冬休み前ライブ計画!〜防寒と情熱の狭間で〜
放課後の音楽室(もと倉庫)に、吐く息が白く漂う。
窓の外では雪がちらつき始めていた。
ユウ「さみぃ……。もうバンド活動ってより冷凍訓練じゃん」
カズ「いや、息白いのは雰囲気出るよ。青春っぽくて」
タクミ「この温度で青春とか言えるお前の心が一番あったけぇよ」
ダイキ「てかさ、年内にもう一発ライブしね? 締めに!」
ユウ「お、いいじゃん。題して——“寒空ロックフェス”!」
カズ「ダサい」
タクミ「タイトルで観客帰るぞ」
ダイキ「じゃあ“こたつでロック”とか?」
ユウ「もはや動かねぇじゃん!!」
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◆ 冬、ユウの謎理論。
ユウ「でもさ……冬はいい季節だよな」
カズ「唐突だな」
ユウ「へそピが出ないから安心して生活できる」
タクミ「どんな基準だよ」
ユウ「夏は地雷多いのよ。油断してたら“キラッ”って光るじゃん。反射的にフェチスイッチ入っちゃうんだよ」
ダイキ「もはや職業病だろそれ」
カズ「……でもユウが冬好きなの、ちょっと分かる気がする。落ち着くよな」
ユウ「だろ? 平和な季節、最高だよ」
その瞬間、ガラッとドアが開く。
「おーい杏仁豆腐ー!防音マット、貸し出しにきたぞー!」
入ってきたのは安藤先生。
厚手のコートに、ニット帽、そして——膝上ミニスカ。
ユウ(……平和、崩壊。)
ダイキ「ユウ、鼻血!」
ユウ「だ、出てねぇ!」(出てた)
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◆ ライブ計画会議。
机にホワイトボードを立て、ダイキが勢いよく書く。
《年内ラストライブ in 体育館裏!!》
・12月22日(放課後)
・観客:呼べるだけ呼ぶ
・テーマ:「防寒より情熱」
タクミ「体育館裏って……絶対寒いだろ」
カズ「いや、あの夕焼け背景は絵になる」
ユウ「あとで凍死したら幽霊バンドだな」
ダイキ「“死んでもロック”ってことで!」
全員「いや笑えねぇ!!」
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◆ 顧問登場、安藤先生の“現実的アドバイス”。
安藤先生「アンタら、また外でやろうとしてんの? マイク凍るわよ」
ユウ「先生、魂で歌うから大丈夫っす!」
安藤先生「じゃあ魂も凍らせなさい」
タクミ「容赦ねぇ……」
先生はため息をつきながらも、ホット缶コーヒーを差し出した。
ユウはそれを受け取り、ほっと息をつく。
ユウ「……先生、やっぱ冬も悪くないっすね」
安藤先生「へそピ出てないから?」
ユウ「!!!」
カズ&ダイキ「聞かれてたぁぁぁ!!」
タクミ「どの口が平和とか言ってたんだよ!」
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夜、帰り道。
街灯が雪を照らしてオレンジに光る中、ユウはふと思う。
ユウ「寒くても、楽器鳴らして、みんなで笑って。なんかさ……生きてるって感じするよな」
カズ「うん。たぶん、こういうのを青春って言うんだよ」
ダイキ「でもさ、指先もう感覚ねぇぞ」
タクミ「次は“温かい系青春”にしようぜ」
ユウ「……そうだな。じゃあ次は“恋とコタツとへそピなし”の冬フェスで!」
全員「それは地味すぎるわ!!」
雪がふわりと舞う。
笑い声が夜の街に溶けていく。
——青春は、冬でも熱い。




