真実の録音リサイタル ― バカと犬と風のリプレイ ―
──翌日、昼休み。
教室の空気が妙にざわついていた。
何かが起こる予感。
ユウはパンをかじりながら、違和感に気づく。
カズ「なぁ……今、教卓の上にスマホ置いてあんだけど。」
ダイキ「録音ボタンついてね?」
タクミ「……やな予感しかしねぇ。」
次の瞬間。
教室スピーカーから、流れた。
『……え、ほんとに? じゃあ、先輩の犬でいいっす。』
──沈黙。
全員「!?!?!?!?」
『フェチ発動早すぎ!』『魂が犬小屋行き!』
昨日の騒ぎが、まるごと高音質で再生されている。
ユウ「ちょ、ちょ待っ──!それ録ってたやつ!?!?」
声を張った瞬間、廊下の向こうからあの笑い声。
マナ「ふふっ……音量バランス、完璧でしょ?」
ドアにもたれながら、マナティが立っていた。
スマホを指先でくるくる回しながら、あざとい笑み。
「杏仁豆腐さんの“忠誠の名言集”を配信しようと思って。」
ユウ「やめろ!バズる!!」
ダイキ「いや、バズってんぞ!?!」
カズ「“先輩の犬でいいっす”Tシャツ出てる!!」
レイナ(爆笑しながら)「……マナティ、やるじゃん!」
アイカ「観測結果:羞恥=感染性強。」
ミナミ(呆れ気味)「……ほんと、静かにしてても騒がしい子たちね。」
マナ「だって、青春は音量でしょ?」
ウィンク。
──その瞬間、教室の空気が変わった。
笑いと赤面が混ざったような、
熱と羞恥の温度が上がっていく。
ユウ、顔を押さえて小さく呟いた。
「……お前、ほんとあざといな。」
マナ「うん、知ってる。」
その笑顔が、少しだけ優しく見えた。
⸻
放課後。
夕暮れの廊下。
マナはひとり、録音データを再生していた。
スピーカーから流れる、バカでまっすぐな声。
『だって、1番の美女だったから。』
マナ(小さく息を漏らす)「……ずるいなぁ、そういうの。」
スマホの画面を伏せて、笑う。
でもその笑いは、少しだけ切なかった。
──青春の音は、止まらない。
笑い声も、胸のざわめきも。
どれも、ちゃんと“録音されている”。




