ハロウィン降臨 ― 仮装と羞恥の臨界点 ―
昼下がりの校内放送。
スピーカーから響いたのは、軽いノリのアナウンスだった。
『全校生徒へ。今年のハロウィンイベントは“仮装ランウェイショー”です! ステージで輝くのは誰だ!?』
一瞬、教室に静寂。
次の瞬間、爆発。
ダイキ「……出た、羞恥イベント第二弾。」
カズ「去年の“メイド喫茶地獄”が甦る。」
ユウ「でも……やるしかない。俺たちは“光る羞恥”でここまで来た。」
タクミ「どんな成長曲線だよそれ。」
「準備してくる!!!」
叫んだ瞬間、全員が椅子を蹴って散った。
廊下を駆け抜ける笑い声。
その温度が、すでに青春だった。
⸻
夕方、体育館裏。
控室の鏡前で、杏仁豆腐は最後のチェックをしていた。
タクミ「シスターとかマジでやるの?」
ユウ「恥ずかしいけど、熱は正直だからな。」
カズ「俺、吸血鬼だけど日焼け止め塗ってる。」
ダイキ「俺の南瓜、空気抜けてる!?」
笑いが止まらない。
でも、笑ってるほど怖いのも青春だった。
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ステージの幕が開く。
スポットライトが、杏仁豆腐の4人を包む。
ユウ(白のシスター)
タクミ(崩れた王子)
カズ(優しすぎる吸血鬼)
ダイキ(南瓜地獄マン)
ざわめきと笑いが同時に沸く。
女子の「なんでそうなるの!?」という悲鳴。
男子の「最高だろこれ!」という拍手。
笑いが渦になる。
でも、その熱が——
次の瞬間、凍る。
⸻
扉が開いた。
黒。
灰。
ベージュ。
桃。
四つの光が、ステージ裏から歩いてくる。
空気が、一瞬で変わった。
最初に現れたのは黒の静寂。
仮面の下の瞳が、空間を支配する。
照明が落ちて、彼女だけが光をまとっていた。
次に灰のドール(アイカ)。
一歩ごとに、観測される美が増していく。
人間の動作とは思えない均整。
三番目にベージュのキャッツ(レイナ)。
軽く腰をひねって、尻尾を揺らす。
歓声がひとつ、息を呑むように漏れた。
そして、桃の悪魔。
ピンクベージュの髪が照明に反射して、空気に甘さを混ぜる。
一歩ごとに光を計算しているみたいだった。
観客が呟く。
「……四柱、再臨だ。」
空気が静まり返る。
さっきまでの笑いが、夢みたいに消えていた。
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ミナミが立ち止まり、ユウを見た。
「……また、笑われる方を選んだのね。」
ユウは肩をすくめて、少しだけ笑った。
「笑われるくらいが、ちょうどいいです。」
「……ふっ。そういう熱は嫌いじゃない。」
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イベントが終わると、
夜の校舎に風が通り抜けた。
四柱の残り香が、ほんのりと空気に残っている。
杏仁豆腐の4人はステージ裏で倒れ込んでいた。
ダイキ「俺、もう南瓜は卒業する。」
タクミ「王子は一生封印だ。」
カズ「吸血鬼なのに血が引いた。」
ユウ「……羞恥って、冷めるとあったかいよな。」
窓の外、四柱の笑い声。
レイナ「次はサマコレで勝負ねー!」
アイカ「観測続行。」
マナ「……白、似合ってたよ。」
ミナミ「……羞恥は、光の入口よ。」
ユウは、息を吐いた。
照明の残光が床を照らしていた。
その光はまだ、消えそうになかった。
——光と羞恥。
バカと神。
その境界線に、青春があった。




