case:三柱 #1 「鍋パ打ち上げ ― ギャル三柱、降臨す ―」
旧音楽室。
ストーブの熱気と、謎の匂いと、男子の笑い声。
その全部が、私たちを呼んでいた。
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◆Ⅰ:アイカ(観測)
鍋の中で何かが煮えている。
白菜、チーズ、マシュマロ。……これはもう生物兵器。
ミナミ「おつかれ。鍋、まだ生きてる?」
レイナ「てか、湿気で前髪死んだんだけど」
ドアを開けた瞬間、男子全員がフリーズした。
空気が“神話”になったのを、私は見た。
「三柱みはしら……降臨した……」
「ありがたや……」
「ナムミナミ〜……ナムミナミ〜……」
バカみたいに床に頭をつけて拝んでる。
……いや、バカなのは知ってたけど、
想像より宗教的だった。
ユウ「ナマステ〜〜」
静寂。
この瞬間、私は悟った。
信仰は、熱と勢いでしか生まれない。
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◆Ⅱ:レイナ(衝動)
笑い止まんない。
拝まれてんの、こんなにツボると思わなかった。
「ナマステってwww お腹痛いw」
「拝みながらボケんのやめてw」
ミナミがクスッと笑った。
「……ほんと、バカ。いいね、そのバカさ。」
あの一言で、部屋の空気が変わった。
寒いのに、ちょっとあったかくなる感じ。
アイカ「この空気、やばい。青春感染中。」
私「いいじゃん、感染くらい。免疫とかいらんでしょ。」
──正直、わかってた。
私たち、もう完全にあいつらに巻き込まれてる。
でもその熱が、気持ちよかった。
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◆Ⅲ:ミナミ(余韻)
鍋の味は、ひどかった。
けど、不思議と笑える味だった。
ユウが小声で「……ミナミ先輩、天使……」って言ったのも聞こえてた。
聞こえないふりをした。
ああいうバカのまっすぐさ、嫌いじゃない。
二次会のカラオケ。
音痴の「粉雪」に全員で笑って、
最後、声が掠れるまで歌って。
雪が舞う帰り道。
白い息が、夜に溶けていく。
ミナミ「青春って、バカな夜の中にあるんだよ」
ユウ「……ナマステ」
ミナミ「それ、まだ引きずってんの?」
ユウ「……癖になりまして」
……ふっ。
たぶん、私も少し、癖になってた。
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その夜、校舎の窓から見える灯りがひとつ、またひとつ消えていく。
でも旧音楽室だけは、まだ光っていた。
バカと熱と笑い声が混ざるその部屋が、
たしかに“青春の中心”だった。
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【end:case:三柱「鍋パ打ち上げ ― ギャル三柱、降臨す ―」】




