case.レイナ 「熱の残光」
ステージの熱が、まだ肌に残ってた。
体育館裏。春の匂いに、香水と汗が混じってる。
照明の余韻。拍手の残響。
あたしたちは、まだ“現象”の中にいた。
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レイナ「はぁ〜……終わったぁ!」
アイカ「終わったね。観測値、ギリ限界突破。」
ミナミ「……青春の実験、成功ってとこね。」
三人でベンチに座る。
桜の花びらがヒールに引っかかって、風で揺れる。
さっきまで戦場だったのに、今はただの放課後。
でも胸の奥はまだ、音を立ててた。
観客の歓声。
マンバたちの視線。
ユウの、あの呆けた顔。
どれも全部、火種だった。
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思い出す。
ミナミが言った言葉。
「光を受ける側じゃなく、照らす側だってこと──忘れんな。」
あれ、ずるいよね。
あんなの聞かされたら、誰だって燃えるに決まってる。
アイカ「……観測不能だったわ、あの瞬間。」
ミナミ「そう?」
レイナ「いや、“神話級”でしょ。語り継がれるやつ!」
ミナミは笑わなかった。
でも、頬のラインが少しだけ緩んでた。
それで十分。
あたしたち三人、同じ熱の中にいた。
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体育館の外では、杏仁豆腐のバカたちが打ち上げしてるらしい。
笑い声が遠くから響く。
ユウの声も混じってる。
あの人、どこまでも中心にいるんだよな。
“熱の媒介者”って感じ。
レイナ「……ねぇミナミ、あんたさ。」
ミナミ「なに。」
レイナ「やっぱ、ユウのこと、好きでしょ。」
ミナミ「……観測の範囲内。」
アイカ「つまり、肯定ね。」
ミナミ「バカ。違う。」
でも、“違う”って言葉が一瞬遅れた。
春風がその間を埋めていった。
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あたし、思う。
恋とか美学とか、そういうラベルって、
全部この季節のせいで曖昧になる。
でもいいじゃん。
曖昧で。
混ざって、焦げて、笑って。
それが“青春ギャラクティカ”の正しい温度。
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帰り道。
三人で並んで歩く。
夕日が校舎の窓を焼いて、世界がピンクゴールドに溶けてた。
ミナミがふと立ち止まって、
風の中で髪をかき上げた。
その仕草ひとつで、
また空気がざわめく。
アイカ「……観測続行だね。」
レイナ「だね。たぶん、まだ燃えてる。」
あたしは笑って、スマホを掲げた。
画面の中に映る三人。
ギャルの神話。春の熱。
ぜんぶ、ちゃんと残ってた。
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【end:case.レイナ「熱の残光」】




