恋のレッスンⅢ ― 既読の向こう側 ―
昼休み。
教室の片隅、女子たちが集まっている。
マナティはポッキーをくわえながら、スマホを覗きこんでいた。
女子A「マナちゃん〜、LINE返ってこないの!昨日ハート送ったのに、既読スルー!」
マナティ「ふふ、ハートで返ってくるのはアプリの広告ぐらいだよ。」
女子B「え、じゃあどうすればいいの!?」
マナティはポッキーをくるくる回して、
「簡単だよ。……見てて。」
その瞬間、杏仁豆腐が廊下を通る。
マナティ「ターゲット、確保♡」
女子たち「えっ!?」
マナティがユウに駆け寄り、
「あのさ、ユウくん。昨日のスタンプ、返してくれなかったよね?」
ユウ「え、スタンプ?ごめん、通知バグってたかも。」
マナティ「……じゃあ、今ここで返して?」
上目遣い。笑顔。間。沈黙。
廊下の温度が一度上がった。
ユウ「え、いや……スタンプ?どの?」
マナティ「“すき”ってやつ。」
ユウ「えっ!?そんなの送ってた!?」
マナティ「(にやり)送ってないよ、まだ♡」
女子たち「きゃーーーー!!!」
カズ「おいおい、公開ナンパ現場じゃねーか!」
ダイキ「発情ブレイクビート第二章きたぞ!!」
タクミ「お前ら黙れ、音量が恋を殺す。」
マナティはウインクして女子たちに向き直る。
「ね? 返事が欲しいなら、相手の心拍数を上げるのが先♡」
ユウ「……マナティ、怖ぇよ。けど理屈は合ってる気がする。」
マナティ「恋って理屈じゃないもん、戦略だよ。」
レイナ「うわー出た、“計算の女神”!」
アイカ「理性をデータに変えるタイプ。」
ミナミ「……恋も観測範囲に入れるつもり?」
マナティ「もちろん。だって、あんたたちの領域、楽しそうだもん♡」
——風が揺れた。
四柱の均衡に、またひとつ恋のバグが走った。




