羽付きギャラクティカ──恥と墨と熱のカーニバル
◆ 冬の午後、旧体育館
まだ正月気分の残る校舎。
杏仁豆腐の4人は、放課後の体育館にいた。
理由:暇だった。
それ以上でも、それ以下でもない。
ユウ「よし、ルール変更だ」
ダイキ「お前、年明け早々仕切んな!」
ユウ「勝負に負けたら、恥ずかしいことを叫ぶ。それが“青春ギャラクティカ・ルール”だ」
タクミ「そのルール、誰得?」
カズ「お前の羞恥欲だけだろ」
ユウ「違う!青春は、恥とバカの共鳴なんだよ!!」
ダイキ「名言風に言ってもバカはバカ!!」
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◆ 一回戦:ダイキ vs ユウ
ダイキ「いくぞぉぉ! ギャラクティカ・スマッシュ!!」
羽根が弾丸のようにユウの頬を掠める。
パァン!
ユウ「ぐっ……やられた……!」
カズ「ルール、守れよ」
ユウ「くっ……わ、私はビーナスのエクボを崇拝してますぅぅぅッ!!!」
全員「知ってるわ!!」
ダイキ「自己紹介かよ!!」
タクミ「信仰ってレベル超えてるな」
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◆ 二回戦:タクミ vs ダイキ
タクミ「静かに打つだけ、だ」
スッ──パシン!!
羽根がダイキの額に命中。
ダイキ「いっっってぇぇええ!!」
カズ「はい、叫んで〜」
ダイキ「俺は……!! 汗の匂いフェチだああああああああ!!!」
ユウ「全国ネットで言うな!!」
タクミ「男子トイレで悟るタイプ」
カズ「新年早々、不潔が爆発してる」
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◆ 三回戦:カズ vs ユウ
ユウ「いくぜ、腰のスナップなめんな!!」
羽根が軽く逸れる。カズ、冷静に返球。
ユウ、空振り。
カズ「おつかれさま、信者」
ユウ「くっ……! 腰フェチで何が悪い!? 腰こそ生命線!人類のアーチ!!!」
ダイキ「哲学ぶるな!!」
タクミ「腰講義はじまった」
カズ「“腰こそ文明”って書き初めすんな」
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◆ 四回戦:カズ vs タクミ
タクミの軽いスマッシュが決まる。
カズ、負けを認めて深呼吸。
カズ「……俺、本の匂い嗅がないと寝れないんだ」
ダイキ「文学的変態!!」
ユウ「いい香りで変態するタイプ!」
タクミ「お前だけ上品に堕ちるな」
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◆ 最終ラウンド:タクミ vs 全員
タクミ「3人まとめて、来い」
ユウ「イケメンかよ!!」
(打ち合い開始。華麗なフットワーク。静寂の中の美。)
ユウの渾身の一撃、タクミの肩をかすめて落ちる。
カズ「よっしゃあ! タクミターン!!」
ダイキ「イケメンが叫ぶ番だああ!!!」
タクミ、夕陽を背に、静かに羽根を見つめる。
一拍。
そして。
タクミ「……俺、炊き立ての米の湯気が好き。」
沈黙。
ユウ「……フェチっていうか“日本人の心”だな。」
ダイキ「お前だけ教科書!!」
カズ「NHKの朝ドラに出てきそう!!!」
タクミ「美しいだろ?」
全員「うるせぇ!!!」
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◆ 騒ぎの果て
墨は飛び散り、羽根は天井まで舞い、体育館は阿鼻叫喚。
ダイキの額には「腐」、ユウの頬には「腰」、カズの首には「読」、タクミの手には「飯」。
カズ「もはや習字の妖怪だな」
ユウ「今年、俺ら終わってる!!」
ダイキ「始まってんだよ、青春はよぉぉぉ!!」
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◆ その頃、廊下
ミナミ「……何あれ、男子の儀式?」
レイナ「フェチの供養じゃね?」
アイカ「恥を奉納してるだけだよ」
ミナミ、笑いながらつぶやく。
「でもさ、ああやってバカやれるって、青春の才能だよね」
レイナ「推せる」
アイカ「バカは尊い」
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◆ そのさらに奥——
安藤先生(昆布を噛みながら)
「恥ってのは、あとで宝石になるのよ」
ナムサン(どこからともなく現れ)
「そうよぉ♡ 磨けば光るバカほど尊いの♡」
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◆ 夕暮れ
墨まみれの杏仁豆腐、笑いながら体育館を出る。
ユウ「……今年もバカ全開でいこうぜ」
カズ「うん。バカで生きて、恥で燃える」
タクミ「それが、俺たちのギャラクティカ」
ダイキ「俺のフェチも世界遺産登録頼む!!」
全員「やかましい!!!」
──墨の匂いと笑い声が、夕焼けに溶けていった。




