雪かき大戦争 〜青春はスコップとともに〜
放課後、校庭。
昨日の「芸術的な事件(別名・雪像事件)」の代償として、
俺たち杏仁豆腐4人は——広大な校庭の雪かきを命じられていた。
ユウ「……地獄だ」
タクミ「校庭って、こんな広かったっけ」
ダイキ「広いっていうか、もう“北極”だよな」
カズ「先生の怒りの広さそのものだな」
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◆ ココアと悪魔の笑み
ナムサン「ユウちゃ〜ん♡ ココア持ってきたわよぉ〜」
ユウ「神!救いのナムサン!」
安藤先生「こらナムサン!!甘やかさないの!!」
ナムサン「だってぇ、青春の汗には糖分が必要でしょぉ♡」
安藤先生「あなたも雪かきしなさい!!」
その瞬間、ヒールがキュッと鳴った。
安藤先生、完全に戦闘モード。
全員、背筋ピン。空気、張りつめる。
ユウ(こ、これは“雪の地獄”の始まりだ……)
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◆ 雪かき、からの雪投げ。
ダイキ「なぁ、これ……スコップで集めて投げた方が早くね?」
カズ「雪かきと雪合戦のハイブリッド?」
タクミ「それ絶対ロクなことにならねぇ」
ユウ「やるか」
タクミ「やめとけって!!」
——ドゴッ。
ダイキのスコップ雪弾がタクミの背中を直撃。
タクミ「冷てぇぇぇぇぇ!!!」
ユウ「開戦!!」
カズ「了解!」
ダイキ「青春は戦だぁぁぁ!!!」
気づけば校庭中が戦場。
スコップ雪弾が飛び交い、誰かが転び、叫び、笑う。
雪の白に、俺たちのバカ笑いが響く。
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◆ そして悲劇は起こった。
ユウが雪玉を投げようとして――スコップを滑らせ、
ナムサンの足元にドスン。
ナムサン「あら♡ いいコントロールね〜ユウちゃん♡」
ユウ「す、すみません!!」
安藤先生「……ユウ、もう一回職員室くる?」
ユウ「うわー!!反省中に再反省!!!」
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◆ 一息ついて、恋バナタイム
ダイキ「はぁ〜、疲れた……あー腹減った」
カズ「雪食うなよ?」
ダイキ「……ユウ、正直に言えよ」
ユウ「な、なんだよ」
カズ「ミナミ先輩、好きなんだろ?」
タクミ「出たな恋バナ地雷」
ユウ「ち、違う!あれはその、へそピが――」
全員「フェチじゃねぇか!!」
ナムサン(遠くから)「へそピ?何の話ぃ〜?♡」
安藤先生「ちょっと!今度こそ職員室来なさいユウ!!」
ユウ「うわぁぁぁぁ!!!」
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雪まみれ、笑いまみれ、怒られまみれ。
でも、なんかそれが楽しい。
誰かがこぼした笑い声が、冷たい空気の中でやけにあたたかかった。
タクミ「結局、雪かき進んでねぇな」
カズ「ま、思い出は積もったけどな」
ユウ「上手いこと言うな!」
ダイキ「でも腹は減った」
ユウ「ラーメン行くか!」
こうして俺たちは雪まみれのまま校門を出た。
吐く息が白くて、空は群青色。
足跡の列が、どこまでも続いていた。
——青春は、反省しないまま続く。