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青春ギャラクティカ  作者: 灰色ぎつね
46/192

case.ミナミ#8『白と黒(ゲレンデ・温泉編)』



【白】


雪が降っていた。

あまりに白くて、音が吸い込まれる。


ゲレンデの下で、ユウがまた転ぶ。

それでも立ち上がる。

その単純な動きに、なぜか目が離せなかった。


レイナ「……あれ、もう恋の領域だよね」

アイカ「いや、観察中毒。」

ミナミ「観測。感情は伴ってない。」


レイナ「それを“否定”って言うんだよ。」

ミナミ「……データの話。」


そう言って、再びゴーグルを上げる。

吹雪の中で、ユウの息だけが白く跳ねていた。


(寒いのに、動く。……ほんと、バカ。)


レイナがちらりと横を見る。

「今、ちょっと笑った。」

アイカ「温度上昇、確認。」

ミナミ「……雪が眩しいだけ。」


視線は、もう離せなかった。



【黒】


夜。湯けむり。

そして、混乱。


レイナ「キャアアアアアア!!ユウ!?なにしてんの!?」

アイカ「湯気の向こうから男出た。新種の怪談?」

ミナミ「……ユウ、説明して。」


湯けむりの中、ユウはしどろもどろ。

「ち、違うんです!脱衣所に黒い……その……!」


ミナミのまつげが揺れた。

「……黒い、何?」

静かすぎる声に、レイナとアイカの背筋が凍る。


そして——

「キャッ♡ アタシのパンツここにあった〜〜♡」

湯けむりを割って現れるナムサン。


沈黙。

全員、石化。


レイナ「……青春って、地獄より熱いね」

アイカ「理性、全滅。」

ミナミ「……青春の修羅場ね。肝に銘じな。」


その声は、湯気よりも静かに刺さった。

ユウの耳まで赤くなる。

ミナミは湯の縁に寄りかかり、

「……ほんと、バカ。」とだけ呟いた。



【白と黒】


翌朝。

白い雪の上で、黒レースが風に揺れていた。


レイナ「ねぇ、あの子、また転ぶと思う?」

アイカ「うん。でも、また立つと思う。」

ミナミ「……そうね。」


雪の向こう、

ユウが笑っていた。

その姿を見つめる自分に、

気づいてしまう。


(……ほんと、バカ。でも、目が離せない。)


ミナミはマフラーを整えて、

小さく息を吐いた。


白と黒のあいだ。

静かに、

温度だけが、確かに残っていた。


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