case.ミナミ #3「仮装と祈りとキラーチューン」
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昼の校舎が、まるで夜みたいにざわめいていた。
生徒会主催・ハロウィンフェス。
廊下には仮装した生徒が溢れ、音楽室の窓からはギターのリフ。
いつもの学校が、青春と非日常の境界線みたいになっていた。
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◆屋上・昼休み
レイナ:「ねぇ見て見て〜!ナースキャップ似合うっしょ?」
アイカ:「ゾンビナースって、その包帯本当に衛生的なの?」
レイナ:「仮装に衛生もへったくれもないっしょ〜♡」
ミナミ:「ふふ……青春って、みんな何かに“なりたい”季節よね。」
黒のショートトップス。
へそピが太陽の光を受けてキラッと光る。
腰にはチェーンベルト、脚は網タイツ。
――“悪魔系ギャル”仕様のミナミがそこにいた。
レイナ:「出た、悪魔の審美眼!」
アイカ:「その格好で生徒会公認なのすごいわ」
ミナミ:「ルールより熱で動くのが、ギャルの流儀でしょ。」
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◆ステージ裏・同時刻
ダイキ:「おいユウ!緊張してんのか!?」
ユウ:「……いや」
タクミ:「完全にしてんじゃん」
カズ:「顔、死んでるもん」
杏仁豆腐、二度目の学内ライブ。
ユウはドラムスティックを握ったまま、
ステージ前方――観客席の中央を見て、固まっていた。
ユウ(……っ!!)
──ビーナスのえくぼ。
──キラリ光るピアス。
──そして、あのへそ。
ユウ(悪魔……降臨……)
ダイキ:「おい!顔、真っ赤じゃねぇか!?」
カズ:「フェチセンサー、完全に発火してる」
タクミ:「生放送で事故るやつだこれ」
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◆ステージ開幕
歓声。ライト。
ユウの心臓が、ドラムよりうるさい。
ミナミはステージ最前で腕を組み、静かに見ていた。
レイナ:「うわ〜、あのドラムの子、ガン見してんじゃん!」
アイカ:「多分あれ、“理性の最前線”。」
ミナミ:「……熱、上がってる。」
一曲目。
ユウのリズムが、いつもより荒い。
でも、そこには“生きてる鼓動”があった。
ミナミの唇が、微かに笑う。
「いい。恋よりも、熱。」
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◆演出トラブル
二曲目。照明トラブルで一瞬真っ暗に。
次の瞬間、ライトが照らしたのは――三柱の姿。
歓声が止まり、空気が変わる。
まるで、彼女たちを讃える儀式みたいに。
誰かが呟いた。
「ギャル……神だ……」
レイナ:「え、ウチら今、降臨した?」
アイカ:「信仰、発生したわね。」
ミナミ:「ふふ……“ギャル神社”。悪くない名前。」
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◆アンコール
ユウはステージから三人を見た。
その笑み、その空気、すべてが“本能”を刺激する。
ユウ:「(……見られてたのは、俺のほうかもな)」
演奏が終わったとき、風が吹いた。
チェーンが鳴り、ピアスが光る。
ミナミ:「悪魔に惹かれる魂って、案外、正しいのかもね。」
レイナ:「ねぇミナミ、惚れた?」
ミナミ:「惚れてない。……でも、燃えた。」
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【end:case.ミナミ #3「仮装と祈りとキラーチューン」】




