購買前の神話(バサバサ・カタルシス)
春。
桜の花びらが舞い、始業式明けの校内に新しい風が吹き込む。
その風には、まだ誰も知らない――“抗争”の香りが混ざっていた。
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ユウ「なぁカズ、なんか購買の前、騒がしくね?」
カズ「たぶん“春のカースト移行期”だな。毎年恒例。」
ダイキ「恒例にすんな!」
タクミ「つーか、あれ……ギラギラしてね?」
購買前。
黒光りする肌、白アイライン、唇グロスで光る三人組。
――マンバ族。
マユ「やっほー♡ 杏仁豆腐くんたちだよね?」
リカ「“冬フェスのバサバサ事件”の当事者~!」
エミ「“アイラインの風圧が好き”って言ってた、あのユウくんだよね?」
ユウ「……いや、それは、その、例えの話で……!」
カズ「おい出たぞ、ユウの黒歴史。」
タクミ「風圧ってお前、物理的フェチだもんな。」
ダイキ「どんな角度の愛やねん!」
ユウ「だって……バサバサしてるの、神じゃん。」
全員「また言ったーーーーッ!!!」
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マユ「ふふっ♡ ウチら、進化系ギャル“マンバ族”。
これからはウチらの時代だよ?」
リカ「ギャル神社とか、もうレトロ☆」
エミ「三柱って言っても、去年の話でしょ?」
その瞬間――空気が変わった。
購買の奥から、ヒールの音。
風に混じるバニラと煙草の香り。
廊下の照明が、ゆっくりピンクゴールドに染まる。
レイナ先輩「古いって言葉、軽く使うと痛い目見るよ〜?」
アイカ先輩「ほんと。軽口はカロリー高いよ。」
ミナミ先輩「……春だね。芽吹くのはいいけど、根っこが浅いと倒れるよ。」
――三柱、降臨。
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その瞬間、購買前が聖域に変わる。
空気が張りつめ、誰も息ができない。
ただ、美学が衝突する音だけが響いていた。
マユ「……でも、そろそろ世代交代っしょ?」
ミナミ先輩(微笑)「……へぇ、言うじゃん。」
その“笑ってない笑顔”――ユウの鼓動が一瞬止まる。
ユウ(心の声)「やっぱ……ミナミ先輩のアイライン、バサバサしてんな。」
カズ「今それ言うな。」
ダイキ「命知らずか!」
タクミ「でも、分かる……なんか、神々しい。」
ユウ「物理的に、風起きてんだよ。」
全員「お前の頭ん中、春真っ盛りか!!」
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ミナミ先輩「……ねぇ、ユウ。」
ユウ「えっ、はいっ!?」
ミナミ先輩「その“バサバサ事件”ってさ。
あんた、誰のアイラインのこと言ってたの?」
ユウ「え、そ、それは……」
(教室に一瞬で緊張が走る)
マユ「ちょっと! ミナミ先輩、それ脅しっすか?」
ミナミ先輩「質問しただけじゃん。」
レイナ先輩「うわ、ミナミ先輩ちょっとトゲある〜!」
アイカ先輩「わっかる〜。ちょっかい出されてムカついてんでしょ。」
ミナミ先輩(小さく笑って)「……バカ。別に。」
でもその笑顔は、やっぱり笑ってない。
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購買前の空気は完全に戦場。
男子たちは圧倒され、購買への道を失った。
ユウ「パン買いに来ただけなのに……」
ダイキ「今そこ行ったら命取られる!」
カズ「購買、戦場指定区域。」
タクミ「青春って、理不尽。」
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その後、杏仁豆腐は職員室へ避難。
ユウ「先生……購買前が崇拝空間になってます。」
安藤先生「購買前? あぁ、神域ね。」(昆布をかじりながら)
「止めなくていいわよ。どうせなら――祭りにしちゃいなさい。」
ユウ「ま、祭り?」
安藤先生「そう。どうせ青春なんてバカ騒ぎ。
だったら“カースト抗争”を“バン祭り”に変えちゃえばいい。」
(胸元を少し直しながら)
「頑張ったら、ご褒美あげるわよ。」
タクミ「せ、先生、見えてます!」
安藤先生「見せてんの。」
カズ「悟りの境地……」
ダイキ「いや、煩悩の化身だろ!」
安藤先生(おしゃぶり昆布を差し出しながら)
「ほら、これで全員に平等。」
ユウ「……先生、これ何のご褒美ですか?」
安藤先生「ミネラル。」
全員「昆布かよーーーッ!!」
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そして――
購買前の神々と革命者たちの戦いは、
「祭り」として火を吹くことになる。
それが後に語り継がれる、
春のバン祭り――恋よりも熱の幕開け。




