秋の文学すり替え戦線 ― 官能と観測の境界線 ―
──放課後、夕日が教室の床を焼いていた。
文化祭の喧騒も落ち着き、秋の空気に少し“知性”が混じっていた。
ダイキ「なぁ、前に三柱にやられた“あのイタズラ”覚えてる?」
タクミ「あー、現国の教科書が官能小説にすり替えられてたやつだろ。」
カズ「先生、真顔で『……文学的だな』って言ってたやつな。」
ユウ「リベンジ、するしかないっしょ。」
(沈黙)
ダイキ「で、誰に?」
全員「アイカ先輩だな。」
⸻
翌朝。
ユウは早く登校し、静かな教室で作戦を決行。
現国の教科書を開き、こっそり差し替える。
『濡れたページ、燃える青春』──読む前から熱気が立ち上るタイトルだった。
カバーをかけ直し、机に戻す。
ユウ「……観測者を、観測してみるか。」
⸻
現国の時間。
教師「じゃあ、次の段落、アイカさん読んでくれる?」
アイカ「はい。」
ページをめくる音。
次の瞬間、教室の空気が変わった。
「……指先が触れた瞬間、熱が走った。」
(ざわ……)
「喉の奥から、名前がこぼれ落ちる。」
(ざわざわ……)
「息が触れた、それだけで世界が燃える──」
(静寂)
教師「……えーと、それ、教科書だっけ?」
アイカ、顔を上げて淡々と。
「……比喩表現としては、かなり優秀だと思います。」
クラス中が爆笑。
ユウ、机に突っ伏して震える。
ダイキ「怖ぇ……冷静な殺気感じた……」
タクミ「観測の刃って、こういうことか……」
⸻
放課後。
ユウが自分の机に戻ると、メモが一枚。
『観測は、時に主観を伴う。——次はあなたの番ね。』
ユウ「……返り討ち、観測完了ってことか。」
窓の外、落ち葉がくるくる舞う。
笑いと静寂の狭間に、
青春の熱だけが、ゆっくりと残っていた。




