年越しお泊まり in タクミ邸 〜妹、降臨す〜
──12月31日、午後9時。
杏仁豆腐は雪を踏みしめながらタクミ邸へ向かっていた。
ダイキ「寒っ!なんで徒歩!?」
ユウ「青春は徒歩で運ぶもんだろ!」
カズ「名言っぽく言うな、ただのアホだ。」
タクミ「うるさい、近所迷惑だ!」
玄関前、白い息と共に高級な柔軟剤の香り。
ユウ「……これが“杏”の家か。」
カズ「床がもう、“人間反省しろ”って反射してる。」
ピンポーン。
ドアが開く。現れたのは、ぱっつん黒髪の少女。
兄の妹、ミユ。
ミユ「……兄、またバカ連れてきたの?」
タクミ「バカ言うな!」
ミユ「じゃあ“うるさい現象群”でいい?」
ユウ「語彙の殺傷力!!」
ダイキ「こっちのIQが下がってく……!」
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◆タクミ邸・居間
木目と白の部屋。完璧な整頓。
杏仁豆腐は緊張で姿勢が良い。
カズ「……生活音が一切しねぇ。」
ダイキ「ここ、青春禁止区域じゃね?」
ユウ「音が死んでる。床が吸音してる。」
キッチンから顔を出すミユ。
「そば、私が作る。兄は何もしないで。」
タクミ「俺の家なのに!?」
ミユ「その台詞がモテない原因。」
ミナミ「……教育のレベルが高いわね。」
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◆恋バナ開戦
マナティ「せっかくだし、恋バナでもしよ♡」
ミユ「IQ下がる音した。」
ユウ「え、いきなり地獄。」
レイナ「恋愛トークは除夜の鐘より清めになるのよ。」
アイカ「観測記録開始。」
マナティ「ねぇユウくん、来年の初詣は誰と行きたい?」
ユウ「太宰治。」
全員「死者やめろ!!」
ミナミ「……相変わらずバカね。」
ユウ「褒めてます?」
ミナミ「褒め言葉で済むなら苦労しないわ。」
ミユ「……兄、この人たちと毎日一緒なの?」
タクミ「そうだけど?」
ミユ「そりゃIQ共鳴して下がるわ。」
ダイキ「分析やめろぉ!!」
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◆兄の黒歴史、発掘。
ミユがふと思い出したように言った。
「そういえばさ。兄が“女装コンテスト出るから服貸して”って言ってきた時あったけど、あれ何だったの?」
一瞬、沈黙。
次の瞬間、爆笑。
レイナ「それ“幻の美女グランプリ”の時じゃん!」
カズ「185cmロリ服男、伝説回!」
ダイキ「夢に出たんだぞ、あれ!」
ミユ「こっちは悪夢だったよ。
私の服が伸びて帰ってきたからね。
“文化祭は戦争だ”とか言いながらピンクのカーディガン着てんの、
家族会議になりかけた。」
マナティ「ふふっ、でも似合ってたよ♡」
ミユ「“でも”じゃないの。あれは災害。」
タクミ「やめろ、もう忘れてくれぇ!」
笑い声がこたつの熱に混ざって弾けた。
年越し前の夜なのに、すでに体感温度は春。
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◆妹の一撃。
ミユ「兄。」
タクミ「なんだよ。」
ミユ「この中の誰が彼女さんなの?」
──空気、凍る。
ユウ「えっ!?いや、えっ!?ちがっ……」
レイナ「いい質問ねぇ妹ちゃん。」
アイカ「観測記録:集団の心拍数、上昇。」
マナティ「ふふ、恋の診察♡」
ミナミ「……余計な診察ね。」
ミユ「ふーん。兄以外は全員、青春に感染済みって感じ。」
ダイキ「それ、治らねぇやつだ!!」
タクミ「お前、年末に人の尊厳削るな!」
ミユ「兄だけは免疫力高いだけ。」
カズ「地味に致命傷だな、それ。」
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◆カウントダウン
カズ「あと10秒!」
全員「10!9!8!」
──電気、パチン。
真っ暗。
ユウ「……え、これ演出?」
ミナミ「……青春、見えない方が落ち着くわね。」
レイナ「ミナミ、闇落ちすんな。」
ミユ「兄、青春って照明落とす儀式なの?」
マナティ(スマホライト)「ロマンチック〜♡」
笑いと光と湯気。
新年の夜が、まるで延長された青春みたいにきらめいた。
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◆エピローグ
外では花火。
玄関先、全員で空を見上げる。
ユウ「……なんか、来年もバカでいけそうだな。」
ミナミ「バカの継続力、尊敬するわ。」
ミユ「兄、来年こそ彼女できるといいね。」
タクミ「やめろその締め!!」
カズ「令和最初の死亡確認。」
ダイキ「合掌!」
雪が舞い、笑いが夜空に溶けていく。
青春は、まだ冷めないこたつのように、そこにあった。
——バカたちの新年、開幕。




