラス中の視線が一斉にこっちに集まる。
「授業中にガム噛むな!」
一瞬、空気がピリッとする。
けど俺は、ゆっくりと口を動かし、無言で取り出す。
ポンッ。机に置かれたのは──
銀色の小袋。でっかく書かれた文字。
「おしゃぶり昆布」。
「…………」
教室全員、絶句。
俺はドヤ顔で一言。
「先生、昆布です」。
爆笑が起きる中、先生は額に手を当てて深いため息。
「……お前は本当に、バカなんだか天才なんだか」
その日からしばらく俺のあだ名は「昆布」になった。