供物:のど飴奉納戦線 ― 龍角散は愛を試す味 ―
──昼休み。
校舎裏、ギャル神社の前。
ユウが一人、両手を合わせていた。
ユウ「……元気になりました。ありがとうございました。」
レイナ「え、なにこの真面目参拝。」
ユウ「ポカリの妖精に助けられたからな。お礼に来たんだよ。」
カズ「妖精って、保健室にいた誰かだろ。」
ユウ「神は見えないんだよ。」
ダイキ「ポカリ信仰きたー!」
ユウの手には、ビニール袋。
中には、のど飴の束。
タクミ「え、それ供物?」
ユウ「そう。喉に効く=言葉が整う=バンドの神事。」
レイナ「いや理屈のストレッチ効きすぎ!」
──そこから、“のど飴談義”が始まった。
レイナ「私はブルーベリー味派!映えるし、モテる味!」
アイカ「映えは喉に効かない。」
レイナ「心に効くの!」
ミナミ「……効能と映えは、共存しないのよ。」
レイナ「出た、美の神様コメント!」
ユウ「俺は、龍角散ダイレクト。」
一同「うわッ!!」
カズ「粉じゃん!舐めるんじゃなくて吸うやつ!」
タクミ「供物というより、呪術。」
ダイキ「人にあげると喜ばれないやつNo.1!」
ユウ「効くんだって。信じる喉には響く。」
ミナミ「……喉より先に、心に届いてるのね。」
ユウ「……かも。」
その声はやけに静かで、どこか優しかった。
風が吹いて、袋の中の飴がカラリと鳴る。
光が差して、包み紙がきらりと揺れた。
アイカ「神社でのど飴奉納……文化の終わりね。」
レイナ「青春の始まりでもあるけどね!」
ダイキ「お前ら、もう信仰の病じゃん!」
──そのあと、ユウの机の上に一粒ののど飴が置かれていた。
味は龍角散。包み紙の裏に、
細い字でこう書かれていた。
「観測終了(でも、ちゃんと効いたわ)」
ユウ「……ポカリの妖精、やっぱいたな。」
──午後の光の中、
のど飴は静かに溶けていった。




