302/323
グレーの季節、ふたたび
──昼休み。
窓の外では風が白く揺れていた。
まだ吐く息は薄いけど、空気の粒が乾いている。
ユウは机に突っ伏していた頬を上げ、
ポケットからくしゃくしゃのマフラーを取り出した。
淡いグレー。去年、ミナミからもらったやつだ。
「……また、この季節か。」
軽く広げて、首に巻く。
ほのかに残る柔軟剤の匂いが、空気に混ざる。
それだけで少しだけ、胸の奥が温かくなる。
「へへっ……今年も現役だな。」
カズがチラッと見て、「お、出たな“灰色の信仰布”。」
タクミ「まだあれ使ってんの?物持ちいいな。」
ダイキ「てか、それミナミ先輩からのやつだろ?青春だなぁ〜!」
ユウ「うるせぇ、実用重視だっつの。」
窓の外、風がまた吹く。
マフラーの端がふわりと揺れて、光を掴んだ。
ミナミはちょうど廊下を歩いていて、
その揺れに一瞬だけ目を止める。
──でも、何も言わずに通り過ぎた。
ユウは知らないまま、マフラーの端を直して笑う。
「……やっぱ、これがいちばん落ち着くわ。」
空気は冷たい。
でも、去年の熱がちゃんと残っている。
そう思うだけで、少しだけ嬉しかった。




