caseレイナ(特別篇)『果汁、青春に混ざる』
──冬の夕方。
こたつの上で転がるみかんの皮。
男子たちの笑い声。
果汁の香りと、くだらない熱。
レイナはその様子を、少し離れた廊下の陰から見ていた。
笑いすぎて床を叩くユウ、呆れながらも笑ってるカズ、声がでかすぎて注意されるダイキ。
……そして、誰より真顔でみかんを見つめるタクミ。
「バカすぎて、好き。」
小さく呟いて、レイナは口元を押さえた。
自分で言って、自分で笑う。
こういうとこ、アイカにバレたら一生いじられるやつ。
ガラッとドアが開く。
中へ入るタイミングを逃したけど、
あの地獄みたいな空気の中で“神の登場”を決めるのも、
悪くないかもしれない。
「……アンタら、何してんの?」
その一言で全員の動きが止まる。
レイナはその“空気の凍り方”にちょっと笑った。
アイカが淡々とメモを取ってるし、ミナミは腕を組んで“観測モード”。
あぁ、ほんとに三柱ってバランス取れてるなって思う。
だけどその後。
ユウが「実際はもっとあるなと」って真顔で言った瞬間──
レイナの中で、何かがぷつっと弾けた。
「はぁ!?なに勝手にサイズ分析してんのよ!!」
叫びながら、果汁の飛ぶ戦場へ突撃。
みかんの皮が舞う。
笑い声が弾ける。
ミナミの「……着痩せするんすね、じゃないのよ」も聞こえてくる。
もう全部、どうでもよくなるくらいバカで、楽しくて。
──レイナはふと思う。
“風”って、こういうものかもしれない。
形も掴めないし、理屈もいらない。
ただ吹いて、混ざって、笑う。
それで充分。
こたつの熱気が、肌に残る。
果汁の香りが、少しだけ甘い。
青春って、こんなくだらない温度で回ってる。
「……やっぱ好きだな、バカって。」
レイナの声は、笑いの渦にまぎれて消えた。
けど、その笑顔はちゃんと残ってた。
ミナミがちらりと横目で見て、小さく頷く。
──“風の神”も、たまには果汁にまみれる。




