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青春ギャラクティカ  作者: 灰色ぎつね
334/348

下駄箱バレンタイン ― 甘き誤配と供物の午後 ―


──2月14日、朝。

昇降口に冬の光。

風の冷たさに、どこか浮ついた気配。


ダイキ「なぁ……今日こそ、来るだろ。」

カズ「毎年言ってるけど、根拠は?」

タクミ「信仰の域に入ってるな。」


──ガラッ。

カズが下駄箱を開けた。


カズ「……おい、なんか入ってる!」

ダイキ「マジか!?俺のにも!」

タクミ「……あ、こっちもだ。」


三人の手に同じ包装の小さな包み。


ダイキ「これ……全員分ってことか!?」

カズ「ついに来た、チョコの奇跡。」

タクミ「宗教的テンションやめろ。」


──そこに、少し遅れてユウがやってくる。


ユウ「おはよ。……なんか賑やかだな。」

カズ「見ろよ、チョコ入ってた!」

ユウ「へぇ、すげぇじゃん。」


ダイキ「ユウのとこも見てみろよ!」

ユウ「あ、あぁ……」


──ガラッ。

ユウの下駄箱。


──空。


一瞬、全員が黙る。


カズ「……ないな。」

タクミ「……これは気まずい。」

ダイキ「物理的格差、発生。」


ユウ「い、いや、全然!ほら、俺、バレンタインとか興味ないタイプだから!」

カズ「強がり、震えてるぞ。」

ダイキ「心の方がチョコ溶けてんじゃね?」



──昼休み。

机の上には三つのチョコ。

男子三人が包みを見つめる。


タクミ「差出人、同じだな。」

カズ「カード入り……開ける?」

ダイキ「いや、これは慎重にいこう。

“恋の火薬庫”だ。」


ユウは後ろで静かに見ていた。



ドアが開く。

四柱+マナティ、神々しく登場。


レイナ「なにその恋の裁判所みたいな空気〜!」

マナティ「ふふっ、男子も可愛いね♡」

アイカ「観測:恋愛熱、軽度の発火。」

ミナミ「……で?ユウは?」

ユウ「俺? 入ってなかったっす。」


沈黙。

アイカが眉を上げ、レイナが「まじで?」と笑う。


ミナミ「……仕方ないわね。」

四人、紙袋を取り出す。


マナティ「神々の供物♡ おすそ分け〜!」

レイナ「供物はシェアすべし!」

アイカ「再分配、合理的。」

ミナミ「……別に、あげないとは言ってない。」


カズ「い、いやいや!俺らは、その……!」

タクミ「すでに義理ルート確保済みで……!」

ダイキ「受領上限、突破してて……!」


三人が全力で断る。

ユウだけ、反射的に手を伸ばした。


ユウ「……ありがたく、頂きます。」

全員「お前ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


レイナ「あー!やっぱ豆、素直すぎ!」

ミナミ「……まぁ、受け取るのも才能でしょ。」

マナティ「“素直=魅力”ってデータ出てるし♡」



レイナ「でもさ、そのチョコ、開けてないんでしょ?開けよ!」

カズ「いや、まだ……!」

レイナ「開封ぅ〜!」

──ビリッ。


カードが出てくる。


「いつもありがとう。」


全員が息を呑む。


タクミ「……シンプル。」

カズ「これは、温かい系。」

ダイキ「字が……優しいな。」

レイナ「ん?下のとこに……」


by 豆


空気、完全静止。


全員「お前かぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」



ユウ「いや、違う!感謝の気持ち的なやつで!」

ダイキ「優しさの押し売り!!」

カズ「感謝チョコで社会混乱起こすな!」

タクミ「善意のテロリズム。」

ミナミ(微笑)「……でも、いいじゃない。

“ありがとう”って言葉、恋よりレアだから。」

マナティ「うん、それキュンデータ更新♡」

アイカ「観測結果:羞恥と誠実、反比例。」

レイナ「豆、マジでバカでいいわ。」



──放課後。

昇降口。

ユウの下駄箱に、小さな包み。


「こっちも、ありがとう。

by 観測者」


ユウは笑ってつぶやいた。

「……観測って便利だな。」


外では、粉雪が静かに舞っていた。

恋も義理も越えて、

その日いちばん甘かったのは——照れ隠しだった。


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