背中文字あてゲーム ― すきと、すき焼きの境界線 ―
昼休み。
ストーブの熱がぼんやりと広がる教室。
ユウ「……なんか、あったかい遊びしたいな。」
ダイキ「お、じゃあ背中文字あてゲームやろうぜ!」
カズ「小学生かよ。」
タクミ「まぁでも、冬っぽいな。」
マナ「背中ってね、気持ち出るんだよ〜?」
誰も止めなかった。
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◆ 第1ラウンド:マナ → タクミ
マナ「タクミくん、背中向けて〜」
タクミ「……やな予感しかしねぇ」
指でゆっくりなぞる。
“カ”…“ミ”…
タクミ「……カミキッタ?」
マナ「ちがう、“髪かわいい”♡」
ユウ「青春、バカの味がする。」
カズ「背中から糖分出てんな。」
ダイキ「お前ら照れてる〜!」
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◆ 第2ラウンド:??? → ユウ
ガラッ。
ドアが開く。
ミナミ「……またバカなことしてるのね。」
ユウ「せ、先輩!? これは心理実験でして!」
ミナミ「ふふ。バカでも理由は用意するのね。」
マナ「先輩もどうですか?背中貸します?」
ミナミ「いいわ。見るだけで充分。」
少し笑って、
「……で、次は誰の番?」
タクミ「ユウだな。」
ユウ「俺!?」
ミナミ「じゃあ、座って。背中、貸しなさい。」
ユウ「え、ちょ……はい……!」
──その瞬間、空気が変わった。
背中越しに、彼女の気配。
指が、そっと触れる。
「……す」
(……!?)
「……き」
心臓が、音を立てた。
ユウ「……え、先輩……?」
(もしかして、“好き”って……!?)
勢いで振り向く。
——そこにいたのは、後ろでニヤニヤしてるダイキ。
ダイキ「“すき焼き”!!!」
ユウ「お前かよッ!!!」
カズ「見事な誤読。」
タクミ「ときめき返せ。」
マナ「でもドキドキしてた顔、可愛かったよ〜?」
ミナミ(苦笑して)「……焦げてるわね、青春。」
ユウ「焦げたんじゃねぇ、燃えたんだよ!」
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◆ 放課後。
夕方の光。
ストーブの残り熱。
ダイキ「いやぁ、すき焼きは名作だな!」
カズ「恋も鍋も、タイミング次第。」
タクミ「沸騰するまでが青春だな。」
マナ「でも、“すき”って言葉って、便利だよね〜。」
ユウ「……もう、全員黙れ。」
ミナミが帰り際、振り向く。
「……焼きでも、悪くないでしょ。」
ユウ「……もう知らねぇ……。」
でも背中の熱だけは、まだ冷めなかった。




