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青春ギャラクティカ  作者: 灰色ぎつね
38/193

case.ミナミ #0「バサバサと青春と貴族の午後」

 青春は、いつだって爆発する。

 笑いの中に、恋の中に、そして音の中に。


 でもその“熱”を見つめていた者たちがいる。

 誰よりも早く、それを感じ取り、名もなき衝動を崇拝した少女たち。


 彼女たちは、まだ「ギャル神社」と呼ばれる前だった。

 ただ、観測していた。

 青春という現象を、恋よりも熱い“光”として。


 ──これは、青春を観測するギャルたちの物語。

 燃える少年たちを、笑いながら見守る、女神たちの記録。


──学祭開幕。

匂いもノリも、まじで青春。


校門をくぐった瞬間、世界がカオスになってた。

焼きそばの煙、チョコバナナの甘ったるさ、吹奏楽の微ズレ。

まじで、文化祭の匂いって、青春のフェロモンなんだわ。



◆屋上ベンチ。

ミナミ、レイナ、アイカ──通称“三柱”が人間観察モード。


レイナ「てかあれ見て! あのドラムの子、ヤバくね!?」

アイカ「“バサバサフェチの子”でしょ?」

レイナ「そうそう、“腰ラインの神”信者!」

ミナミはフランクフルトをかじりながら、髪をくるくる指に巻く。

ミナミ「でもね、フェチって正直さの象徴よ。

 綺麗ごと抜きで、人間の“熱”が出る瞬間でしょ?」

レイナ「出た〜!ミナミの恋愛哲学講座〜!」

アイカ「ていうか、今日の昼ステージ出るんでしょ?見に行く?」

ミナミ「行く。……だって、“熱”が見たいんだもん。」



◆ステージ裏──杏仁豆腐、開演前のドタバタ。


ダイキ「タクミ腹痛ぇぇぇって! 焼きそば食いすぎ!!」

ユウ「お前が“腹ごなしに演奏”とか言うからだろ!」

タクミ「大丈夫、ドラム叩けば消化するって!」

カズ「いや、出すほうのリズム刻むなよ!」


……すでに青春のIQが下がっていた。



昼の校舎前特設ステージ。

観客の前列には三柱。

レイナはかき氷片手にノリノリ。

アイカは冷静にモニターを見る。

ミナミは──ただ一点、ステージ奥のドラムに目を向けていた。

そこにいたのは、切れ長の目の少年。

笑ってるけど、目の奥が燃えてた。



◆タクミ、沈黙。


一曲目、爆盛り上がり。

観客大歓声。

でも──二曲目の途中で、空気が止まる。


タクミの視線が、観客席のある女子で固まった。

その顔は、元カノ。

伝説の“文化祭フラれ事件”の本人。


レイナ「え、まさかあの子……」

アイカ「うわ。伝説、再放送。」

ミナミ「……止まった。」


タクミのマイクが震える。

「……歌えない。」


静寂。

観客も息を呑む。



◆咄嗟のカズ。

ギターを鳴らし、叫ぶ。


カズ「歌うぞ、杏仁豆腐ァァァ!」

観客「うおおお!!」

レイナ「ツインボーカル!? 予定外にもほどある!」

アイカ「でも、悪くない。混沌の美学。」


ユウが動いた。

空いたギターパートに手を伸ばす。

「ここ、俺がやる!」


ミナミ「……あの子、弾けたんだ。」


ドラムスティックを片手で放り、ギターを構える。

手汗で滑る指、ズレるリズム。

それでも、叫ぶようにかき鳴らす。


ユウ「タクミ!叩け!!」


タクミの腕が再び動く。

魂を叩きつけるビート。

涙みたいなリズム。

観客、総立ち。



◆屋上の三柱、覚醒。


レイナ「なにこれ、やばっ!」

アイカ「熱が伝染してる。あれ、もう恋とかじゃない。」

ミナミ「……燃えてる。」


カズの声、ユウのギター、タクミのドラム。

偶然が奇跡に変わる瞬間。

風すら音楽になってた。



◆曲が終わる。

割れんばかりの拍手。

汗と笑顔と、燃え尽きたような空気。


ミナミは腕を組んで、ふっと笑う。

レイナ「ねぇミナミ、惚れた?」

ミナミ「惚れてない。……でも、燃えた。」

アイカ「ほら、神降臨。ギャル神社、開幕だね。」


──この日、“ギャル神社”が誕生した。

恋よりも熱。

それが、三柱の信仰。



【end:case.ミナミ「バサバサと青春と貴族の午後」】

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