指輪と雪解け ― 飴とピックと、静光の祝日 ―
──放課後、校舎裏。
雪がまだ少し残っていて、風が白く跳ねる。
ユウは小さな紙袋を持って立っていた。
中には銀のピックペンダント。
裏には、小さく刻まれた文字。
“音、繋ぐ”
ミナミ「……また供物?」
ユウ「違います!誕生日プレゼントっす。」
差し出した手がちょっと震えている。
ミナミは受け取りながら、少しだけ笑う。
ミナミ「……ピック?」
ユウ「はい。前は飴の指輪だったんで、
今度は“ちゃんとしたやつ”です。
その……先輩の声も、音も、
繋がってる感じがするから。」
ミナミ「……へぇ。ロマンチックね。」
ユウ「バカでも、ちょっとは成長してるんで。」
沈黙。風が止まる。
ユウ「あと……誕生日、おめでとうございます。
先輩が生まれてきたおかげで、俺、先輩に会えました。
ありがとうございます。」
ミナミ「……言葉のセンス、
ほんとに“天然バカ”の域ね。」
ユウ「褒め言葉っす!」
ミナミ「……まぁ、悪くない。」
その言葉と同時に、少し頬が赤い。
でもユウは気づかず、ポケットを探りはじめた。
ミナミ「何してんの?」
ユウ「いや、あの……実はもう一個あって。」
ごそごそ……。
出てきたのは、指輪型キャンディ(チュッパ型)。
ユウ「……これも、“セット”っす。」
ミナミ「……はぁ?」
ユウ「進化したんす。“飴の誓い・第二形態”。」
ミナミ、吹き出す。
「……成長してないのか、戻ったのか、判断に困るわね。」
ユウ「味変っす。バニラ&青春味!」
ミナミ「……糖度の暴力。」
そこへ、遠くからレイナとアイカの声。
レイナ「ねぇねぇ!今の見た!?飴の指輪また渡してる!」
アイカ「青春は回る、飴のように。」
レイナ「てか、もうそれプロポーズの手順だよね?」
アイカ「誤解の臨界点、突破確認。」
ミナミ「……あの二人、あとで供養ね。」
ユウ「(供養って言葉がサラッと怖い)」
風がまた吹いて、雪が光を返す。
ミナミはピックを首元に下げ、
飴のリングを指にはめて言った。
「……溶ける前に、ちゃんと噛みしめなさいよ。
甘いのも、痛いのも、全部青春なんだから。」
ユウ「……はい。全部味わいます。」
⸻
放課後の空。
杏仁豆腐はいつもの教室で笑っていた。
カズ「おい、ユウ。お前それ……また飴?」
タクミ「飴男子、再来か。」
ダイキ「愛、糖度300%だな。」
ユウ「うるせぇ。……今だけ限定味なんだよ。」
窓の外、光が溶ける。
——飴も、音も、青春も。
溶ける前が、一番甘い。




