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青春ギャラクティカ  作者: 灰色ぎつね
28/53

白銀の暴走アート

放課後。

チャイムが鳴り終わっても、校庭には俺たちの笑い声が響いていた。


「雪降ってきたな!」

ダイキが叫ぶ。

空からふわり、白い結晶。

誰かが「青春っぽいな」って呟いた瞬間、もう止まらなかった。


「よし、雪像つくろーぜ!」


杏仁豆腐(俺たちのバンド)は、いつもノリだけで動く。

でも、そこがいい。

それが青春だ。



◆ カズ:仏に魂を込めた男


カズ「俺、こう見えて美術5だから」

雪を固め、手際よく形を作っていく。

仕上がったのは、見事な合掌ポーズの仏像。


ユウ「いや、リアルすぎるだろ! 芸術祭出せるレベル!」

ダイキ「拝める……“雪に咲いた悟り”だ……!」

タクミ「南無阿弥陀雪像ってタイトルでいい?」

カズ「やめろw」



◆ タクミ:王道を極めし雪の貴公子


タクミ「俺はシンプルに雪だるまで」

端正な顔立ちに負けない完成度。

丸み、バランス、表情。全部が完璧。


女子たち「タクミくんの雪だるま、イケメンすぎ~♡」

ユウ「お前、雪にまでモテるとか聞いたことねぇ!」

カズ「イケ雪だるま誕生」

ダイキ「嫉妬で雪が溶ける」



◆ ダイキ:胃袋のロマンチスト


ダイキ「俺は……雪でラーメン作る!!」

ユウ「発想からして腹減ってるな」

ラーメン丼をかたどり、枝でチャーシューを、葉っぱでネギを表現。

息で「ふぅ~」と湯気を演出。


タクミ「うまそう……でも絶対冷たい……」

カズ「この人、雪でも飯テロしてくる」

ユウ「俺もう心が寒い」



◆ そしてユウ:暴走のはじまり


ユウ「ドラゴン作る!青春はドラゴンだろ!」

全員「お前の青春の比喩、毎回意味わかんねぇんだよ」


勢いで雪を掘り、積み、丸め、整え……

10分後、俺は確信した。


「できた!!」


全員「……………………」


目の前には、全長180センチの——完璧なフォルムのちんこ雪像。


カズ「……いや、もうそれ“悟り”超えてるぞ」

タクミ「完成度が高いのが逆に怖ぇ」

ダイキ「お前、才能の方向間違えたんだよ」

ユウ「ちがう!ドラゴンなんだって!!!」

カズ「どこがだよw」



そして、そのとき。

ヒールの音が響いた。

「カツ、カツ、カツ……」


冷気の中を、凛とした声が突き刺す。


安藤先生「……なにこれ?」


全員、凍る。

(雪より冷たい空気)


ユウ「せ、先生……これはその、芸術です」

ダイキ「青春の結晶っす」

カズ「魂の造形……っす」

タクミ「……俺は止めたんすけどね」


安藤先生、スッと髪をかき上げる。

銀縁メガネが光を反射した。

静寂の中、ゆっくりと息を吸い込み——


「公然猥褻――――!!!」


次の瞬間、ヒールで軸を取り、後ろ回し蹴り炸裂!!


雪像、爆散!!!!

粉雪がスローモーションで宙を舞う。


男子全員「キュッッッ!!!!!」(全員、両手で股間ガード)


タクミ「せ、先生、破壊力が現実……!」

ダイキ「心まで冷えたぁぁぁ……!」

カズ「仏より尊い一撃だった……」

ユウ「青春が吹っ飛んだ……っ!」


安藤先生「次やったら、性教育の教材として掲示するからね」

全員「それだけはやめてぇぇぇ!!!」



翌日。

校内掲示板に貼られた新聞。


《校庭に出現!“謎の芸術作品”一晩で消滅》

〜関係者は「青春の暴走」とコメント〜


ユウ「関係者って俺らだよな……」

ダイキ「俺たちの芸術は……雪とともに散ったんだ……」

カズ「新聞デビューがこれとか一生ネタだろ」

タクミ「てか、また校長に呼ばれるなこれ」


そこへ安藤先生が通りかかる。

「はいはい、今日の放課後、反省会ね」


ユウ「なに話すんすか」

安藤先生「“公序良俗と造形美の狭間”について」

カズ「それ絶対真面目なやつじゃん!」

ダイキ「でもたぶん俺ら笑って終わるやつ!」

ユウ「青春だな……(遠い目)」



その夕暮れ、雪がまた降り出した。

真っ白な世界に、笑い声が響く。


手がかじかんでも、バカみたいに笑えるのは、

きっと今が青春だから。


風が吹くたびに思う。

——この冬も、バカでよかった。


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