青春タワー・ギア3 ―ニケツの進化論―
放課後の駐輪場。
春風、制服、チェーンのきしむ音。
ユウたちはいつものように、どうでもいい話をしていた。
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ダイキ:「なあ、ユウ。お前、他校のニケツ見たことある?」
ユウ:「あるけど?」
タクミ:「あれ、後ろのやつ座ってんだよな。サドルに」
ダイキ:「そうそう! でも、うちのは立ち乗りが主流じゃん?」
カズ:「立ち乗りっていうか、“立って威厳見せる”文化ね」
ユウ:「……あー。あれ、ちょっと気づいちゃったかも」
タクミ:「は? なにを?」
ユウ(目がギラつく):「“混ぜたら最強”ってこと」
ダイキ:「出た、ユウの悪い顔!」
ユウ:「1人立ち漕ぎ、2人サドル、3人目は――展望台」
タクミ:「待て、展望台て何!?」
カズ:「三人乗り!? 人間やめる気!?」
ユウ:「違う、進化だ。ニケツ文化のアップデート。
これはもう“ニケツ2.0”じゃなく、“トリケツ・ギア3”!」
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駐輪場がざわめく。
ユウが自転車を立て、構える。
構成:
•ユウ(操縦)
•タクミ(サドル)
•ダイキ(展望台)
•カズ(ツッコミ兼実況)
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カズ:「俺は止めたからな?動画撮るけど」
ユウ:「いくぞぉ……青春タワー・ギア3、発進!!!」
ダイキ:「うおおぉぉ! 高度上昇中!」
タクミ:「だから上がるなぁぁ!」
カズ(実況中):「安定感ゼロ、ロマン200%……青春のバランス感覚が死んでる!」
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ガッシャァァァアァアン!!!!
宙を舞う靴、吹き飛ぶワックス、軌道を描くパンツの裾。
ユウ:「……俺、いま風になった……」
ダイキ:「俺、重力感じた……」
タクミ:「俺だけ現実見てた……」
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カズ(スマホ越し):「バカすぎる……でも、これが俺らだな」
そこへ――
ヒールの音。香水の匂い。
ギャル神社、三柱降臨。
レイナ:「ちょ、あんたら何の祭り開いてんの?」
アイカ:「青春の命、消耗早くない?」
ミナミ:「……バカやってる時の顔、いちばんいいじゃん」
ユウ:「ミナミ……先輩……」
ミナミ:「あんたたちさ、そういう無駄、ちゃんと大事にしなよ」
春の空。
笑いと土埃の中で、青春は静かにギアを上げた。




