case.レイナ #4『恋と誤解とネクタイ戦線』
放課後の廊下は、なんか変なテンションだった。
廊下のあちこちで「ネクタイ交換」って言葉が飛び交ってる。
恋とか運命とか、そんな甘ったるい空気。
——で、その中心にいたのが、よりによって杏仁豆腐。
「おいユウ〜!お前、ミナミ先輩とネクタイ交換したってマジ!?」
「違うって!拾っただけ!!」
「拾って恋生まれたとか、昭和ロマンス〜!!」
私はアイカと一緒に、笑いながらその騒ぎを見てた。
「ねぇ、青春って感染症だよね」
「……重症ほど治らないタイプ」
「ユウくん、今ステージⅢいってるわ」
ミナミが少し離れた場所で腕を組んでいた。
笑ってるけど、あの微妙な“苦笑”はたぶん気づいてる。
——アイツ、あの顔でちゃんと気づいてる。
その事実だけで、少し胸が熱くなった。
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翌日。昼休み。
教室はネクタイ交換ブームの続きでカオス。
男子が女子の前で「これ……受け取ってくれ」って真顔で渡してて、
女子は「重い」って返してた。
令和、地獄。
私「いや、見てるだけでお腹いっぱいなんだけど」
アイカ「糖度過多。脳がバグる」
私「バカな恋って、なんでこんな面白いのに羨ましいんだろ」
——気づいた。
笑ってるのに、羨ましい。
それがちょっと悔しくて、
わざと大げさに笑って誤魔化した。
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放課後。昇降口。
ユウがまたドタバタしてた。
ミナミの前で、顔真っ赤。
「これ、落としましたっ!」
「ありがと。でもそれ、私のじゃないよ?」
その後ろで、私とアイカ、爆笑。
「きゃーーー!ネクタイ交換!?青春すぎーー!!」
「感染拡大確認」
でも、笑いながらも思ってた。
ミナミが“嬉しそうに見える”のが、
ちょっと意外で、
ちょっと、綺麗だった。
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翌朝、SNSは案の定トレンド入り。
#ネクタイのミナミ
#青春ギャラクティカ
#拾って恋
「いや、もう何これ……宗教?」
アイカ「カルト的人気」
「でも、楽しそうだよね」
ミナミが通りすぎる。
冬の光の中で、髪がきらっと揺れた。
あの人は恋なんかしないと思ってた。
けど——もしかしたら、
あのバカどもに当てられて、
ちょっとだけ温度が上がってるのかも。
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夜、ギャル神社(仮)で三人並んで座る。
風が冷たくて、タピオカがすぐ氷になりそう。
私「恋って、バカになることじゃん?」
アイカ「バカが先か、恋が先かの問題だね」
ミナミ「……どっちも、青春の構成要素。」
私は笑って、空を見上げた。
星が滲んでるのか、タピの氷が目に染みたのか。
たぶん、どっちも。
「まぁいっか。うちら、もう感染者だし。」
三人で笑う声が、冬の夜に混ざって消えた。
その笑いが、ほんの少し暖かかった。
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【end:case.レイナ #4『恋と誤解とネクタイ戦線』】




