仮装とへそピと恋のトリック。
校内掲示板に貼られた一枚のポスター。
《生徒会主催:ハロウィンフェスティバル開催!!》
—“仮装OK!お菓子配布あり!最優秀コスプレ賞にはQUOカード3000円!”
ユウ「3000円て、割とリアルな額だな」
ダイキ「お菓子より燃えるタイプ」
カズ「でも仮装かぁ……俺、そういうの苦手なんだよなぁ」
タクミ「むしろお前らが何やるのかが一番怖ぇ」
⸻
◆ 当日、教室にて。
ガラッ。
ユウが入ってきた瞬間、教室がざわめいた。
ユウ「……なに?」
カズ「お前、なんで囚人服?」
ユウ「だって青春は罪だから」
全員「出たよポエム男子!!」
ダイキはというと——
「ドーン!」と音を立てて現れたのは巨大カボチャの着ぐるみ。
「動けねぇ!でも映えは完璧!」
タクミ「お前、ライブのドラムより重そうだぞ」
カズは意外にも吸血鬼スタイル。
マントを翻して「お菓子をくれなきゃ、コードを鳴らすぞ」とか言ってる。
女子たちが「カズくん似合う〜!」って騒いでて、もう勝ち組感が漂う。
で、タクミは。
……白シャツに黒パンツ。地味。
ユウ「お前、それ仮装か?」
タクミ「“地味にイケメンな青年”っていうリアルコスだ」
ダイキ「自分で言うな!」
⸻
◆ そして、ミナミ先輩登場。
ざわっ……。
空気が一瞬止まった。
ミナミ先輩は黒のショートトップスに、へそピがキラッ。
腰にチェーンベルト、ミニスカに網タイツ。
完璧に“悪魔系ギャル”仕様。
ユウ(……っ!!)
——ビーナスのエクボ。
——キラリ光るピアス。
——そして、あのへそ。
脳内で警報が鳴る。
新たなフェチズム、解放。
ダイキ「おいユウ、鼻血出てんぞ」
ユウ「出てねぇ!」(出てた)
ミナミ「アンタら、今日も元気ね〜。どれ、いたずらしてほしい?」
ユウ「ハイ喜んで!!!!!」
タクミ「落ち着けドラム」
⸻
◆ トリックオアトリート戦争。
昼休み、校内ではお菓子争奪戦が始まった。
カズがギターケースからポッキーを出してモテ、
ダイキは着ぐるみのまま駄菓子を山ほどゲット。
ユウはというと——
ミナミ先輩に「お菓子くれないとイタズラする」って言ったら、
「じゃあ逆に——」と耳元で囁かれ、
鼓膜ごと魂を持っていかれた。
その瞬間、ユウの中で何かが爆発した。
——へそピフェチズム覚醒。
⸻
◆ イベントの終盤。
夕焼けのグラウンド。
仮装のまま写真を撮るみんなの横で、
ユウはそっと呟いた。
ユウ「なんかさ、バカやって笑って、でも……ドキドキするの、青春だよな」
タクミ「フェチに目覚めて終わった奴の台詞じゃねぇ」
カズ「でもまぁ、ユウらしいわ」
ダイキ「来年は仮装ライブしようぜ!」
ユウ「それ最高!」
風が吹き抜け、ハロウィンの飾りが揺れた。
オレンジ色の光の中、ミナミ先輩のピアスがまたキラッと光った。
——トリックもトリートも、全部まとめて青春だ。