秋制服談義 ― ラルフの風と誤爆の余韻 ―
放課後。
西日が差し込む教室で、杏仁豆腐は制服談義の真っ最中だった。
ダイキ「やっぱさ〜カーデは萌え袖だよな!隙間がエロい!」
カズ「語彙をどうにかしろ。」
タクミ「俺は断然ブレザー。ボタンの閉め方に個性出るって。」
ユウ「……俺は、ラルフっすね。」
ダイキ「出たよ、ブランド信者。」
ユウ「ちがう、あの清楚な感じ。柔らかいベージュのニットに、白シャツの重なり。
あれってもう、信仰だろ。」
カズ「信仰の方向性おかしい。」
笑いが弾け、やがて鐘の音。
四柱が廊下を通り過ぎる。
レイナ「やっぱラルフ可愛いよね〜」
アイカ「清楚って言葉、実は一番計算されてるわ。」
ミナミ「……制服は、着る人の温度を映すだけよ。」
マナ「ピンクでも、清楚に見せられるよ?」
その一言で、教室の温度が一段上がった。
杏仁豆腐、全滅。
──そして放課後。
残ったユウとミナミ。
陽が傾いて、カーテンが風に膨らむ。
ユウ「……でも俺は、やっぱこれが好きなんすよ。」
ミナミ「ラルフ?」
ユウ「はい。なんか、“清楚”とか“憧れ”とか、そういうの全部ひっくるめて、
届かない感じが好きなんです。」
ミナミ「……届かないから、目が離せないのよ。」
ユウ「……なるほど。」
沈黙。
風が、二人のあいだを抜けた。
カーテンがひらりと動いて、ミナミの袖が光を受ける。
ユウ「……でも、ミナミ先輩の袖、ラルフより上質に見えますね。」
ミナミ「……それ、誤爆よ。」
ユウ「え?」
ミナミ「口、動いてたわよ。」
ユウの顔が一瞬で熱を帯びる。
ミナミは少しだけ笑って——
ミナミ「……まぁ、悪くない。」
その言葉と一緒に、風がまたカーテンを揺らした。
ラルフの柔らかい香りみたいに、淡く、長く。
──秋の放課後。
フェチと美と羞恥が、同じ教室で静かに呼吸していた。




