case.ミナミ #4「タグに書かれたミナミの呪い」
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◆ 放課後。旧音楽室前。
ミナミたちは、貼られた一枚のタグを見つめていた。
白い布地に、黒の油性ペンでデカデカと書かれた文字。
──「ミナミ」
レイナ「なにこれ? 呪符? ギャルの降霊術?」
アイカ「違う。多分、男子のバカの痕跡。」
ミナミ「……いいわね。名前が呼ばれてるってだけで、ちょっと熱を感じる。」
レイナ「出たよ、ポエム担当〜!」
ミナミ「だってそうでしょ。タグなんて、温度の痕よ。
誰かの手で書かれて、誰かの心が揺れた証拠。」
アイカ「……“揺れ”って、だいたいバカが起こすやつ。」
教室の中から、笑い声が聞こえた。
──男子たちの声。
「パンツ!」「いやそれナムサンのじゃね!?」「ぎゃー!!」
レイナ「……ねぇミナミ、たぶんこれ、あんたの名前じゃない。」
ミナミ「知ってる。だから面白いの。」
彼女はタグに指を滑らせる。
爪が少し、インクを削った。
ミナミ「“ミナミ”って文字ひとつで、世界が勝手に動く。
誤解も笑いも、ぜんぶエネルギーに変わる。」
アイカ「ギャル神社の始まりね。
供物はパンツ、信仰は誤解。」
レイナ「最高にバカで最高に青春〜!」
ミナミは笑った。
「……そういうバカの中に、本物の“熱”があるのよ。」
その瞬間、音楽室のドアが開いて、
笑いながら逃げ出す男子たちの声が廊下に響く。
レイナ「うわ、出た。“パンツ守護者”たち。」
アイカ「ほんとに守ってる顔してるね、あのユウ。」
ミナミ「……いいじゃない。バカなほど、輝く。」
夕陽の光が、タグの文字を透かす。
その黒が金に変わる瞬間、
三柱は同時に思った。
──これ、たぶん始まっちゃったね。
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【end:case.ミナミ #4「タグに書かれたミナミの呪い」】




