恋愛熟練度格差戦線 ― 気弾とキスの境界線 ―
──放課後、夕陽の差し込む教室。
窓の外はオレンジ色、黒板には誰かが描いた落書きのハート。
ユウ「なぁ……俺たち、恋の発展途上国じゃね?」
ダイキ「いきなりどうした。恋のGDPでも下がったか?」
タクミ「いや、ユウが言いたいのは多分“経験値”の話だろ。」
ユウ「そう! 恋愛熟練度! 男女で初期設定が違うんだよ!」
カズ「はい出た、バカの社会問題シリーズ。」
ユウ「だってさ、俺らが手からエネルギー弾出してた頃に、
女子はもう“キスしてた”んだよ。」
ダイキ「どこの学校の話だよ。」
ユウ「いや、漫画の中で!」
一瞬、沈黙。
次の瞬間、爆笑。
タクミ「それを真顔で言うなよ!」
カズ「てか、何読んだんだよ。」
ユウ「姉貴の本棚にあった“りぼん”と“別マ”。」
ダイキ「お前、思春期の訓練所、間違ってんぞ。」
ユウ「いや、マジで衝撃だったんだって。
敵を倒さずに、目と心で戦ってるの。
“好き”って言葉が、武器より強い世界。」
カズ「……確かに、それはエネルギー弾より深いな。」
ダイキ「俺らの恋愛観、筋肉に支配されすぎなんだよ。」
ユウ「だから俺は今日から“恋の修行”を始める!」
──その翌日。
購買横のベンチ。
杏仁豆腐4人、少女漫画を広げて黙読。
その異様な光景を、三柱が通りかかる。
レイナ「なにやってんの? 読書会?」
カズ「恋の修行中っす。」
アイカ「観測記録:男子の群れが少女漫画で感情学習中。」
ミナミ「……またバカなことしてるのね。」
ユウ「違うんです、先輩。これは文化交流っす。
俺たち、愛の表現に遅れてるんで!」
ミナミ「ふぅん……で、進捗は?」
ユウ「“まつ毛の長い男子”がモテるって学びました。」
ミナミ「……発想、死んでる。」
レイナ「ねぇ、これ“観測”してる方が照れるんだけど!」
──放課後。
夕陽が完全に落ち、教室の電気が灯る。
机の上には少女漫画とノート。
そこに、ミナミが一言。
「……恋はね、習うものじゃなくて、感染るものよ。」
ユウ「感染る……?」
「そう。隣に“熱”があれば、誰だって感染る。」
──静寂。
窓の外、夕焼けが夜に飲まれていく。
ユウの手の中のページが、ひらりとめくれた。
少女漫画のヒロインが微笑む。
ユウ「……俺ら、感染源になれるかな。」
カズ「バカウイルスなら、もう蔓延してる。」
全員「それな!」
──笑い声が、教室の窓からこぼれていく。
気弾もキスも関係なく、
彼らの“熱”だけが、確かにそこにあった。




