春のバン祭り『ギャル神話とフェチの夜明け』
春。
校内がざわめく昼下がり。
体育館裏では、バン祭りのメインイベント──ファッションショーの開幕を待つ観客たちの熱気でムンムン。
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◆ 杏仁豆腐控室
ユウ「なあ、フェチってさ、もう哲学じゃね?」
カズ「始まった。祭り前の哲学講座。」
ユウ「腰は言語、アイラインは信仰、そしてへそピは……魂。」
ダイキ「お前の頭ん中どうなってんの!?」
タクミ「いや、ユウの場合、へそピ見て世界救うタイプだから。」
ユウ「ミナミ先輩の“見せないチラ”が人生の教材なんだよ。」
カズ「どんな授業だよ!」
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◆ マンバ族 登場
ステージ袖からド派手な音楽と共に現れる、黒光りの女神たち。
ラメと香水の匂いが爆発する。
マユ「焦がしてやるわ、令和の太陽で!」
リカ「アイラインは刃物、カーストは塗り替えるもの!」
エミ「ギャルってのは、進化し続ける業だって教えとくわ!」
観客の視線が釘付けになる。
そして──マンバたちの視線が、ひとりの少年にロックオン。
マユ「ユウ、見てた?アタシたちの黒光り。」
リカ「この肌、日サロ三段活用よ?」
エミ「バサバサ好きって言ってた割に、目そらしてんじゃん?」
ユウ「ちょ、ちょ待っ──」
その瞬間、会場が一瞬で静まった。
ヒールの音が、静かにステージを叩く。
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◆ ギャル神社、降臨
ピンクゴールドの照明の中から──三人の影。
ミナミ「……あんたたち、誰に絡んでんの?」
レイナ「ってかユウに手出すとか、命知らず〜!」
アイカ「青春の神域に土足で入るなって、教わんなかった?」
その瞬間、空気が変わる。
光の粒が舞い、観客が息を呑む。
“ギャル”が“現象”になる音がした。
マンバたちが一瞬たじろぐ。
ミナミはゆっくりとステージの中央に立ち、
ユウの方にだけ一瞥──笑ってない、でも確実に不機嫌な目。
ユウ(心の声)「やばい……怒ってる……でもそれが、最高に美しい。」
レイナ「やれやれ、祭りっぽくなってきたじゃん!」
アイカ「勝負、決まりだね。」
ミナミ「“誰がいちばん熱いか”──それで決めよ。」
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◆ ファッションショー、開幕
爆音。
マンバ族が先陣を切る。
黒×銀の反射ファッション、アイラインの翼が飛ぶ。
マユ「夜を照らすのは、太陽じゃない。アタシらだ!」
観客「おおおおお!」
続いて三柱。
静寂と光。
白いシャツにピンクのスカート、ただ歩くだけで風が巻く。
レイナ「派手だけがギャルじゃないって、見せてやる♡」
アイカ「肌見せも計算。角度が愛。」
ミナミ「“魅せる”ってのは、惹かせることじゃん。」
観客が息を呑む。
誰も叫べないほど、ただ美しい。
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◆ 杏仁豆腐の実況ブース
タクミ「やばい、神々の戦い。」
カズ「カメラ追いつかねえ……!」
ダイキ「てかユウ、顔ニヤけてる!」
ユウ「見ろよ……ミナミ先輩の腰のS字ライン……これ、世界遺産級。」
カズ「フェチで国際貢献すんな!」
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◆ クライマックス
ステージ中央で三柱とマンバが並び立つ。
観客が叫ぶ。「どっちもヤバい!」「これ、選べねぇ!」
マユ「認めるよ……三柱、さすがだわ。」
レイナ「ふふ、やっと分かった?」
エミ「でも青春は止まんないのよ?」
アイカ「止まんなくていい。走り続けるのが“ギャル”だから。」
ミナミ「そうじゃん。ギャルってのは、光を受ける側じゃなく、照らす側だってこと──忘れんな。」
歓声が爆発。
その言葉が、春風に溶けた。
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◆幕間
舞台裏。
マンバ三人がユウを囲む。
マユ「で、結局どっち推しよ?」
リカ「この日サロ肌に勝てんでしょ?」
エミ「ほら、どっちが“熱かった”?」
ユウ「……俺、色白のビーナスのエクボが至高なんで。」
(沈黙)
マユ「……は?」
リカ「出た!生粋の白信者!!」
エミ「この期に及んで本音かい!」
カズ「正直すぎて草!」
ダイキ「バサバサの火種、再燃!」
ステージの向こうでミナミが小さく笑う。
それは勝者の笑みでも、女の余裕でもない。
ただ──
“自分の美学をわかってる”と知った瞬間の微笑。
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◆ エピローグ
安藤先生「……まったく、バカばっかり。でも、いいわね。」
ナムサン「バカじゃなきゃ、青春じゃないでしょ。」
“こうして、春のバン祭りは生まれた。
それは恋の祭りじゃない。
熱とフェチと、笑わない女神たちの神話だった。”




