逆立ちバトル ― 重力と羞恥の境界線 ―
放課後。
廊下に響く、なにやら危険な掛け声。
ユウ「よし、誰が一番長く逆立ちできるか勝負だ!」
タクミ「いや、なんの競技!?」
カズ「発端どこ?」
ダイキ「青春は逆さまから見ろって言うだろ!」
ユウ「誰が言ったよそれ!」
⸻
◆ 第一ラウンド:転倒祭り
ユウ「せーのっ!」
(ドドドドド)
全員、ほぼ同時に転倒。
カズ「床が友情を受け止めた。」
ダイキ「オレの尊厳が先に倒れた!」
タクミ「血の味が青春の味になってる!」
ユウ「いや、まだいける!」
(再チャレンジ。ユウだけ成功。)
逆立ちのままドヤ顔。
⸻
◆ 運命の転がり
ユウ「どうだ見たか! 俺の体幹っ!」
ダイキ「お前、調子乗るな!」
ドンッ。
ダイキの手がユウの足に当たり、バランス崩壊。
ユウ「ぬわっ!?」
(くるり。転がる。スライディング。)
──その先、女子の足元。
レイナ「……ちょ、今の見た!?」
アイカ「……いや、見えてた。」
ミナミ「……。」
ユウ(心の声)「終わった。」
沈黙。
空気が一瞬、氷みたいに固まる。
レイナ「ちょ、ヤバっ、顔してんじゃん!」
アイカ「……重力を言い訳にできるの、今だけよ?」
ミナミ「……視線、上げなさい。」
ユウ、反射で正座。
タクミ「逆立ちより低くなってるぞ。」
⸻
◆ 廊下、夕暮れ。
壁にもたれる杏仁豆腐。
全員ボロボロ。
カズ「……逆立ちでここまで恥かく奴、初めて見た。」
ダイキ「重力、敵だったな。」
タクミ「いや、敗因は視線だろ。」
ユウ「……でも見えたのは、真理っていうか、いや、宇宙だよ、宇宙。」
カズ「黙れバカ!」
そこに三柱が通りかかる。
レイナ「まだ転がってんの?青春かよ。」
アイカ「……観測結果:羞恥は継続中。」
ミナミ「……まぁ、宇宙ってのは、上にも下にもあるものよ。」
ユウ「……はい。勉強になりました。」
風が廊下を抜けた。
天井の蛍光灯が、逆さのまま光っていた。
——青春、重力に逆らって転倒中。




