バンド名はデザート!?
放課後。例によって教室のすみで机を寄せ、四人はだらだらしていた。
部活にはどこも入らず、暇を持て余す俺たち。
そこで──俺は唐突に言った。
ユウ「バンドやろうぜ!」
一瞬の沈黙。
カズがポカンとした顔で俺を見る。
カズ「お前、楽器できるの?」
ユウ「……カスタネットなら」
タクミ「それを楽器に入れるな」
ダイキ「ちょ、待て!バンドってことはライブとかすんの!?俺、リコーダーしか吹けねえぞ!?」
ユウ「リコーダーでロックするバンドとか逆に斬新じゃん!」
カズ「お前、文化祭を戦場にする気かよ」
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◆バンド名決め会議
結局、ノリで全員賛成。
問題はバンド名だった。
ユウ「もう決めてある。“杏仁豆腐”!」
全員「はぁ!?」
カズ「え、それデザートだよな?」
ユウ「そう。デザート感あって可愛いし、語感がいい!」
ダイキ「ちょっ待て!杏・仁・豆・腐って……一人一文字ずつ当てはめるんだろ!?絶対俺、腐だろ!!」
ユウ「いやいや、俺は“豆”が欲しかっただけだから!」
ダイキ「そのせいで俺が腐るんだよ!」
タクミ「……まぁ、腐担当ってインパクトはあるな」
カズ「てかお前ら真顔で“腐担当”って言うなよ」
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◆役割分担(仮)
どうせなら、名前に合わせてパートを割り振ろうという話になった。
•杏 → ボーカル。顔がいいから仕方ない。
•仁 → ギター。手先が器用だし、笑顔でごまかせる。
•豆 → ドラム。豆=ビート刻むイメージ。
•腐 → ベース。低音で腐った空気を支える。
ダイキ「なぁ!俺だけネーミング悪意あるだろ!」
ユウ「大丈夫だ、俺たちにとってお前は“腐っても鯛”だ!」
カズ「いや、鯛より唐揚げ似合うけどな」
ダイキ「もう黙れぇ!」
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◆そして運命の弱点
そのとき、ふとカズが聞いてきた。
カズ「そういやユウ、お前リズム感どうなん?」
ユウ「……壊滅的」
全員「おい!!!」
タクミ「……豆が腐ってんじゃん」
ダイキ「俺より腐ってんぞ!」
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こうして、男子高校生バンド(共学だけど実質男子高ノリ)「杏仁豆腐」は誕生した。
実力ゼロ、経験ゼロ、リズム感もゼロ。
だけどなぜか「俺らならできる」気がしていた。