秋風スカウト戦線 ― 通して、神々の午後 ―
休日の午後。
風が冷たくなってきた街に、焼き栗とコーヒーの香りが漂っていた。
杏仁豆腐の4人は冬服を探して、
商店街を歩いていた。
カズ「お、ニット安い!」
タクミ「サイズ感むずいな、肩落ちすぎると女子っぽくなるし。」
ダイキ「なぁ、俺は似合う?」
ユウ「そのニット帽、気温より重いな。」
笑いながら、
寒さと青春を分け合うように歩いていた。
──ふと、交差点の向こうに異物。
風を切るように立つ、四人の影。
金、灰、ベージュ、ピンク。
三柱とマナだった。
制服じゃない、私服の神々。
人の波の中で、異様に“光の濃度”が高かった。
⸻
「ちょっと、そこの子たち!」
声をかけてくるスカウトマン。
「読モやってみない?」「撮影頼んでいい?」
「表参道のカフェで打ち合わせを——」
有象無象の声。
スマホのシャッター。
誰もが“選ばせてほしい”と願っていた。
レイナはサングラスを外し、ピースして笑う。
「え、なにこれ〜、撮られてんの?ウケる〜!」
アイカは視線だけでかわし、
「公道は公共のものよ。」と冷たく返す。
マナはあざとく首を傾けて、
「どうしよっかなぁ……撮るなら盛ってね?」
空気が揺れた。
その中心で、ただ一人。
ミナミが歩き出した。
ヒールの音が、舗道を切り裂く。
スカウトが思わず立ち止まる。
空気が止まる。
ミナミ「……通して。」
それだけ。
誰もが息を飲んだ。
通行人の流れが分かれ、風の向きが変わる。
まるで“街”そのものが彼女に道を開けたようだった。
⸻
ユウたちが駆け寄ってくる。
ユウ「やべぇ……あれ、完全に神格イベント。」
カズ「観測する側の圧力、物理で来たな。」
ダイキ「スカウトマンが“勧誘された側”みたいになってんぞ。」
マナ「……ああいうの、羨ましいよね。“通るだけで正解”みたいな。」
レイナ「なに言ってんの、アンタも十分バズってたじゃん。」
アイカ「でも、バズは熱に耐えられないわ。溶けるものよ。」
ミナミは振り返らない。
ただ、風の中で髪をまとめながら、
「……風、冷たくなったわね。」
と、誰にともなく言った。
ユウはその背中を見て、
「……通して、か。」と呟いた。
⸻
夕暮れの街に、光がゆっくり沈んでいく。
信号が青に変わり、
三柱とマナが歩き出す。
道が再び、彼女たちに“通されていく”。
その後ろを追う杏仁豆腐たち。
足跡は同じ道の上にあったけど、
温度だけが違っていた。
──秋風が吹き抜けるたびに、
青春はまた、ひとつ形を変えていく。




