表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青春ギャラクティカ  作者: 灰色ぎつね
40/192

case.ミナミ#2「放課後バサバサ・パンデミック」



──最初のきっかけは、放課後のアイライン戦争だった。

廊下の鏡前で、女子たちが一斉にまつげ勝負してたあの日。

マスカラは武器、アイラインは覚悟。

全員、文化祭明けの余韻を引きずったまま、戦場に立ってた。


レイナ:「今日のバサバサ率、過去最高じゃね?」

アイカ:「あの一年の子……ビューラーの角度、プロだわ」


ミナミはふと、鏡越しに目を細めた。

一本後ろの教室。

窓際に座る男子。

教科書よりもギター雑誌とヘアスプレーのほうが馴染んでるタイプ。


ミナミ:「……あれが、“バサバサ好きのユウ”?」

レイナ:「そう、“まつげで恋するドラム野郎”って噂の」

アイカ:「ギャル好きなのに、ギャルに絡めないって話。観察対象としては、優良株ね」


レイナ:「ギャルフェチ男子、爆誕〜!」

ミナミ:「……いいじゃない。フェチって、正直さの象徴よ」

アイカ:「出た、ミナミの恋愛哲学」

ミナミ:「綺麗ごとよりも、“熱”が出るほうが人間らしいの」


──その瞬間。

ギャル神社は、まだ名前を持たないまま、動き始めていた。



放課後。

一年の教室に、ふらりとミナミが現れた。

机にスティックを置いていたユウの前で、立ち止まる。


ミナミ:「ねぇ、ユウくん。君さ──」

ユウ:「え?」

ミナミ:「“バサバサ”、好きなんだって?」


その声は挑発的で、どこか優しかった。

教室の空気が、一瞬だけ甘くなる。


ユウ:「い、いや別に……」

ミナミ:「ふふ、目が泳いでる。図星?」


アイラインに縁取られた瞳が、軽く笑う。

ミナミ:「ま、いいじゃん。そういうフェチ、嫌いじゃないよ」


彼女は踵を返して去っていく。

残されたユウは、心臓がスネアのように鳴っていた。



その夜、屋上。

沈む夕焼けの中、三柱が並んで座っていた。

ジュース缶のプルタブを開ける音が、やけに響く。


レイナ:「ミナミ、あの一年のこと気に入ったでしょ?」

ミナミ:「……惚れてない。けど、燃えた」

アイカ:「恋とは違うってこと?」

ミナミ:「恋よりも、熱。恋は目的。でも熱は、生きてる証明。」


レイナ:「はい出たー、“恋よりも熱”論。」

ミナミ:「だって青春って、理屈よりドラムの音でできてるでしょ?」

アイカ:「……名言風に聞こえるのずるい」


その笑い声が、校舎にこだまする。

三人はまだ知らない。

この瞬間の小さな熱が、やがて“ギャル神社”という信仰を生むことを。



【end:case.ミナミ #2「バサバサと青春と貴族の午後」】


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ