校舎内チャリレーサーズ
ある日の放課後。
まだバンドなんて影も形もない頃。
俺たち四人は、校門脇の駐輪場でだらだらしていた。
ダイキ「なぁ…チャリってさ、校舎ん中でも走れるんじゃね?」
カズ「いや、走っちゃいけない場所だからな」
ユウ「でも理屈の上では走れるよな」
タクミ「お前ら、その理屈でいままで何回先生に怒られた?」
……数秒の沈黙。
次の瞬間。
ユウ「よし、実験開始だ!」
⸻
◆暴走開始
ガラガラと自転車を押して昇降口を抜ける。
俺たち四人は列を組み、校舎内の廊下に突入した。
ペダルを踏み込むと、廊下に爆音が響く。
「ダダダダダーーッ!」
ダイキ「俺、今、風になってるーー!!」
カズ「いや風じゃなくて送風機だろその息切れ!」
タクミ「お前ら絶対捕まるぞ!」
ユウ「先生に捕まる前にゴールすれば勝ちだ!」
⸻
◆カオスの極み
理科室前を通過。
理科準備室から先生が顔を出す。
「お前らーーッ!止まれぇぇぇ!」
ダイキ「先生、ゴールはどこっすかーー!?」
カズ「いや聞くな!その質問で減点だわ!」
家庭科室前では、調理実習帰りの女子がきゃーっと逃げる。
タクミ「……俺、今たぶん“イケメンが最悪のタイミングで通る”って認識されてる」
ユウ「大丈夫だ、バンドやる予定だからチャラにできる!」
タクミ「その予定はいつ立った!?」
⸻
◆逃走劇の果てに
階段の手前で、俺たちは慌ててブレーキ。
タイヤが床をきゅぅっと鳴かせ、四人とも息を切らしながら顔を見合わせる。
カズ「……なぁ、俺ら退学とかにならないよな?」
ユウ「いや、これは“青春ポイント”だから。むしろ加点」
ダイキ「加点の方向性がおかしい!」
タクミ「……まぁ、忘れられないバカやったって意味では正しいかもな」
こうして俺たちの黒歴史──いや、輝かしい伝説がまた一つ刻まれた。