表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青春ギャラクティカ  作者: 灰色ぎつね
61/193

case.アイカ #4『沈黙の共鳴』



——誤解の熱は、測れない。

でも、確かに“ある”。


冬の放課後。

スマホ画面の「#ネクタイのミナミ」を、私は無言でスクロールしていた。

廊下のざわめき。笑い声。

ミナミの名前が、トレンドの真ん中にあった。


(まったく……また騒ぎの中心)


そう思いながら、写真の中の彼女を見た。

柔らかく笑っていた。

あのミナミが。

表情筋の動き、0.8秒。

……でも、いつもの“作り笑い”じゃない。


《観測記録 #027:ミナミ、誤解由来の笑顔。成分不明。》



ギャル神社。

レイナがタピオカ片手に、爆笑していた。

「ユウくんのテンパり顔、切り抜き素材にしたいわ〜!」

私はココアを一口飲んで、視線を横にやった。

ミナミは静かに笑っていた。


「……ほんと、バカね。でも……可愛かった。」


その一言に、心臓が一瞬だけ跳ねた。

笑いながら、どこか優しい声。

あの人にそんな“温度”があるなんて。


レイナ「なに? ミナミ、まさか恋?」

ミナミ「違う。誤解に笑っただけ。」


(誤解に……笑った?)

理屈としては理解できる。

でも、心が追いつかない。



夜。

ノートを開いて、今日の記録を書き残す。

いつもなら淡々とデータ化して終わる。

でも、ペンが止まった。


“誤解って、案外、心地いいのかもしれない。”

そう書いて、少しだけ恥ずかしくなった。

私はデリートキーに指を伸ばす。

けど、押せなかった。



ミナミの笑顔。

ユウの混乱。

レイナの爆笑。

全部、熱だった。

バカで、青くて、止まらない熱。


——観測するだけのはずが、

気づけば、私もその熱の中にいた。



《観測記録 #028:理性、わずかに融解。》

《補足:誤解=伝染の始まり。》



窓の外、雪が降っていた。

息が白く曇る。

それを見ながら、私はひとり呟いた。


「……バカばっかり。でも、悪くない。」



【end:case.アイカ #4『沈黙の共鳴』】


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ