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青春ギャラクティカ  作者: 灰色ぎつね
310/319

caseマナ #1『風の中のノイズ』


──夜。

部屋の照明は落とされ、カーテンの隙間から街灯の光が細く入っていた。

マナティは机に肘をついて、スマホを見つめている。

再生履歴には、ひとつの音声ファイル。


『先輩の犬でいいっす。』


再生ボタンを押すたびに、空気が小さく震える。

笑って聞いていた昼の声が、

夜になるとまるで違う温度を持って響く。


──笑えるはずなのに、胸の奥がざわつく。


マナ(小さくつぶやく)「……なんで、止めらんないの。」


スマホのスピーカーからは、

昨日の笑い声が微かに混ざっている。

ユウの声、ダイキの叫び、みんなの笑い。


それが急に、遠く感じた。


鏡の中の自分を見る。

完璧なまつ毛、形の整った唇。

“作った美しさ”は、いつも通り。

なのに、今夜だけは、それが少しだけ浮いて見えた。


マナ「……ほんと、バカみたい。」


笑いながら、涙が出そうになる。

何に、泣きそうなのかもわからない。

それが一番、腹が立つ。


その時、通知音。

画面の隅に、クラスグループのLINE。


《杏仁豆腐すげぇわwww》《あの録音神回》《青春の犬降臨》


マナ「……バカども。」

でも、笑ってしまう。

笑いながら、心の奥が少しだけあたたかくなる。


──風がカーテンを揺らす。

微かにミナミの香水みたいな残り香。

あの人たちは、きっとこの“感情”を知ってる。

自分はまだ、知らない。


マナ(独り言のように)

「……観測、できないや。」


スマホの画面が暗くなる。

そこに映る自分の顔が、少しだけ揺れて見えた。


──美しさも、完璧さも、

 恋のノイズには勝てない。


風が止む。

静けさの中、マナの笑い声だけが残った。


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