表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青春ギャラクティカ  作者: 灰色ぎつね
49/187

case.アイカ #2『沈黙の共鳴』



──白の残響がまだ消えない。

雪のフェスから数日、教室の空気には、まだ“音”の名残が漂っていた。


ミナミは窓際でスマホをいじっていた。

指先が止まる瞬間、画面には杏仁豆腐のライブ動画。

無表情のまま、ほんの少しだけ呼吸が浅くなる。


私は、それを見逃さない。

《観測記録:ミナミ、視線の滞在時間+1.8秒》


レイナ「ねぇアイカ。観測って、恋の別名じゃね?」

アイカ「違う。ただの“温度測定”。」

レイナ「いや、熱っぽいぞ。顔が。」


冗談半分のレイナの言葉に、ミナミは笑いもしない。

ただストローをくるくる回しながら、

「……そう見えるなら、まぁそれでいい。」

とだけ言った。


(……そう見える、ね。)

私は胸の奥に引っかかりを覚える。

あの人、ほんとに“観測される側”になってる。



放課後のギャル神社。

雪解け水の音が、まだどこかで響いている。


ミナミは珍しく、静かに空を見ていた。

雲の切れ間から光が落ちる。

その横顔が、冬に似合っていた。


レイナ「なぁ、あんた、ユウのこと……」

ミナミ「言わなくていい。」

レイナ「言わせてくれよ!」

アイカ「観測者の立場、放棄中。」


ミナミがこちらを見た。

まっすぐ。

でも、どこか柔らかい。


「……青春の修羅場ね。肝に銘じな。」


その言葉の奥に、

誰よりも冷静な人の、ほんの少しだけ熱い部分を感じた。



夜。

帰り道。

レイナと二人で並んで歩く。


レイナ「結局さ、恋とか熱とか、全部まとめて“感染”だよな。」

アイカ「うん。たぶん、私たちも少し、当てられてる。」

レイナ「観測のつもりで、体温測ってるのに?」

アイカ「測ってるうちに、自分の方が上がってる。」


レイナが笑う。

雪が頬に触れる。

私はポケットの中で手を握った。


——たぶん、恋ってそういうもんだ。

観測できないのに、確かにある。

理屈じゃなく、温度で伝わる。


《観測記録:恋よりも、熱。》



雪の道に、足跡が三つ並ぶ。

その真ん中のひとつが、少しだけ深かった。


ミナミが歩いたあとみたいに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ