お供えチョコ事件
──恋よりも、供えよ。
昼休み。購買前、今日もギャル神社(=三柱のいる空間)は混沌。
カズ「なぁ……鳥居の前、なんか光ってね?」
ダイキ「パンの袋じゃね?」
タクミ「いやチョコだな。しかも金リボン。」
ユウ「……奉納かよ。」
タグには、こう書かれていた。
『恋よりも熱を。ギャル神社へ奉納。』
ダイキ「供えられてるぅぅぅ!?」
カズ「いやこれ完全に儀式だろ。」
タクミ「ってかさ、ユウ、お前じゃね?」
ユウ「なんでだよ!」
ダイキ「“恋よりも熱”とかお前の口癖だし!」
ユウ「俺は言うけど供えない!」
カズ「供えないとか弁明が宗教くせぇんだよ!!」
その瞬間、
香水の風が吹き抜ける。金髪の光。リップの神気。
──三柱、降臨。
レイナ「なにコレ〜?ウケる〜!供えチョコとか神すぎ♥」
アイカ「神じゃないっつーの。これ誰の仕業?」
ユウ「俺じゃないっす!!」
レイナ「怪しい〜!顔が“俺です”って言ってんじゃん!」
ユウ「俺は常に真実しか言わねぇ!!」
アイカ「その真実が信用できねぇんだよ。」
ミナミ、静かにチョコを拾う。
「……“恋よりも熱”、ね。
この神社の空気にぴったりじゃん。」
一瞬、沈黙。
青春の風。チョコの甘い香り。
ユウ「……俺、供えるなら、ビーナスのエクボに供えるね!」
(ドヤァ)
全員「うるせぇ!!!!!!」
ダイキ「自分を神格化すんな!!」
レイナ「ビーナスのエクボって何!?キモいけど語感好き!!」
アイカ「たぶんミナミ先輩のこと言ってんじゃね?」
レイナ「あ〜〜〜ユウ、恋の供物ぅ〜♥」
ユウ「違ぇし!俺はフェチの供物を語ってんの!!」
カズ「説明すんな、余計キモいわ。」
そこへ、
カツン、と厚底の音。マンバ族、登場。
マユ「あ、それ、ウチらっす。」
リカ「“恋よりも熱”って言葉、マジアガったんで〜」
エミ「神社っつーか、ウチらの聖地でしょここ。」
レイナ「マンバも信仰しにきた!?世界平和じゃん!!」
アイカ「ギャルの宗教戦争、まさかの終戦。」
ユウ「おい待て、俺が供物扱いされてんぞ!!」
ダイキ「神への供え物(男子)爆誕!!」
タクミ「これが本当の“チョコの奇跡”……」
ミナミ、ふっと笑う。
「……ねぇユウ。
供えるより、ちゃんと燃やしなさい。
恋も熱も、半端は一番つまんないよ。」
ユウ「……はい(照)」
カズ「お、供物、悟り開いたな。」
ダイキ「チョコより甘い顔すんなや!」
春の風。鳥居の上で、包み紙が舞う。
その日、ギャル神社に供えられたのは──
チョコでも恋でもなく、バカみたいに熱い青春の祈りだった。




